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うさぎに導かれた月⑨

こうして人生初のアルバイト生活が始まった。
ゴールデンウィークということもあって、喫茶店周辺の企業や大学は休みの所も多く、人の気配は少なかった。
大学で友達になったヤツらもそれぞれ好きに過ごしている感じで
僕は仕事を早く覚えられるよう毎日『雑草』に通った。

まずは朝来る前に店の脇に咲いている花や葉っぱを摘んで花瓶にいけたり、掃除をしたり、製氷機の氷をほぐしたり、お米を研いだり、レタスをちぎって洗ったりと、
開店に向けて様々な準備を終わらせる。
10:00になると開店のお知らせとして入口のロールカーテンを開けてお店の看板とメニューを出す。
お客さんが来ればお水と古びた手書きのメニューを出し注文を受付たり、食事を提供したりした。

休日に来るお客さんは少なかったからゆっくりと色々教えて貰った。

ゴールデンウィークも終わり学校が始まると空き時間にバイトをさせてもらった。
いつの間にか課題や試験勉強もお店でしたりと、『雑草』で過ごすことが当たり前になっていた。
いや、学校が近いから便利っていうのもあるんだけど、
とにかく居心地が良くて、集中出来た。
友達も時々来てくれて、マスターからのサービスでアイスをご馳走してもらったりした。

ここは不定休。
マスターの気分で休みになる事があるそうだけど、僕が来てからは1度も知らない。
だから、ほぼ毎日僕はここへ来ていた。

マスターや恩さんはとても良くしてくれて
僕の名前も佳月君から“かっちゃん”へと変わり、恩さんのことも“メグ”と呼ぶようになっていた。

マスターはマスターのままだ。


ーー夏休みが近づいていた。

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