おしょー。

推しを愛でる日々。 推し活仲間に背中を押され、 小説にチャレンジ。 文才はないけど、妄…

おしょー。

推しを愛でる日々。 推し活仲間に背中を押され、 小説にチャレンジ。 文才はないけど、妄想が楽しいので 頑張ります。

最近の記事

うさぎに導かれた月⑬

僕は食器を下げ洗い物をした後、ソファーへ移動して大学の課題を始めた。 面接の時、メグが座っていた所で。 柔らかなボサノヴァの音楽が心地よく、集中力を上げてくれた。 そのうち軽く背伸びをしてあくびをしながら時計を見ると15:43を指していた。 まぁまぁやれたなと片付け始めた時 カランカラン……「ただいまぁ〜」 メグ達が帰ってきた。 慌てて僕は立ち上がりリュックにノートたちを押し込んだ。 「あ、勉強してた? ほら、斌、あの子がかっちゃん」 そう言うとキャリーケースを止

    • うさぎに導かれた月⑫

      マスター達は14:00でお店を閉めて斌さんのお迎えに行った。 そのままお墓参りをしてから戻ってくると言っていた。 僕は妙に落ち着かない気持ちで、店内で遅めのお昼を食べた。 前日のうちから仕込んであるアイスコーヒーをお冷用のコップに注ぎ、 メグが用意してくれたチェダーチーズとハムのホットサンド、そしてサラダをカウンターに置いた。 …どんな人だろう。 そう思いながらメグとマスターの顔を思い浮かべた。 メグはマスターの目元とそっくりだから、 斌さんはお母さん似なのかな? 「ど

      • うさぎに導かれた月⑪

        夏休みに入っても仕事は休みじゃない為、日々お店は繁盛していた。 アイスコーヒーやカフェラテ、冷たい飲み物やパフェが良く売れた。 夏の開店準備は中々大変だった。 何が大変だったかと言うと、、、 «蚊» もはや僕の足や腕はこいつらの朝飯でしか無かった。 テーブルに飾る花や葉っぱを摘み終えてお店の中に入るとすぐにムヒを塗りまくった。 いい加減対策をしないと痒すぎて集中出来ない。 夏休みに入ってもゼミやら何やらで大学に行ってたりもするけど、、、 とても痒みには勝てない。 だか

        • うさぎに導かれた月⑩

          「そういえば、かっちゃんの誕生日って8月だっけ?8日?」 僕はドキッとした。 「あれ?僕言いましたっけ?」 なんで知ってるんだろうと頭が“あれ?”で埋め尽くされた。 「へへへっ。履歴書に書いたの見たから」 イタズラ心丸出しな顔をして笑っていた。 メグの「へへへっ」はいつも何か企んでいる時に発せられるものだった。 「何か嫌な予感しかしないんですけどwww」 僕が言うと 「え〜?そんな事ないよ〜。へへへっ♪」 間違いない…… 何か企んでる…… 「なんすか急に…

        うさぎに導かれた月⑬

          うさぎに導かれた月⑨

          こうして人生初のアルバイト生活が始まった。 ゴールデンウィークということもあって、喫茶店周辺の企業や大学は休みの所も多く、人の気配は少なかった。 大学で友達になったヤツらもそれぞれ好きに過ごしている感じで 僕は仕事を早く覚えられるよう毎日『雑草』に通った。 まずは朝来る前に店の脇に咲いている花や葉っぱを摘んで花瓶にいけたり、掃除をしたり、製氷機の氷をほぐしたり、お米を研いだり、レタスをちぎって洗ったりと、 開店に向けて様々な準備を終わらせる。 10:00になると開店のお知ら

          うさぎに導かれた月⑨

          うさぎに導かれた月⑧

          椅子から降りると恩さんがテーブルを拭いている所だった。 店内はすごくレトロな雰囲気があって 見ているとタイムスリップしたかような気持ちに吸い込まれる…… 壁には額に入った絵がいくつか飾られ、色々な観葉植物が何ヶ所かに置かれてあった。 壁には茶色くなったメニューもぶら下げられている。 「ナポリタン・オムライス・ミックスサンド・トースト・パフェ」など。 喫茶店の定番と言えるメニューだけど、どれも惹かれるものばかりだった。 他には天井近くに棚があって、ブリキのオモチャだったり

