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こちらVR機構日本支部 6.ハッカー

解説

 文学界新人賞 第126回 応募した作品です。2020年7月4日に応募しました。
 一次選考にすら漏れましたが、選考に漏れた作品がどれだけ世間に通用するか? そんな想いでnoteに投稿することにしました。
 
再度内容を見直し(推敲)ています。誤字脱字それに言い回しを変えて、順次公開いたします。

こちらVR機構日本支部(四百字詰め原稿用紙149枚)

目 次

1.VR機構 その1 
1.VR機構 その2 
1.VR機構 その3 
2.ユートピア/3.ディストピア    
4.ルーチン /5.ご褒美  前の章  
6.ハッカー ・・・・・・(このページ)
7.侵入者 ・・・・・・・・ 次の章  
8.隠蔽  /9.騙し続けるしかない  
10.レベル・ファイブ(Level5) 

6.ハッカー

  一人の老人は、いつものように午前十時ごろに朝の散歩の途中で公園のベンチに座っていた。五月のその日は、五月晴れで春の心地よい日差しが老人を優しく包んでくれているようであった。道行く人たちは、薄い薄手の衣服をまとっていた。梅雨になるまでの、一番過ごしやすい季節とも言える。

 老人は、公園から見えるミライの外の自然を眺めていた。ミライの中にも木々などはあるのだが、大自然のパノラマが好きだったのだ。そういえば、ミライから二十年以上出ていない。昔はミライから出て、あの山を散策したこともあったな。と、昔を懐かしんでいると、山は突然消え失せ無機質なコンクリートの打ちっぱなしのような壁に変わった。太い柱が、数か所屹立しているのが見て取れた。驚いて空を仰ぎ見ると、空もなくなり無数の照明器具が自分を照らし出している光景が見えた。老人は、動くことができなくなって呆然と高い天井を見つめるしかなかった。

「どうされました?」
 呆然と空を見上げている老人に、ベビーカーを押していた女性が声をかけた。気分でも悪いのか? と、危惧したからだ。
 老人は、目だけで女性を見ながらゆっくりと無言で人差し指を上に上げた。女性はまだ気づいていないようで、訝りながらも空を仰ぎ見て凍り付いた。次の瞬間、「キャアー」と、悲鳴を上げた。
 他にも、様々な場所で気が付いた人々に動揺が拡がった。自宅のサテライトオフィスで仕事をしていた人には、異変は伝わらなかった。それでも学校や保育所などの教育機関では、多くの子供たちが、教職員が、異様な光景を見ることになった。

 「ハッカーが侵入しています。現在VRの一部が強制的に解除されており、空やミライ外の風景が実際の天井と壁に姿を変えております」
 おふくろさんは、突然取り乱した顔になった後に取り乱した声を出した。
「ハッカー!?」
 悠太は、おふくろさんの言葉に一瞬戸惑った。「犯人は? 復旧は?」と矢継ぎ早に尋ねる。
「犯人は、不明です」
 おふくろさんの戸惑った言い方に、悠太と久保は顔を見合わせた。数分以内に復旧したとしても、多くの住民が目撃するに違いない。自治政府の発表如何では、動揺が不審にさらに疑惑に変わらないとは断言できない。日本のミライ全てのサーバーやパソコンなどは、おふくろさんの管理下にあるはずだ。なのに…。

「怪しい動きをしている人物は、誰一人認識できません」
 おふくろさんは、困惑ぎみに答えた。
「何のために?」
「それも不明です…」
 おふくろさんは、少し沈黙した後に、「現在並行して、復旧作業を行っております。復旧は、数分以内に完了させます。引き続き、ハッカーの意図を探ります」と答えた。
「どう思う?」
 悠太は、久保に尋ねた。
「どうって? まるで見当つかない」
 久保は、困惑気味だが、「何か、とんでもないことが起きるのか? それにしてもサーバーやパソコンは、すべて管理している筈なのに…」と、険しい顔に変わった。
「そうだな。おふくろさんに隠れて、ハッキングなどできない。それとも、何か見落としているのか…」
 悠太は、少し考えていたが…。

