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第48話 サンタ・ネネと死神の再会 5

あいたた やられちゃった

体中が砂まみれになっていたネネは、全身をパンパンたたき始めました。
またもや砂埃すなぼこりが、ちゅうに舞います。

「へっぷしんっ!!」

砂が鼻に入ったネネは、思いっきり大きなクシャミをしてしまいます。
ネネがティッシュを取り出して思いっきり鼻をかんだ後、腕に付けているサンタ・リングに触れました。
一瞬でサンタ服から私服へと、衣装が変わります。

そしてネネはバツが悪そうな顔で自分の髪をかき上げながら、死神の方へ向かって話しかけました。

「う~~、何言ってんの? 頭たたかれたんだから、私の負けだよ」

死神とネネの手合わせの勝敗ルールは、「先に相手の頭をたたいた方が勝ち」です。
砂煙すなけむりの中でネネは、死神に一発頭をたたかれていました。
つまりネネの負けのはずなのです。

「いえいえ、私は試合に勝ちましたが、勝負には負けたのですよ」
「ほへ?」
「そろそろ後ろに隠してるものを、見せてくれませんか?」
「え!? あ~~、え~っと、なんのことかな~」

いきなりの指摘に、ネネは落ち着きが無くなり、目が泳いでいます。
何かを隠そうと必死のようですが、それは自分から姿を見せてきました。

猫の親子でした。

猫の親子

実はネネは死神とのたたかいの中で、いきなり変な動きをしていました。
それは空中にしろくまのヌイグルミを出現させて気を引いた後、猛ダッシュで死神の目の前にけ寄ったことです。
そこからは一切の攻撃を止めたため、ネネは防戦一方になります。

その時彼女は、たたかいにおびえて体が硬直こうちょくし、砂浜で動けなくなってしまっている猫の親子を見つけていたのでした。
よく見ると、親猫の方はケガをしているようです。

一瞬の判断で猫の前にけ寄った後は、その場から動かずに死神の攻撃を受け続けていました。
ネネの戦闘スタイルは、飛び跳ね回りながら相手に攻撃を続けることです。
つまり猫を守るために、自分のスタイルを捨てたのでした。

当然、死神の攻撃を受け切れなくなったネネは一瞬のすきを突かれてしまい、頭に手刀しゅとうを一発くらってしまうことになります。

死神は、ため息をつきながら猫の親子を見つめていました。
「私もまだまだですね。猫には、全く気が付いていませんでした」

ネネは苦笑いすると、子猫の頭を優しくなで、猫を抱え上げました。
親猫の方は脚から血が流れているので、歩けなくなってるようです。

ネネはサンタ袋に腕を突っ込むと、中からペンダントを取り出します。

賢者の石

青く輝く水晶のペンダントを親猫の脚の上にかざすと、輝く水滴がしたたれ落ちました。

賢者の石 万能薬

そして輝く水滴が親猫の脚に届いた瞬間、ケガが完治します。

それは人間界では2つしか存在していない神具しんぐ賢者けんじゃの石」でした。
この水晶からしたたり落ちる水滴は、たった1滴で瀕死ひんしの重傷を負った生き物の完全回復が可能です。
もしも体の一部が欠損けっそんしていたとしても、元の状態に戻してしまいます。
さらに「ウイルス性のやまい」「呪い」「毒」「石化」「昏睡こんすい状態」など全ての異常を取り除くのです。

そんな夢のような万能薬を精製せいせいしてくれる賢者けんじゃの石ですが、1週間に1度しか使えないのが欠点だったりします。

「これでよし!大丈夫?歩ける?」

ネネは親猫の喉元のどもとを指でコチョコチョすると、ゴロゴロとのどを鳴らします。
どうやら大丈夫そうです。

ケガが一瞬で完治した親猫

猫は小首こくびをかしげているので、ネネの言ってることがうまく伝わっていないようでした。

「にゃ~ にゃ にゃ にゃ~」
「ニャッ」

ネネが近くの森を指さしながら、今度は変な言葉で猫に話しかけました。
驚いたことに今度は言葉が通じているようで、親猫は子猫を連れて森の方へトコトコと歩き始めます。

向かう先の森はネネがサンタ・ツリーを植えた場所で、小人妖精のトントゥ族が森を守ってくれているので安全です。

「驚きました。ネネさん、あなた猫語が話せるのですね」
「う~ん、猫語じゃないよ。心で話してんの」
「昔から猫っぽいなとは、思っていたのですが、ついに本物の猫になれたのですね。おめでとうございます」
「ありがとうニャ・・・って、どういうことよ」

わたし猫じゃないですけど

死神は猫と会話が出来るネネに驚かされましたが、彼女が使ったペンダントがどうしても気になります。
見せて欲しいと頼み込んで渡されたペンダントを、太陽の光に透かしてみると、中には宇宙に浮かぶ天の川銀河が見えました。

それは、神具しんぐである「賢者けんじゃの石」に間違いありませんでした。

「これは驚きました。いったいどこで手に入れたのですか?」
「手に入れたわけじゃなくて、それは私が作ったんだけど」
「ネネさんが、作った?!」
「いらない水晶すいしょうや石を粉々にして遊んでたら、いきなり爆発して出来てた」
「遊びで適当に作れるようなものじゃないですよ。これって賢者けんじゃの石です」
「へぇ」
「興味なさそうですね」

ネネが空返事からへんじをしたのは、他に興味をひかれることがあったからです。
やたらと周辺を、キョロキョロ見渡しています。

「どうかされましたか?」
「昨日まではビルの瓦礫がれきとか貨物船とかがいっぱいあったんだけど、今日は綺麗さっぱり全部なくなってるんだけど」
「一夜にして消えたのですか。なるほど」
「師匠がやってくれたの?」
「私ではありません。ですが、誰の仕業しわざか心当たりはあります」
「そんなこと出来る神様っているの?」

死神は、近くに立っている女性2人を指さしました。

「ほらそこにいますよ。おそらく彼女達ですな」
「え?無理でしょ。だってあの2人って人間だよね」
「違いますよ。女神です」
「ほへ?」

それはしろくまのヌイグルミを抱えている月のルーナと、道化師どうけしのオレンジでした。

つづく


【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です

ネネは「理想を現実化」してしまう能力を持っています
自ら不幸やトラブルをまねく「トラブルメーカー」でありながら、それと引き換えに大きな幸運をまねく「ラッキーメーカー」でもあります

天上界てんじょうかいにいた頃に賢者けんじゃの石を作り出しますが、大爆発で自室を黒焦くろこげにしてしまい、母サンタ・ルチアにこっぴどくお説教を食らいます
しかしその代償だいしょうとして「賢者けんじゃの石」を手に入れることが出来たのです

全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます

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