          うさぎに導かれた月⑧

          うさぎに導かれた月⑦

          父さんと幼馴染みというマスター。 僕が子供の頃に来た事がある。 まさかの展開だった。 「佳月君、明日何か予定ある?」 恩さんに声をかけられ僕は我に帰った。 「いえ…あ…はい……いや、ないです。」 僕は動揺が収まらず、まともな返事が出来なかった。 「ぷふっ、、、」 恩さんは小声で「可愛いっ」と言いながら口元に手を当てて笑った。そして 「じゃあ明日、朝から来れる? 9:00に来て開店準備とか色々教えるから。」 と少し左に首を傾げてニコニコとしながら僕に聞いてきた。

          うさぎに導かれた月⑦

          うさぎに導かれた月⑥

          ゴールデンウィークに入ったのをきっかけに僕はバイトをしようと決めていた。 受験合格した時に僕は父さんに “アルバイトをしたい” と相談していたのだ。 その時は入学してすぐは大変だろうから、ゴールデンウィークぐらいからやったらいい、とアドバイスをくれた。 それから色々バイト募集の雑誌をみたり、スマホで色々見ていたけど、 すぐには決められないでいた。 正直、何がしたいか分からなかった。 コンビニもマックもスーパーも、何となくピンと来なかった。 実はというと、僕は人混みが嫌いなの

          うさぎに導かれた月⑥

          うさぎに導かれた月⑤

          そうか。 扉を開けて中に入った時に懐かしいと感じたのはそうゆう事だったのか。 なんで気づかなかったんだろう。 そんな事を思いながら僕はにかみながらマスターに 「僕、多分昔、ここに来た事ありますね。お店に入った瞬間から何だか懐かしいと思っていたんです、、、」 僕は頭を掻きながら店内を見回した。 どんな顔をしていいのか分からなくて、とにかく落ち着きたかった。 「よく覚えていたね。お父さんに連れられて小さな少年はあそこのソファーで遊んでたんだよ。」 嬉しそうに指を差しマスター

          うさぎに導かれた月⑤

          うさぎに導かれた月④

          「ごめんね〜。」 と言いながら女性が近づいてきて僕の隣を指差して、座っていいかと首を斜めにしながら訊ねた。 僕はこくりと頷く。 「あなたのお父さんと私のお父さん、幼馴染なのよ。それでね、あなたがここでアルバイトしたいから働かせてもらえないか、と連絡があったわけ。」 僕は何が何だか訳が分からないまま固まっていた。 「それで、私のお父さんは喜んで引き受けたっていう話なの。ちょうど前のアルバイトの子が卒業してからずっとアルバイト募集していたけど居なかったのよねぇ。 ただ、やっ

          うさぎに導かれた月④

          うさぎに導かれた月③

          マスターが僕に声を掛けた。 「佳月君は何色が好き?」 僕は声をかけられたことに驚きながら 「、、、あ、青、、、です」 いや、緑? ん、黄色も好きだけど、、、 そんな事を考えながらマスターに目をやると 後ろの棚に並べられているカップの中から濃い群青色のコーヒーカップを手に取り 淹れたてのコーヒーを注いだ。 「さぁ、飲んで。飲みながら面接でいいよ」 僕は動揺した。 「えっ、、、あ、はい、、、ありがとうございます。頂きます、、、」 カップを覗くとカウンターの上に吊る

          うさぎに導かれた月③

          うさぎに導かれた月②

          マスターの声に導かれ、僕はカウンターに座っている白髪のおばあさんの席と反対のところに軽く一礼をして座った。 カウンターに置かれたピエロの置物や雑誌、観葉植物が目に入った。店内にはハスキーボイスの女性が歌う静かなJazzが流れている。 目をあげると、マスターは慣れた手つきで目の前にあるコーヒーを抽出するサイフォンという器具に引き立ての豆を落とし、年季が経ち茶色くくすんだコーヒーポットから優しくお湯を注いでいた。 次第に火山のマグマのように膨らむコーヒー。やさしく湯気が立つサイ

          うさぎに導かれた月②

          うさぎに導かれた月①

          僕はこの春大学生になった。 やってみたかった喫茶店のアルバイトをする為に面接に行った。 裏路地にあるレンガ調のその喫茶店の前には 『雑草』という看板が立てられていた。なんで『雑草』なんだろうと思いつつ約束の15:00になる前に扉を開けて中に入った。 カランカラン…何か懐かしさを感じる。 薄暗い店内にお客さんは3人。 1人は新聞を読みながらサンドイッチを頬張るサラリーマン。もう1人はカウンターに座ってマスターと話をする白髪のおばあさん。そして、ソファーに座って本を読む長い黒髪

          うさぎに導かれた月①