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【Part2】(脱)非モテコミット
バイト先と思われるコンビニの駐車場に車を停めて文香の携帯電話にコールする。
通話を切って3分も経たないうちに文香が肩から腕を突き刺すように深く上着のポケットに両手を突っ込みながら近付いて来た。
ヒト目を憚らずに浮かべる満面の笑みは女性が男性に向ける色のあるソレではなく、紛れもなく男女を意識しない同級生に向けられた素に近いカジュアルなモノだ。
だがこうやって2人で会うとやはり1人のオトナになりかけた女性そのものだった。夜更けの車内という密室が2人の秘密を更にムーディーに仕上げてくれそうな期待を煽る。
車を出して城の跡地が観光スポットとなっている大きな河川沿いの公園へ向かった。
だだっ広い駐車場は深夜にも関わらず解放されており、僕らのような男女2人組のカップルなんかが車を停めては長く動かなくなる。
「ここでいい?結構使えるんだよね、ここ」
「え、ここ?何か外から見たら車の中で何かしてるみたいじゃん…」
車を再び出し、城の麓の公園の前へ移動した。
日中は売店が立ち並び、自販機がズラリと並ぶため社内も真っ暗にはならない。
「ここならエッチな雰囲気じゃなくなるでしょ?」
「さっきよりはそうだけど…」
「何か温かいモノ買ってくる。お茶でいい?」
「ありがとう」
2人で会うとこんな感じなのか、文香の口数が心なしか減っているのが若干気になりながらも、温かいお茶を買って車内に戻った。
「私絶対変なことしないよ?(笑)」
「いいよ、そんなつもりで来てないし。ってか雰囲気に弱いね?」
「恥ずかしいから2人の秘密にして(照)」
「大丈夫だよ口軽いけど(笑)」
「軽そう(笑)」
「軽いけど約束したことは守るから大丈夫(笑)」
「じゃぁお願いします…」
僕達は車内に並んで座りながら学校生活での懐かしいエピソードを振り返ったり、ここ最近のクラス内での人間関係の話題で時間を忘れて盛り上がっていた。
やはり共通の話題が沢山あると話が尽きず楽しいし、何より相手は皆の憧れる文香だ。僕自身も下心無く楽しんでいるし、こういう関係が続いて特別な間柄にでもなればそれも良いと思えた。2人での秘密というのが希少な感じで尚良い。
秘密を共有し合うことから後に唯一無二の信頼関係にでも発展すれば良いのにと、そんな期待の方が上回っていた。
「ってかサチに告られたりしなかった?」
「そういう話って何で皆に知れ渡るの?スクープかよ」
「泣いてたよ」
「オレにだって選ぶ権利はあるでしょ」
「可愛いじゃん」
「入学した頃可愛いなって思ったことはあったかも」
「じゃぁ良いじゃん(笑)」
「やっぱ文香さんもこういう話題好きなの?(笑)」
「女子だもん(笑)」
「…学際オレも顔出しに行ってたじゃん?そこで久々にサチにも会ったから連絡先交換してたの」
「うんうん」
「こうやって車で会って喋って、帰りに電話が掛かってきて『付き合ってください』って」
「返事は?」
「『ごめん、無理!』って」
「ひっでー」
「だって2人で会って喋ってた時、オレ風邪拗らせてて鼻が詰って辛かったのを、あの子鼻の先摘まんで来て遊んだりしてカチンと来ちゃってたんだよね」
「何だそれ、ウケる(笑)」
「こっち必死だし、落ち着けようとしてるのにくしゃみ止まんなくなったりするじゃん」
「確かに(笑)」
「それを文香さんが知っちゃってるのか。クラスで何か言ってたの?」
「女子だけだと思うよ。『城西くん酷いね』って言ってた(笑)」
「待って、クラスで話題になるってもしかしてコレのこと?」
「もちろんコレだけじゃないけど、こういう話は印象付きやすいでしょ(笑)」
「…貰い事故感(笑)」
「いちいち酷い(笑)」
1月の深夜ということもあり外は寒波の影響で凍てつくような寒さで身を縮めるようであったが、話が盛り上がったついでに外を少し散歩しようと文香に打診すると嫌な顔をせず応じてくれた。
僕のダウンの方が防寒性が高いと考え文香にそれを着せて外へ出た。