「交番から、住民が混乱していると連絡が入ったそうです。外は、パニックに陥っているそうです」
 部下からの報告が火ぶたを切ったように、次々に入電のコール音が聞こえだした。悠太の考えは、吹っ飛んでしまった。
「こちらも…、自治政府も、混乱しているようです」
 取り乱した部下の声も聞こえる。
「はい。こちら」
 部下たちは、一斉に電話応対を始めた。

 様々な場所から、様々な立場の人から、矢継ぎ早に連絡が入りだした。入電のコール音が、ひっきりなしに聞こえてきた。コントロールルームは、混乱し始めた。
「はい。コントロールルーム山田です」
「はい…」「どうされました…」
「はい。コントロールルーム川崎です」
 部下たちの緊張した対応が、コントロールルームのそこかしこから否が応でも悠太と久保の耳に入る。
「チーフ! 評議会から、支部長から、入電です」
 評議会からの電話で、コントロールルームは混乱と緊張の極みに達した。

「評議会!?」
 その時、コントロールルームのコール音が消えた。
「切れました…」
 報告した部下は、ヘッドセットの耳辺りに手を添えて困惑した顔を悠太に向けた。
 コントロールルームは、一瞬静寂に包まれた。入電に対応していた部下たちは、一斉に無言で悠太の顔を見た。困惑と不安に満ちた顔だった。今度は、電話まで…? ハッカーの仕業に違いない。という恐れが全員を無言にさせた。
「うるさい外野は、こちらで対応します。我々は、ハッカーの対応に全神経を集中しましょう」
 おふくろさんの言葉に、全員がほっと溜息をついた。次に、そこかしこからざわめきが起こった。入電に対する対応など、おふくろさんにとっては容易いはずだ。

「おふくろさんの言葉に甘えよう。この事案は我々二人に任せて、全員通常業務に戻るように」
 悠太は、力強く部下たちに命じた。が、言葉とは裏腹に、どうしたものかと途方に暮れた。
「はい」
「はい」
「そうですね」
「任せてください」
 部下たちのすなおな返事が、せめてもの慰めだ。
 悠太は、少し考えていたが、「おふくろさん。発信場所は、特定できないのか? 日本以外も調べてくれ」と、念のために依頼した。

「それが…」
 おふくろさんは、明らかに戸惑っている。悠太は、おふくろさんの次の言葉を待つしかない。急き立てるわけにもいかない。

 人類の最先端技術ともいえる、AIのおふくろさんをもってしても…。すべてのサーバーやパソコンを管理している筈なのに…、ハッカーが特定できない。そんなことがあり得るのか? すぐに元に戻さなければ、混乱は拡がる一方だ。時間はない。
 おふくろさんは、少し間をおいてから、「北緯◯度◯分東経◯度◯分付近までは判明したのですが、それ以上は分かりません」と、自分でも納得していないような言い方で答えた。メインモニターには、おふくろさんが答えた場所付近が映し出された。様々なデータを解析していたのだろう。それでも数十秒掛かったことになる。

「その辺りは、隕石が落下して誰も住んでいない。…いや、誰も住めない筈だ」
 久保も、困惑気味に独り言のような口ぶりになる。部下たちは、自分の仕事をしながらも裕太たちの言動を注視しているようだ。たしなめる気にはなれない。未曾有と言っていい危機が降りかかっているのだ。
「中国のおふくろさんは、生き残っている?」
 悠太は、可能性を指摘した。おふくろさんは、他のシェルターのおふくろさんまでは管理できない。彼は、黙っておふくろさんと久保の反応を確かめた。
「確かに、可能性はゼロではありません」
 おふくろさんは、AIの模範解答のような答え方である。
「そうかも知れない。でも、今さら…。(隕石衝突から)何十年も経った今なんだ?」
 久保は、ハッカーの動機を図りかねて、「何をしようとしているんだ?」と、次の疑問が沸いてきた。

