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うさぎに導かれた月⑬

僕は食器を下げ洗い物をした後、ソファーへ移動して大学の課題を始めた。
面接の時、メグが座っていた所で。

柔らかなボサノヴァの音楽が心地よく、集中力を上げてくれた。

そのうち軽く背伸びをしてあくびをしながら時計を見ると15:43を指していた。
まぁまぁやれたなと片付け始めた時

カランカラン……「ただいまぁ〜」

メグ達が帰ってきた。
慌てて僕は立ち上がりリュックにノートたちを押し込んだ。

「あ、勉強してた?
ほら、斌、あの子がかっちゃん」

そう言うとキャリーケースを止めた斌さんが

「どうも。斌です。いつも父と姉がお世話になってます」

そう言って頭を軽く下げた。

「あっ、、いえっ、、僕の方がいつも、、、」

と僕も頭を下げた。

「覚えてる?かっちゃんがお父さんと一緒に来た時、斌も呼んで一緒に遊んだの」

僕は驚いた。

「あぁ、少しだけ覚えてる」

!?

どうやら僕は斌さんと会ったことがあるらしい。

「ちょっと荷物置いてくるわ」

そう言ってカウンターの奥に入っていった。
カウンターの奥に扉があり、そこからメグ達の住む家へと繋がっているのだった。

斌さんはマスターの背丈と同じぐらいだった。
顔はやはりお母さん似なのだろう。
誰に似ているかな、、、
あの韓国の俳優、、、

……チュ・ジョンヒョクに似てる感じ?
中々のイケメンだった。

僕はリュックを持って

「おかえりなさい、暑くなかったですか?」

とマスターに聞いたら

「今日も暑いな…今日も多めにアイスコーヒー仕込んでおくか」

とカウンターの奥へ入っていった。
メグは手で顔を仰ぎながらバレッタを外し、今度はクルクルと巻き上げて少し高めにまとめて止めた。

僕の胸の中で
“ドクン”
と大きな鼓動が走った。

「ホットサンド食べた?あ、ちゃんと片付けてるね。えらいえらい!」

そう言って冷蔵庫からオレンジジュースを出してお冷用のコップに注いだ。
白く透き通る肌、あらわになった首元が視界に入り、メグの渇いた喉を潤す光景が目に入った……

(やばいやばい…落ち着け……)

僕はリュックをロッカーにしまう為慌ててカウンターに入った。
何も感じてないかのように装って、エプロンを付けながら

「ホットサンド美味かったっす。また食べたいっすね」

と言うと

「えっ?そう?良かった!じゃあ今度はベーコンにしよっかな〜」

と白い歯を艶のある唇から覗かせて喜んでいた。

僕は……どんどんメグに飲み込まれていた。
僕は……メグを……

さっきの大きな胸の鼓動は
『恋』に落ちたことを知らせる音だったと気づいた……

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