寒さを生かしたいのでしっかりと身を寄せながら肩をぶつける。
「何?(笑)」
「雪山で遭難しそうになってくっついて暖め合うシーンあるじゃん?」
「ってか寒いんじゃん(笑)」
「寒さや暑さには本当に強いんだけど何となく(笑)」
「何となく?(笑)」
「じゃぁこうしよう」
「⁉︎」
文香の手を握り適度に距離を縮めながら歩き始めた。
小柄な文香の小さな手が僕の掌をしっかりと握り返す様子から、何もさせないと強く牽制して見せたはものの、僕個人に対して拒絶反応を示していたわけではないのだと捉えた。
時折り肩を竦めて寒がって見せながら、いつしか僕のジャージのポケットの中に繋いだままのその手を突っ込み、腕が触れるくらいの距離を自然に保ちながら、ただただ歩いた。
「文香さんさ、普段はやんちゃな男子並みに元気じゃん?」
「え?」
「でもやっぱ女子だな(笑)」
「何それ?(笑)」
「さっきカーSEXしてそうな車が沢山停まってる駐車場入った時急に無口になった(笑)」
「やめて、恥ずかしい…(照)」
「オレ相手にドキドキするわけでもないだろうに(笑)」
「そういう問題じゃなくてさ、やっぱ時間帯というか男子と女子で密室に2人じゃん(笑)」
「女子だ…(笑)」
「サチと何かした?」
「したって言ってた?」
「してても言わないでしょ(笑)」
「まぁキスとか何もしてないけどおっぱい揉んだ」
「ってか色々ウケるんだけど。まぁ揉まれただけって言わないか(笑)」
「それより、ぶっちゃけカーSEXってしたことある?」
「ない!まだ皆車持ちどころか免許持ってないでしょ?」
「じゃぁこうやって今度は昼間2人で何処かへ行こうよ」
「マジ?行く!」
「カーSEX抜きで(笑)」
「当たり前じゃん(笑) 私SEXは嫌いじゃないけどもっと好きなコトあるかも…」
「何それ?」
「当ててみて(照)」
「うーん…。じゃぁ、クンニ」
「違う。もっと可愛い感じのヤツ」
「おっぱい舐められるとか?」
「それも違う。ってかエロいのばっかじゃん、そもそも私おっぱい無いもん」
「そういう話じゃなくて?普通におっぱいあるじゃん」
「もういいや。SEXよりもキスしてるのが好き…」
キスが好きとか胸が無いとか言いながら自分の両胸に手を当てる仕草で僕の顔を見上げる。そう言われたところで僕にどうしろと言うのだろうか、特に意図は無いのだろうがなかなかな情報を聞き出せたと面食らいつつもある。
車に戻ってからもその調子で会話は続く。
「城西くんはヤリチンなの?」
「ドコからがヤリチンなのかね?」
「じゃぁ何人とした?(笑)」
「分からない(笑)」
「ヤリチンじゃん!(笑)」
「数えて無いだけだよ。じゃぁ文香さんは?」
「私は3人。付き合ったヒトの数と一致するでしょ(笑)」
「オレは30人くらいかなぁ。付き合ったのは3人くらいだけど(笑)」
「ほら、やっぱヤリチンだ。付き合った人数と違う!私に手を出しても無駄だよ(笑)」
「ヤろうとしてねーし(笑)」
文香はそう言いながらまた両胸を手で押さえてガードを堅めるような仕草でニコニコと微笑む。
僕の方こそ、この場で文香と関係を持つことよりも、こうやってヒト目に隠れながらでも2人で会える時間が出来る方が本望だった。
しかしどういう訳か文香の視線が思いの外僕の顔をじっと捉えている時間が心なしか度合いが増していることにこちらも平静を装い切れずにもいた。
文香は気持ち斜めに倒した助手席のシートに真横に縋りながらこちらから視線を逸らさない。
眼の色は合流した当初と変わらず微笑んだままであるが若干トロンとた様子も窺える。
堪らず僕が問う。
「どうした?(笑)」
「え…?」
「ん?」
「何かマッタリしてきちゃった…」
その甘えたような表情に僕も抑えなくなり顔を近づけて顎に手を添えると、文香が顎を差し出しながら眼を閉じた。
そのまま文香のクチ元を唇で覆う。
小さくて薄い文香の舌が僕の唇をこじ開けて入って来たかと思うと僕の舌と静かに絡まるように重なった。
(続く)
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