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注目度が高まるSDGs時代の新たな観光プロモーション「LGBTQツーリズム」とは(前編)

【6月はプライド月間!】
世界各国でLGBTQ+の権利を啓発するイベントが開催されます。


 新通観光プロモーション戦略室の武田です。
 ここ数年、あらゆる場面で「LGBT」とか「LGBTQ」という言葉を目にしたり耳にする機会が大変多くなってきました。アルファベットはそれぞれ性的指向や性自認を表すイニシャルで、いわゆるセクシュアル・マイノリティの総称です(色々な表現の仕方があるのですが、以降ここでは「LGBTQ」に統一いたします)。
 電通ダイバーシティ・ラボの調査(2018年)ではLGBTQに該当する人は約8.9%と発表され、これは11~12人に一人の割合にあたり、大体「左利きの人」「血液型がAB型の人」と同じくらいになります。そう考えると非常に身近な存在であると言えるでしょう。

 6月は世界各地でLGBTQの権利に関する啓発を促すためにパレードやイベントが開催される「プライド月間」です。この機会に、LGBTQの人々をターゲットにした旅行施策として世界的にも注目され、近年は日本国内でも取り組みが始まっている「LGBTQツーリズム」について書いてみました。


弊社での「LGBTQツーリズム」への取組

 弊社では、復興庁の「平成30年度『新しい東北』交流拡大モデル事業(広域型)」、観光庁「令和元年度 最先端観光コンテンツ インキュベーター事業におけるモデル事業(分野5:ナイトタイムエコノミー推進)」、最近では令和3年度の訪日グローバルキャンペーン等に対応したコンテンツ造成事業の一環で実施された国土交通省近畿運輸局の多様性の象徴であるドラァグクイーンを活用したエンターテインメント性あふれるグローバルコンテンツの造成事業」などで、LGBTQツーリズム関連事業に携わっております。

復興庁の「平成30年度『新しい東北』交流拡大モデル事業(広域型)」における海外のLGBTQ関連の有識者、メディア、旅行エージェント、インフルエンサーを招請したファムトリップの様子(2018年)。東日本大震災で甚大な被害を受けながら復興が進む宮城県の閖上地区を訪問(写真)するなど、東北各地の観光地や宿泊施設を訪れました。

LGBTQツーリズムが注目される理由

 なぜ、LGBTQツーリズムは注目されるのか。その要因は大きく2つあります。
 
 ひとつは、近年声高に叫ばれている持続可能でより良い世界を目指す国際目標「SDGs」の理念、そして「ダイバーシティ&インクルージョン」の観点から、LGBTQ旅行者を受け入れる取組は、特にインバウンドの誘客においては尚更、必要不可欠であるという課題感によるものです。逆に対応しないことで生じる可能性があるリスクを回避するという意味合いもあるかと思います。
 もうひとつは、LGBTQ旅行者は比較的消費単価が高い傾向があり、その経済効果が注目されていることにあります。LGBTQ関連のコンサルティングを行っている株式会社アウト・ジャパンが発行する『LGBTツーリズムハンドブック』によると、国際旅行におけるゲイ・レズビアンの比率は約10%で7000万人(Travel University,2000)、市場規模は2020億ドル、日本円で約20兆円(Out Now Consulting 2014)と言われています。

海外における「LGBTQツーリズム」の事例と経済効果


 具体的な事例では、世界ではLGBTQの祭典である「プライドイベント」やパレードに参加することを目的として、多くの観光客が押し寄せ、その結果、多大な経済効果を得ている地域が数多くあります。
 世界一の華やかさと言われるシドニーのパレード「マルディグラ」は毎年、世界中から数十万人の観光客を呼び込んでおり、その経済効果は3,800~4,100万ドルと言われ、全豪オープンに次ぐ規模の国を挙げてのお祭りになっています。
 ニューヨークのプライドパレードは約200万人、サンパウロは約400万人規模で年々盛大さを増しており、それに伴う地域への経済効果も多大なものとなっています。

シドニーのパレード「マルディグラ」

 このような両側面を持って、LGBTQツーリズム施策は重要視されています。つまり、特にインバウンドの誘客を目指す自治体や事業者にとっては、「やらなくてはいけない」と「やった方がいい」取組と言えるのではないでしょうか。

 後編では、LGBTQツーリズム施策に取り組む理由や、日本における課題に触れたいと思います。

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