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発酵文化人類学

20240605

発酵文化人類学
発酵を通して、人類の暮らしにまつわる文化や技術の謎を紐解く学問

発酵の道:生命工学と社会学の交差点
お酒が発酵する現象は、化学式に変換できる
=生命工学
けれども、どうして人それぞれ好きなお酒が違うのかは、 化学式にはできない
=社会学

文化人類学も同じような構造
様々なオブジェや民話をデータとして分解して共通項を再構築して体系化する
=情報工学
けれども、どうして人類がこんなにも多様な文化を生み出したのかを考えるには、データを超えた仮説を生み出す想像力がいる
=社会学

具体的なモノからスタートし、抽象的なメソッドとして体系化する。

麹菌という特殊なカビが大豆にくっつくと旨味とコクたっぷりの味噌になり、ブドウに酵母(イースト)がくっつくと香り高いワインが、牛乳に乳酸菌という細菌がくっつくと酸っぱくてさわやかなヨーグルトができる。

微生物という目にに見えない生き物が、食べ物を美味しく変身させる。

微生物が人間に役に立つ働きをしてくれることを「発酵」という。

動物:動き回っエサを食べる生き物
植物:動かずに光合成して生きる生き物
微生物:目に見えない生き物
この3つのカテゴリが、生物の古典的な分類の3つ。

発酵:微生物たちが主役になって引き起こされる。

発酵:人間に有用な微生物 ( 発酵菌 ) が働いている過程
腐敗:人間に有害な微生物 ( ばい菌 ) が働いている過程

発酵菌
・カビ:麹菌、クモノスカビ
・酵母:パン酵母、ビール酵母
・細菌:納豆菌、乳酸菌

収穫した麦が洪水で冠水し、気づいたらプクプク泡がたっていた。それを水に漬けっぱなしにしていたらビールになり、捏ねて焼いたらパンになった。
あるいは収穫したブドウを搾ったジュースをほっておいたら、何やらかぐわしい香りが漂ってきて、いつの間にかブドウの甘味が消え、そのかわり独特の酸味とコクが生まれていた。これがワインの始まり。

麦は発芽して麦芽(モルト)になると、植物自身の酵素のちからによって、粒の中に糖分を蓄積する。この糖分に、酵母という微生物、もっと正確に言うとサッカロマイセス・セレビシェという菌が取り付いて、アルコールとプクプクのもとになるガス (二酸化炭素)を発生させる。
ビールのシュワシュワの泡とアルコールは、ビールメーカーの人が添加しているわけではなく、微生物がつくっている。

麦を水で捏ねて、発酵させないで焼くのがチャパティ。発酵させて焼くとナンになる。ナンがふっくらしているのは、酵母の出すガスが生地をふくらますからだ。

ワインも酵母の働きによるものだ。ブドウの皮には野生の酵母がびっしりくっついていて、ブドウが熟してはじけたり、地面に落ちてつぶれると、皮についた酵母たちがブドウの糖分を食べて発酵が始まる。ブドウジュースが甘いのにワインがそれほど甘くないのは、糖分を酵母が食べてしまうから。そのかわり、酵母が発酵する時に発生するアルコールや香り、コクがブドゥ汁にプラスされて、かぐわしいアルコール飲料が誕生する。

米を酒にかえるのも微生物である。
その微生物は、発酵カビである、麹菌 ( ニホンコウジカビ ) である。

糀:米にニホンコウジカビがくっついたもの

腐敗を防ぐ4つの知恵
・発酵菌のバリヤー
・塩や砂糖漬け ( 10% )
・PH値のコントロール ( 酢:強酸性、燻製:強アルカリ性 )
・高濃度のアルコール ( 20% )

ヨーグルトをつくる乳酸菌→酸性
麹菌→アルカリ性

大豆+納豆菌 = 納豆
大豆+麹菌 = 味噌
米+麹菌 = 糀
糀+酵母 = 酒
酒+酢酸菌 = 酢
( 麦+麹菌 ) + ( 大豆+麹菌 )+海水 = 醤油
煮大豆+麹菌+塩 = 味噌