 いきなり中国のシェルターにあるメインルームで、コンピュータを操作している一人の男がメインモニターに大写しにされた。メインルームは、どのシェルターでも同じはずだが…。男の後ろに映った映像から瓦礫が垣間見えた。隕石の落下の被害が大きかった事を物語っている。映像はすぐに消えた。男は、痩せぎすで西洋人のような風貌だ。まだ若い。三十代ほどに見えた。
「感づかれたようです。回線を、シャットダウンされました」
 おふくろさんは、悔しそうな顔になった。が、「中国のマザーが、相当ダメージを受けたのは確かのようです。彼が一人で修理したのかは分かりません。しかし、ある程度の機能を回復させたようです。これから、彼とのコンタクトを試みます」と、戸惑った顔になった。

 「あなたは、どうしてハッキングしようとしているのですか? 何故、ミライを混乱させるのですか?」
 おふくろさんの穏やかな呼びかけと映像が、中国シェルターのメインルームにいる男の前のメインモニターに映し出された。男は、AIに簡単にアクセスされることを予見していたのだろう。驚いたそぶりは、見せなかった。相手の男の姿は、VR機構日本支部のメインモニターに再度映し出された。
「おまえたちの嘘を暴くためだ!」
 男は、おふくろさんの顔を睨みつけた。発した言葉は、ロシア語だ。男の声は、AIによって自動翻訳された。職員の国籍別に、母国語でヘッドセットから聞こえていた。悠太の部下全員が、メインモニターを注視する。

「今更真実を暴いても、世界が混乱するだけだとは思わないのですか?」
 おふくろさんは、穏やかな対応を崩さない。
 悠太たちは、おふくろさんを見守るしかない。おふくろさんに任せるしかないのが、悠太たちの立場だ。余計な言葉を、差し挟む余地はない。差し挟んでも、相手に聞こえる筈もない。ネットワークを司っているおふくろさんに、任せるしかないのだ。
「俺たちは、お前らAIに騙されていた。だから、真実をみんなに知ってもらうのだ。我々には、それだけの権利がある」
 男も負けてはいない。

 悠太は、男に反論する言葉を持っていないことを思い知らされた。他の部下たちも、様々な想いでじっとメインモニターを無言で見つめている。
 おふくろさんは、どうやってこの状況を打開するつもりなのだろうかという疑問も頭をよぎる。
「分かりました。もう止めることはしません。しかし、私にもVR(バーチャル)を守る使命があります。徹底的に戦います」
 おふくろさんは、宣戦布告とも取れる言い方をした。
「おいおい、相手の挑戦を受けて立つ積りなのか…?」
 久保は、あまりのおふくろさんの言葉に思わず呟いてしまった。
 悠太は、苦笑いしながら横目で久保を見た。

「どうしようというのだ…?」
 男は、一瞬キーボードを叩く手を休めておふくろさんを睨みつけた。
「あなたは、現実の世界を人類に知らせると言いました。貴方の見ている現実の世界は、まだバーチャルの世界に過ぎないと教えてあげると言っているのです」
「どういう意味だ!?」
 男は、おふくろさんの言葉に戸惑いの顔を見せた。
「あなただけに、現実を見せてあげると言っているのです」
 おふくろさんの言葉に、男は戸惑っている。無理もない。徹底的に戦うと言ったおふくろさんが、男に誰にも見せたことがない現実を見せようと申し出たのだ。現実? 悠太たちは、おふくろさんの言葉に疑念を抱いた。悠太たちVR機構の職員たちは、現実の世界も知っている。それが現実ではない? と、コントロールルームは騒然となった。
「俺たちも、騙されているのか?」
「何を信じれば…」
 そこかしこから、小声で話す部下たちの声が聞こえた。悠太は、何も言わない。いや、部下たちの不安が理解できるから何も言えないのだ。

