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黒岩幹子さん「きっかけはデヴィッド・リンチ。偶然の出会いで人生は広がる」

映画関連の書籍やWEBマガジンの編集・執筆をおこなう黒岩幹子さん。パンデミックの最中にデヴィッド・リンチ監督のインタビューを読み、超越瞑想(TM)に興味を持つようになりました。その後、ある偶然をきっかけにTMを学ばれた黒岩さんにお話をうかがいました。

リンチ監督の暮らしぶりに惹かれて

TMに興味を持ったきっかけは、デヴィッド・リンチのインタビュー記事を読んだことでした。2020年の春、新型コロナウイルスのパンデミックで外出自粛が要請されていた時期に、「Hollywood Reporter」「VULTURE」といったアメリカのエンタメのニュースサイトで、様々な文化人がその状況下でどのように過ごしているかを話すシリーズが連載されていたんですが、そのなかにリンチのインタビューもありました。その記事にリンチが毎日朝と夕方に20分ずつ超越瞑想=TMをやっていることが書かれていたんです。そこでリンチはTMについてこういうふうに話していました。

「我々はそれぞれ内面世界を持っている。もしそれが恐怖や緊張や不安に満ちている場合、もしそうしたネガティブな要素を取り除いてゴールドを取り込みたいのであれば、超越瞑想のテクニックを身に着けるべきだ。それによって内面に飛び込み、超越し、全ての人間の内にある宝物、つまり知性、創造性、平和、愛、活力、幸福を体験することができる」

Hollywood Reporter (APRIL 20, 2020)

正直に言うと当初このTMの説明についてはあまりぴんと来てなかったんですが、そのインタビューのなかで語られたリンチの生活ぶりや心構えにシンパシーというか、羨望を感じたんです。具体的には、もともと家で過ごすのが好きだから今の隔離生活もまったく苦にならず、自分でランプを作ったり絵を描いたりしてしているといった話でした。リンチはその時期にYouTubeで天気予報の番組を始めたりもしていました。

私もインドア派で一人で行動するのも苦にならないほうですけど、それでも当時は自宅で漫然と時間を過ごしてしまっていることに焦燥感や閉塞感があって、リンチのようにどんな小さなもの、些細なことでもいいから日常的に何かを創造する生活を送りたいと思いました。そして、リンチがストレスを溜めず、クリエイティヴに過ごすために必要不可欠なものとして考えているのがTMだということで、TMに興味を持つようになりました。

「無になる」必要はない

そして、それから1年ほど経った頃、なんと知り合いの方から「TMのインストラクターになった」という話を聞いたんです。そして、TMをするようになってアイデアが増したり、それを形にすることもよりスムーズになったという体験談を聞いて、やはり私もTMをやってみたいと思いました。

TMを学ぶ4日間のコースでは、TMを実際に行うと同時に、基本的な知識を座学で教えてもらえたのが良かったです。「瞑想」というと「無になる」というイメージがあり、自分にそれができるのだろうかと不安だったのですが、TMでは「無になる」必要はなく、さまざまな考えが浮かぶことも瞑想の一部であるということがわかってホッとしました。また、初日にTMを行ったときは知らないうちに努力をしていたためか、TMの時間が長く感られじたのですが、4日目にはかなり気楽に行えるようになり、時間の経過もあまり気にならなくなりました。そして、TMを行ったあとスッキリした気分を得られることが実感できるようになったのも、4日間連続して受講したおかげだと思います。

風邪を引かないようになった

その後、TMを毎日の習慣・ルーティンにするまでは少し時間がかかりました。勤務時間の都合上、夜型の生活スタイルということもあって、一日のうちでいつTMを行うかがなかなか定まらなかったんです。ですが、チェッキング(フォローアップのミーティング)の中でもらったアドバイスを実践したり、オンラインのグループ瞑想会に参加したりするうちに次第に毎日行えるようになりました。

TMの効果として一番感じるのは、やはり気分が落ち着くことでしょうか。起床後にまだ眠気が残る状態でTMをやるとスッキリしますし、夜の場合はリラックスの効果を得られているように思います。また、私は仕事の間ほぼパソコンの前に座りっぱなしで、文字を読むか書くかしているのですが、集中力が途切れると煩わしさを感じたり、時には仕事が捗らずに苛立つこともあります。そういう時にTMは文字通り良い気分転換になりますし、悶々とする時間も減ったような気がします。そしてもしかするとこれが一番の効果なのかもしれませんが、TMを始めてから風邪を引きにくくなったように感じています。新型コロナにかかったり、軽い風邪を引いたりはしましたが、重症化はせず何日も寝込むことがなくなりました。

黒岩さんが編集を担当した書籍『青山真治クロニクルズ』(リトルモア)

偶然の出会いで人生は広がる

現在、「boidマガジン」というWEBマガジンの編集に携わっています。連載・掲載されているコンテンツは映画や音楽、テレビ時評やオーディオに関するエッセイや写真作品、ラジオ(動画)など多岐に渡ります。

今はインターネットやSNSを使えば、気になることや知りたいことは大抵すぐ調べられるので、興味がないことをシャットアウトしやすくなっていると思うんです。その結果、自分にとって余計な情報を目にしなくてすむ一方で、自分の興味の幅を狭めてもいる。たとえば音楽でいえば、Apple MusicやSpotifyなどのサブスクを使えば、自分が知ってる曲はだいたい聴けるし、アルゴリズムによって自分が好む傾向の音楽を新たに知ることもできますが、自分がこれまで聴いてこなかったジャンルのあまり知られていない曲を偶然聴いて衝撃を受けるなんてことは滅多に起こらないわけですよね。でも、そういう偶然の出会いってやっぱり大切だと思うし、余計な情報から人生が広がっていくこともあると思うんです。「boidマガジン」はそういう時間を生み出す場になってほしいと願っています。今後も読者の方の興味や探求心の新しい扉になるような記事を掲載していきたいです。

中原昌也・風元正「アヒルノイエ漫録」や、DOWSER長嶌寛幸の新連載も

黒岩幹子(くろいわ・みきこ)
1979年生まれ。編集者・ライター。「東京中日スポーツ」、「boidマガジン」、映画パンフレット等の編集に従事。編書に『青山真治クロニクルズ』(共編著、リトルモア)、『映画は爆音でささやく 99-09』(樋口泰人著、boid)など。https://magazine.boid-s.com/


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