味噌が発酵する過程で、最初の発酵のスターターとなる麴菌はやがてエサや空気がなくなって死んでいく。しかし、麴菌の出した「酵素」が生きているので、旨味や甘味がつくりだされていく。発酵の「酵」は、酵素の「酵」。人間に嬉しい風味や保存性や健康機能をつくるのは厳密に言うと発酵菌そのものではなく、発酵菌の出す「酵素」である。

お酒に共通する定義は、
糖分を発酵菌である酵母に食べさせて、酵母の出すアルコールで作られた飲料品

ワイン:ブドウの糖分を酵母に食べさせてアルコール
ビール:麦芽の糖分を酵母に食べさせてアルコール

ブドウジュースを酵母で醸すと、ワイン
ワインを蒸留するとブランデー

麦を酵母で醸すと、ビール
ビールを蒸留するとウィスキー

米麹菌と酵母で醸すと、日本酒
日本酒を蒸留すると焼酎

醸造酒:ワインやビールや日本酒
蒸留酒:ブランデーやウィスキーや焼酎

醸造酒を蒸留酒にする理由
1:酒が長持ちするようになる(高濃度アルコールは腐りにくい)。
昔の醸造酒は腐りやすかったので、蒸留は保存性を高めるにはピッタリだった。
2:中途半端な醸造酒でも蒸留すると飲める。
蒸留酒のなかには、ブドウの搾りかすからつくるグラッパや、日本酒を搾った酒粕からつくる粕取り焼酎など 「残りものを材料にしたレシピ」 がたくさんある。 余さず全部酒にしたいというもったいない精神が蒸留酒を生んだ。
3:香りと風味が凝縮する。
中国やヨーロッパに行くと、高級酒ほど蒸留酒になる傾向がある。出来のいい蒸留酒は原料の香りと風味が凝縮し、それを何年も寝かすとさらにかぐわしい酒へと成長していく。

ジン:お酒自体の原料は、麦やジャガイモだが、蒸留後にセイヨウネズの実などを浸して香りを抽出する。

テキーラ:リュウゼツランの茎から作る。

梅酒:焼酎に砂糖と梅を漬けて風味を抽出する。

シャンパン:ワインを一度醸造した後、ビンに移し替えてもう一度発酵させるとビールのように炭酸ガスが閉じ込められる。

貴腐ワイン:収穫前のブドウをわざと灰色カビで腐らせ、糖分を凝縮させたブドウで仕込む。

みりん:甘酒をアルコールに漬け込んで熟成させた超絶甘い日本酒

■ワインの発酵プロセス
ブドウを摘む
ブドウ汁を搾る
発酵
濾過・瓶詰め
熟成

■日本酒の発酵プロセス
麹をつくる
水に麹と米を漬けて酒母にする
原料 ( 麴菌、乳酸菌、酵母 ) を足して発酵
搾る
濾過・瓶詰め

「醸造」という言葉のおおもとの定義
麹菌をはじめとするカビを使った発酵

近代以降に意味が変化
主にアルコール飲料などをつくる液体発酵

■日本酒のボキャブラリー
<日本酒の種類>
純米酒:米と麹と水だけでつくった日本酒
吟醸酒:米を4割以上削って醸した酒
本醸造:少量のアルコールを添加して味を整えた酒
普通酒:アルコールと糖類でのばした酒
<製造方法の種類>
生酛:蔵に住む乳酸菌を呼び込んで酒母をつくる
速醸:合成された乳酸を添加して酒母をつくる
無濾過:濾過をせずに濁った状態で瓶詰めする
原酒:発酵が終わった酒を水で割らずに瓶詰めする

■ワインのボキャブラリー
<ワインの種類>
白ワイン: ブドウの果汁だけで醸す
赤ワイン: ブドウの果実とともに果皮を漬け込んで醸す
ロゼワイン: ブドウの果皮や種の漬け込みを弱くし、果汁だけを発酵させる
スパークリングワイン:酵母のガスを瓶に閉じ込める
<ワイン用ブドウのポピュラー種 >
カベルネ・ソーヴィニヨン: 超定番。 酸味があり熟成向き
ピノノワール: 赤用の定番。繊細な風味を生む
シャルドネ : 白用の定番。 ジューシーな風味を生む







 


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