ペットとボトルとディープとキス

ふった。

本当に幸せな1年間だった。

初めて心から愛した人だった。

初めて彼女の手を握った日。初めて彼女を抱きしめた日。初めて彼女とくちづけをした日。初めて彼女を抱いた日。
私の初めては全て君だった。

何をするにしてもドキドキして、胸の鼓動が聞こえないか常に不安で。そんな不安な私を彼女は優しく受け止めてくれた。

「あいしてる」

ずっと彼女だけを思っていた。ずっと彼女だけを考えていた。

始めて彼女を家に呼んだ時、彼女は愛犬のペスと戯れていた。そんな彼女を眺めていた。幸せだった。
君と家庭を築いてこんな毎日を送りたい。そう思った。

冬の寒い日、私は自販機で買った温かいココアを、彼女は温かいレモンティーを飲んでいた。
彼女を横目に見ていると、それに気づいた彼女は
「ひとくちのむ?」と頬を赤くしながら言った。
私は彼女を心から幸せにしたい。そう思っていた。

私の彼女に対する愛は深くなるばかり。
彼女を、思えば思うほど、彼女に対する接し方がわからなくなっていった。重くなりすぎていないか。嫌われていないか。どこにいても、何をしていても頭の中は彼女のことばかりになっていった。

彼女を思えば思うほど、信じていたいけれど、私にあっていない時間が不安でたまらなかった。私は彼女のSNSを監視するようになってしまった。


あ彼女とご飯を食べていたある日。席を外した彼女はケータイを置いていった。
私はいけないとわかっていたが、パスワードを掛けていない彼女のケータイを見てしまった。
「信じているのに…」そのような罪悪感に駆られながら、彼女のインスタグラムを開いた。
私の知らないアカウントがあった。
複数の投稿がされており、そこには日常の不平不満。彼女の身近な人に対する、悪口が書かれていた。

画面スクロールしていくと私と彼女のツーショットが載っている投稿が出てきた。
「彼がすき。大好き。彼の一つ一つの行動が可愛くて好きでたまらない。恥ずかしながら手を握ってくる時も、不意に見せる笑顔も、他の人には見せないところをたくさん見せてくれるところも、大好き。ただ…」

私はやめなければいけない。そう思っていたのに彼女の全てを知りたくて続きを読んでしまった。

「ただ…キスが本当に下手くそ。なんで私の唇を上から全て覆い被せてくるの?強く吸いすぎ。キスだけ本当に直して欲しい…」

続きがまだあったが、私は見ることができなかった。

彼女が戻っていた。何も言わずに私を見ていた。

「信頼を失った」そう思った私は、

『ごめん。』とだけいい
ケータイを返した。

『最低。勝手に見たんだね。信じてたのに。』
彼女は悲しそうな顔で私に言った。

私は何も言えなかった。

彼女の信頼を失ったと感じた私はその後何も話さ事ができず、その日はそのまま帰ることになった。

家に着くとケータイにメッセージが一件送られていた。
彼女からのメッセージだった。

「今日はありがとう。私は君と出会って毎日が幸せで、君のことが大好きだった。でも私は君が私のSNSを監視していること知ってた。だから私は君を試していたの。私は君を信頼していたからケータイのパスワードを掛けないでわざとテーブルに置いていった。信じていたから…
でも、君は私の期待に反して、監視した。私は縛られたくなかった。でも、君は私を信じないで監視してた。私たちもう無理だよ。別れよ。」

メッセージが送られ電話をかけようとしていたが、彼女は私をすでにブロックしていた。

大好きだったのに。愛してたのに。

悲しさと怒りが同時に渦巻く中、私は彼女の家まで行った。

チャイムを鳴らし、待っていると、彼女が出てきた。
右手には家庭用ナイフを持っていた。
彼女は私の前に来ると
「大好きだったよ。」そう一言だけ言って。
自分の首をナイフで切った。

彼女の血が飛び散った。

あたり全体は彼女の血の雨が降った。



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