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うさぎに導かれた月⑪

夏休みに入っても仕事は休みじゃない為、日々お店は繁盛していた。
アイスコーヒーやカフェラテ、冷たい飲み物やパフェが良く売れた。

夏の開店準備は中々大変だった。
何が大変だったかと言うと、、、

«蚊»

もはや僕の足や腕はこいつらの朝飯でしか無かった。
テーブルに飾る花や葉っぱを摘み終えてお店の中に入るとすぐにムヒを塗りまくった。

いい加減対策をしないと痒すぎて集中出来ない。
夏休みに入ってもゼミやら何やらで大学に行ってたりもするけど、、、
とても痒みには勝てない。
だからカバンにいつも携帯用ムヒを2つ入れていた。

それに比べて、メグは全くと言っていいほど蚊のヤツらとは無縁のようだった。
何が違うんだ?
血液型か?
僕はO型でメグはA型……
関係あるのかな、、、?
と頭の中で思い

「メグって蚊に刺されないよな」

そんな事を聞いたら

「うん、だって虫除けスプレーするもん。まさか、かっちゃんやってないの?」

うわぁ〜、っていう顔をしながら

「あとさぁ、かっちゃん黒系の服多いもんね。黒って蚊が寄ってくる色なんだってよ?」

哀れんだような顔を見つめた。
確かに僕は暗めの色が好きだから、黒系ばかりだった。反対にメグはアイロンが綺麗にあてられた白いシャツとか淡い黄色や水色の服とかだったような……
どれもこれも可愛くて……

(じゃなくて、蚊の話をしてたんだった!)

脳裏に浮かぶメグを振り切るように顔を上に向け首を振った。

「虫除けスプレー何使ってるんすか?」
(動揺するとつい語尾がスカスカしちゃう……)

「はい、コレ」
と言ってバックから出して見せてくれた。

「私自分で作ってるんだ。まだ沢山あるから、かっちゃんにあげるよ。」

小型のスプレー容器を受け取り

「へぇー!!さすがだな。女子すげぇ〜!
有難く頂戴しますぅ~」

と神を崇めるように手を上げ頭を下げた。
メグと同じものを使うのも嬉しいし、
メグが作ったものだから余計に嬉しくなった。

「どういたしまして!
あ、今日、斌が帰ってくるから、後で紹介するね」
と髪をポニーテールに結い上げ、奥のキッチンに入っていった。


そう、今日は7月20日。
斌さんが帰ってくる日なのだ。

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