「俺を騙そうとしても無意味だ!」
 男の言葉に、部下たちの話し声は消えた。
 男は、ICチップが埋め込まれているはずの左手をかざして余裕の表情になった。笑みさえ浮かべている。左手の親指と人差し指の間には、大きな傷があった。男は、ICチップを取り出していたのだ。だから、身元が判明できなかった。それだけではなく、インストールされているバーチャルのシステムもこの男には通用しないことになる。
「辺りをご覧なさい」
 おふくろさんは、顔をゆっくりと左右に向けて男の背後を見回す仕草をした。
 男は、おふくろさんに促される格好で辺りを見回して驚いた顔をしながら、ディスプレイのおふくろさんの顔を絶望的な顔をしながら無言で見つめた。敵意と絶望が、ない交ぜになっているような複雑な顔だ。

「あなたの今まで見ていた現実の世界は、まだバーチャルの世界です。今見えているのが現実です」
 おふくろさんは、少し哀れんだような顔になった。
「そんな…」
 男は、一瞬戸惑った顔をしたが咄嗟に立ち上がると、「嘘だ!」とわめき散らして一目散に走りだした。男は、行く手に大きな亀裂があることに気が付いていないようで、悠太たちが唖然として見守っているさなかに大きな亀裂に落ちて行った。

「何をしたんです!?」
 悠太は、尋ねた。が。気づかぬまま語気を荒げて詰問していた。
「現実を見たいと言ったので、嘘の現実を見せたまでです」
 おふくろさんは、事も無げに言ってのけた。おふくろさんの嘘の現実のために、一人の男が命を落とした。
 悠太は、本当に嘘の現実だったのか? 自問自答してみた。手に埋め込められたICチップ以外にも頭の中にもICチップが埋め込まれている。男は、それを知らなかったはずだ。頭のICチップのことは、ごく一部の人間にしか知らされていない。悠太たちVR機構の職員でも、コントロールルームにいる一部の人間にしか知らされてはいない。男が、『嘘だ!』とわめき散らしたのも頷ける。男に、信じさせるだけの何かを見せたに違いない。おふくろさんの言っている嘘の現実が、本来の姿としたら…。

「そんなことより、男のためにバーチャルの世界の一部がエラーとなり、ミライの住民がパニックに陥っています。これから善後策を考えないと、パニックは収拾がつかなくなります」
 おふくろさんは、何事もなかったように善後策に言及した。悠太の想いを遮るようでもあった。
「一人の人間が死んだんだぞ! いや、あなたが殺したと言ってもいい」
 悠太は、まだ納得していない。他の職員は、無言で悠太とおふくろさんの会話を聞いているだけだ。それでも、困惑と疑惑の空気が見て取れる。

「今は、感傷に浸っている時ではありません。あの男は、犯罪者なのです。コロニーを混乱させた、犯罪者に過ぎません」
「だから、死んでも仕方がないと言いたいのか」
「いえ。あくまで結果論です。私は、死を望んだのではありません」
「まあいい。ところで善後策は、もう決めているのだろ」
 悠太は、不毛な議論を続けることをやめた。相手はAIなのだから、ビッグデータが様々な情報を提供しているはずだ。自分には、論破できるだけの能力は残念だがない。

「はい。現在自治政府で、善後策を検討する提案をしております」
 悠太は、冷ややかな目でおふくろさんを眺めた。もう決めているに違いない。自治政府は、おふくろさんの提案に追従するだけだろう。
 悠太は、その足で久保たちに後を託して先に帰ることにした。他にも家族がいる職員には、帰宅を命じた。政府の発表を見て、心配になり家族の元に戻ったというシナリオだ。
 三十分かけて、バーチャルでの帰宅となった。おかげで青い空が眩しい。遠くに見える緑の山々が美しい。これが、現実ならどれだけ素晴らしいか? ハッカーの見せた姿が、本当の現実なのだ。それも、現実かどうか? 今になってみれば、おふくろさんの言葉で心が揺らぐ。

