見出し画像

うさぎに導かれた月⑫

マスター達は14:00でお店を閉めて斌さんのお迎えに行った。
そのままお墓参りをしてから戻ってくると言っていた。

僕は妙に落ち着かない気持ちで、店内で遅めのお昼を食べた。
前日のうちから仕込んであるアイスコーヒーをお冷用のコップに注ぎ、
メグが用意してくれたチェダーチーズとハムのホットサンド、そしてサラダをカウンターに置いた。

…どんな人だろう。
そう思いながらメグとマスターの顔を思い浮かべた。
メグはマスターの目元とそっくりだから、
斌さんはお母さん似なのかな?

「どうせ会えば分かるんだから」

そう言って僕には写真の1つも見せてくれなかった。
マスターは微笑んでいるだけだし……。

身長は……
マスターくらいか……?
マスターは僕より少し引く175くらいだ。
ちなみに僕は179cm。

そんな事を考えながらホットサンドを口に入れた。

「……うまっ」

サンドの中でトロけたチーズが溢れる。
伸びたチーズを口に入れる為サンドを上に持ち上げチーズを吸い込んだ。

いつもメグは適当にあるもので僕にランチを作ってくれる。
今日も

「ごめん、簡単なやつでさせて」

なんて言ったけど、
ハムとチーズの絶妙な塩分がパンとよく合っていて、美味かった。
メグは慣れた手つきでポンポンと具材を置いて、出来上がったホットサンドを

“サクッ…”

と音を立てて三角にカットした。

エプロンを外してバックからリップを取り出すと、ささっと塗り、ガムを口に放り込んでパタパタと奥から出てきた。
髪を止めてたバレッタをつけ直しながら

「かっちゃん、あとはよろしく!
16:00には戻れるかと思う。食べ終わったら洗って置いてね。
じゃ、また後で!」

あっという間に出かけて行った。

店内は僕だけになり、BGMにはボサノヴァが流れていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?