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うさぎに導かれた月②

マスターの声に導かれ、僕はカウンターに座っている白髪のおばあさんの席と反対のところに軽く一礼をして座った。

カウンターに置かれたピエロの置物や雑誌、観葉植物が目に入った。店内にはハスキーボイスの女性が歌う静かなJazzが流れている。
目をあげると、マスターは慣れた手つきで目の前にあるコーヒーを抽出するサイフォンという器具に引き立ての豆を落とし、年季が経ち茶色くくすんだコーヒーポットから優しくお湯を注いでいた。
次第に火山のマグマのように膨らむコーヒー。やさしく湯気が立つサイフォンを見て僕はワクワクドキドキしていた。
僕はこの光景がすごく好きだった。

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