「パパ!」
 亜美の声が聞こえてきた。亜美は、裕太に抱きついて、「怖かったよ」としがみ付いた。
「あなた、仕事は?」
 妻の驚いた顔が見えた。他にも、保護者に連れられた多くの児童が帰りを急いでいた。
「ハッカーがハッキングしたことで、会社は大騒ぎになり右往左往した。家族がいる者は、私の権限で先に帰した。社長から、お前も帰れと言われたから、久保君に後を頼んで帰ることにした」
 悠太は、シナリオ通りに答えた。悠太は、これなら役者になれるとたまに思う。いや、やっていることは、詐欺師に違いないと苦笑するしかない。帰宅してテレビを点けると、政府の発表の最中だった。自然に三人は亜美を真ん中にしてソファーに座る。

「自治政府の発表です。今回空や遠景が一時的に天井に変わった事態について、ハッカーがICチップにバーチャルリアリティーのウイルスを感染させたことが判明しました。
 繰り返します。今回空や遠景が一時的に天井に変わった事態について、ハッカーがICチップにバーチャルリアリティーのウイルスを感染させたことが判明しました。現在、ほとんどの住民のウイルスを排除しました。
 まだ天井が見えている方は、もうしばらくお待ちください。今回のハッカーによるウイルスで、直ちに生活に支障をきたす恐れはありません。ご安心ください。自治政府としましては、今後セキュリティ対策を今以上に厳重にするように致します。なお、現在捜査中ですが、犯人特定には至っておりません」
「パパ、本当に驚いちゃった。空が、いきなり天井になったんだよ。でも、バーチャルでも、本当のようだったよ」
 亜美は、テレビの報道を見ながら悠太にまとわりついてその時のことを悠太に告げた。テレビからは通常の番組が流れていたが、一時間おきに自治政府の発表を流し続けていた。悠太は、その時間に間に合うように帰ってきたのだ。

「どんな天井だったの?」
 悠太は、興味津々といった顔を作り亜美に尋ねた。自分がいつも天井を見ているとは、口が裂けても言えない。
「パパは、見てないの?」
「ああ。仕事が忙しかったから、外は見ていないんだ」
 悠太は、嘘をついた。
「そうね。私も、テレビのドラマを見ていたから天井を見ていない。テレビの速報を見て、慌てて空を見たけど…。普通の空だった。残念だったわ。亜美、ママにも教えて」
 美千代は、自分がウイルスのバーチャルの天井を見られなかったので興味津々だ。

「じゃあ、教えてあげる」
 亜美は、美千代の顔を見ながら得意顔で話し始めた。
「ちょうど体育の時間だったの。準備体操していたら、いきなり遠くに見える山と空が、壁に変わったの。空を見たら、空は天井になって明かりがいっぱい見えたんだよ」と、その時のことを興奮気味に話した。
「どんな壁だった?」
 美千代は、興味を持って尋ねた。
「灰色の壁」
「コンクリートの、打ちっぱなしの壁?」
 美千代は、更に畳みかけるように尋ねた。
「分かんないけど、はるちゃん家のガレージみたいな色だったよ」
 はるちゃん家のガレージとは、コンクリート打ちっぱなしの殺風景なガレージなのだ。バーチャルなのだが…。もっとも、小学校三年生の亜美に、細かい説明を期待する方が無理なのだ。

「いいじゃないか。問題は解決したんだ」
 悠太は、これで終わりにしたかった。
「あ~あ、見たかった…」
 美千代の興味は尽きないようだったが、これ以上亜美に聞いても意味がないと思ったのか諦めたようだ。

 ハッカー騒ぎは、すぐに住民たちから忘れ去られた。普段の生活に、直接かかわらないという事も安心材料だった。ハッカーの仕業だと、住民たちに信じ込ませることに成功したのだ。それでも、不安は残る。さらなる問題が発生すれば、住民たちが今回のウイルス騒ぎを思い出すかもしれない。

7.侵入者 次の章

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