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注目度が高まるSDGs時代の新たな観光プロモーション「LGBTQツーリズム」とは(後編)

【6月はプライド月間!】
世界各国でLGBTQ+の権利を啓発するイベントが開催されます。
 


 
    新通観光プロモーション戦略室の武田です。
    注目度が高まるSDGs時代の新たな観光プロモーション「LGBTQツーリズム」とは(前編)では、LGBTQツーリズムの概論や、観光施策として注目される理由をお伝えしました。

 後編では、LGBTQツーリズム施策を実施する理由や、日本における課題についてまとめてみたいと思います。


LGBTQツーリズム施策を実施する理由

 LGBTQツーリズム事業を展開する際に、取組の話題性や先進性などから、メディアの記事やSNSで採り上げられる機会も多々あります。
 それに対しての賛否意見・反応は様々なのですが、「なぜ、わざわざLGBTQにフォーカスする必要性があるのか」という声を目にすることが結構あります。「あらゆる人々を受け入れる『ダイバーシティ』と言うのなら『LGBTQだけに向けて』というのは矛盾しているのでは」とか、あるいは「中にはわざわざ取り上げて欲しくない人もいるだろう」など、それは非常に理解できます。

 それでもLGBTQツーリズムに取り組むには、理由があります。そこには、まずLGBTQツーリズムの目的を知る必要があります。

 LGBTQツーリズムは、

  • 「LGBTQ ツーリストが安心・安全に世界中で観光を楽しめる」旅行の環境を整えること、つまり顧客視点の要素。

  • 旅行客を受け入れる側(地域や宿泊施設等の観光関連事業者)が、LGBTQの人々のことを理解して迎い入れ、そして消費単価が高いとされるその経済効果による利益を受けること。

 つまり、相互が旅行を通じてWin-Winの関係性を築くことがその目的です。
 
 なので、LGBTQツーリズムは、LGBTQ旅行者が安心して旅行を楽しめる場所を知り、地域は理解を持って旅行者を受け入れる「LGBTQフレンドリー」であることを知ってもらうための、双方にメリット・利益がある施策と言えるのです。

LGBTQ旅行者は「LGBTQフレンドリー」な旅行先を探しており、受入側は「LGBTQフレンドリー」であることを知ってもらうことが重要です(「アクティブリゾーツ裏磐梯」にて)


日本におけるLGBTQツーリズム施策の課題とは

 ところで「LGBTQ旅行者」にとって、「日本」という国はどのように映っているのでしょうか?

 ドイツの国際的なゲイ専門旅行ガイド『Spartacus International Gay Guide』が発表しているゲイトラベル指数(ゲイフレンドリーな国ランキング)「SPARTACUS Gay Travel Index 2021」によると、世界197の国を「LGBTQ差別禁止法の有無」、「同性婚/同性パートナーシップ法の有無」、「同性カップルの養子縁組の権利」など14の指標(3カテゴリー)をもとに評価したランキングで、日本は60位にランキングされています。
 このランキングはLGBTQ施策に先進的な国・地域が上位に位置する傾向にあり、同じアジアでは同性婚が法制化されている台湾が10位で最も高い評価となっています。

 一方で、国土交通省による令和3年度の観光白書より、株式会社日本政策投資銀行および公益財団法人日本交通公社が共同で実施した「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(第3回新型コロナ影響度特別調査)」(調査機関2021年10月5日~19日)をもとにしたデータによると、
アジア居住者ならびに欧米豪居住者が「次に海外旅行したい国・地域」において、日本はともに前回調査に続き連続で第1位となっているので、ゲイトラベル指数(ゲイフレンドリーな国ランキング)における評価とのギャップが激しいと感じます。

 ゲイトラベル指数が国におけるLGBTQ施策に左右されるものであることを前提としつつも、このことは、日本は魅力的な旅行先ではありながら、LGBTQ旅行者が求める安全でLGBTQフレンドリーな旅行先との認識が薄いことを表しています。
 つまり、LGBTQツーリストを誘客するには、受入のための理解・啓発、そして施策を行う事と同時に、そうした取組を行っていることを知ってもらう、「LGBTQフレンドリー」であることを認知させることが非常に重要といえるのではないでしょうか。


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