斜に構えちゃって帰った話。

女優の広山詞葉さん推しである。

推しというかもう…憧れの人なのである。

僕が中学生の時から好きだったのだが、いかんせんお金がなかった。

しかし、大人になった今、ようやく推せるだけの経済力が!

これが「エモい」ってやつか。

というわけで先日、彼女が出演している映画の舞台挨拶に行ってきた。

上映後、他の女優さんと3人で登場した広山さん。

小さめの映画館で一番前の席だった僕。

もうマジで目の前にいるのである、ご本人が。

しかもめちゃくちゃカワイイ。

こんな時、みなさんならどうするだろうか。

まばたきせずに目に焼き付けるだろうか。

いや違う。

僕は直視できなかった。

憧れの人が目の間にくると逆に見れなくなるのだ。

広山さん目当てで来たのに。である。

いや、なにしてんだオレ!!

そんな舞台挨拶の中、お客さんに向けTwitterにて質問を募集するコーナーが。

出演者さんたちが呼びかける。

しかし、僕含め誰もツイートしない。

お互いに牽制しあっているのだ。

よし、ここは自他共に認める盛り上げ担当の出番である。

イベントを盛り上げなくては!

でも、急に「こちら『パラダイス楽園』さんからの質問です。いらっしゃいますかー?」とか言われたらどうしよう。

名前がダセェ。

しらばっくれようにも、僕は一番前の席だ。

そして目の間には出演者さんたちがいる。

いや、スマホいじってたの絶対バレるだろ。

うーーーん。

でも、やるしかねぇだろ!!

ということで質問ツイート。

「劇中に出てくる佐藤二朗さんとのツーショット写真、撮影秘話を教えてください」とつぶやく。

ありがたいことに採用してもらえた。

名前を呼ばれるんじゃないかというのも杞憂に終わり、

佐藤さんだけ別撮りで合成したという、いかにもそれっぽいエピソードをいただく。

そして、広山さんからは「いい質問ですね!」と言っていただけた。

へへっ。

誰か僕の勇気を褒めてほしい。

そして、最後は出演者3人の撮影会。

お客さんたちがスマホを構える。

一番前の右側の席に座っていた僕。

目線が欲しかったので手を挙げてアピールしてみた。

すると「あっ、こっちもですね!」と気付いてもらえた。

ありがとうございます。

さて、僕はどうしたか。

またとないシャッターチャンス。

めちゃくちゃ手ブレした。

いや、なにしてんだオレは!

バカ野郎かよ!

左手挙げる→反応してくれる→すぐシャッター押そうとしたけど片手で撮れなくてブレる。

なんとまあ本番に弱いのだろう。

舞台挨拶の最後に、サイン入りパンフレットが販売中とのアナウンスが。

わぉ!サイン欲しい!

そう思って席を立ち、ロビーへと向かう。

するとビックリ、出演者さんたちがいるではないか。

多分、関係者の方やファンにあいさつしていたのだろう。

これはチャンスだ。

中学時代から憧れた人と直接話せるかもしれない。

「ミニシアターありがとう!」と天に向かってお礼を言う。

さて、そのあと僕はどうしたか。

そう!

話しかけられなかった。

いやちょっと、これも言い訳をさせてほしい。

緊張しちゃったのだ。

あと、関係者でもない僕が声をかけるなんておこがましいと思ったのである。

万が一、話しかけても

「あっ、えっと、あのっ…」ってなる。

もし僕が女学生だったらカワイイが、あいにく身長190センチのアラサー男である。

そんなヤツが童貞っぽさ全開で話しかけられるわけがない。

モテないのがバレるし、絶対デレデレしちゃう。

あと、もし話しかけて引かれたら一生ヘコむ。

「まぁ、こんなご時世だし話しかけないのもアリだよな」と自分に言い聞かせた。

僕には「話しかけなかった後悔」と「話しかけた後悔」の2つしか選択肢がなかったのである。

わざわざ負け戦に挑むことはない。

いや、斜に構えんなよ!

そんなわけで、憧れの人をスルーして売店へ。

もはや前代未聞である。

しかし、ここでも斜に構えた。

「僕が映画館のスタッフだったら『ここぞとばかりにサイン入りパンフレット買ってんじゃねぇよ』って思うなぁ」と思ったのである。

いや、そんなことを思うスタッフさんはいない。

むしろパンフレットが売れるにこしたことはないのだ。

「推しは推せるうちに推せ」とはよくいったものである。

パンフレットを買ってもっと貢献せねば!

でも、浮かれていると思われたくなかったので

「いや、別にぃ〜、興味とかぁないッスけどぉ〜?」の感じでタイトルを言い、

「パンフレットって…」とたずねる。

「通常のパンフレットとサイン入りパンフレット、どちらになさいますか?」と聞かれ、

そこで初めて知ったかのように

「あっ…じゃあ…サイン入りで!」と、しらばっくれた。

正確にいうなら、

「あっ…じゃあ…」と「サイン入りでっ!」の間に「すーっ(吐息)」が入る。

おかげで無事にサイン入りパンフレットをゲット。

めちゃくちゃ嬉しかった。

中学時代のオレ、見てるー?

ふと目をやると、出演者さんたちはまだあいさつをしていた。

僕は思った。

これ、チャンスじゃないか?

パンフレットを買った今、会話のきっかけに困ることもない。

「買いました!面白かったです!」でいけるじゃないか。

そう思いながら映画館をあとにした。

人間、そんなすぐに変われたら苦労しないわ。

意味もなくちょっとロビーをうろついたけどね。

この日の僕はギュッとまとめたら

「なにもせず帰った男」である。

いやー、斜に構えちまった。

帰宅後、Twitterで本人宛に

「パンフレット買いました!でも勇気でなくて話しかけられなかったです。」と、「いいね」ないしはRT待ちのツイートをしたのは言うまでもない。

僕は「なにもせず帰った男」であり、

「直接話しかけられないクセに、ネットだとグイグイいく男」でもあるのだ。

映画「truth〜姦しき弔いの果て〜」絶賛公開中!

広山詞葉さんの受付嬢、ハマり役です!!

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その後、例のツイートに広山さんから「いいね」とRTいただけました。

ありがとうございます!

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最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!