【小説冒頭コレクション】思春期はみんな生き辛い?は本当か?

とびきりの冒頭コレクションを 
今日から始めてみようと思います。
第1回は瀬尾まいこ
『そして、バトンは渡された』から。
 
「困った。全然不幸ではないのだ。
少しでも厄介なことや困難を抱えていればいいのだけど、適当なものは見当たらない。いつものことながら、この状況に申し訳なくなってしまう。」

高校二年生の主人公、優子さんは、
担任の先生との進路面談に、 
当惑している。
大人はみんな、高校生なら
生きづらさを抱えていると決めつけ、悩みを打ち明けることを
半ば強要して来る。
みんなが生きづらい訳でもないのに。 

これを読んだ時、うわ、やられた、  
やってくれたな、と感動しました。
みんなで生きづらさを語り合うのが、
キャンペーンになっている、
同調圧力を見事に捉えた上に、 
見事に反転させてる。 

そうかあ、そうだなあ。
生きづらさがある、
生きづらいのがマストみたいな
空気が確かにある。
鋭敏な作家はそこをついて、
そうした空気に乗れないで
困っている主人公を書いた。
生きづらさに乗れない生きづらさ。
笑。
この先どうなるんだろうか?
ワクワクするような冒頭で、
これは、読みたくなりますね。 

『そして、バトンは渡された』
瀬尾まいこ。文春文庫。
2019年本屋大賞。

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