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『初音』の帖 『香染記』
香日和「こうびより」「こうにちわ」とも~ 十三之記
『源氏物語』五十四帖は、「色と香り」を重要画材として描いた絵物語。
例えば「初音」の帖は、新年の情景を白と青(緑)のみの色(光)で描いた美しい絵のような物語です。
「色」は二種ですが、いく種もの「香り」で満ちています。その一つ一つを謎解いていくと奥深い色と香りの世界に魅了されます。
「白」は太陽の光が上方に放たれ、「しらむ」から「しろ
刈安(かりやす) 「香染記」
香日和「こうびより」「こうにちわ」とも~ 九之記
古代からの聖地といわれる二子玉川(にこたま)、〈将監山〉
想えば「秋」、刈り残されたすすきが稲藁束のように枯色(かれいろ)を柔らかく輝かせ、銀色の花穂が風に揺れていた。
枯野、霜枯、枯色、黄朽葉、青朽葉と平安人は移り行く時間と風情を次々と愛しみました。
薄(すすき・尾花)は日本古来の黄を染め出す刈安(かりやす)と同種のイネ科です。
刈安の
月桃 (げっとう) 『香染記』
香日和「こうびより」「こうにちわ」とも~ 七之記
5月の奄美は月桃(げっとう)の花が薫風にそよぎます。
可憐な風鈴のような白い房が青い空に映えます。
この月桃の葉で絹糸を染めました。すると工房には、爽やかな芳香が立ちこめます。この香りはシネオール、ピネン精油の香りです。月桃は樹木ではなく、ショウガ科の多年性常緑草です。台湾、琉球、奄美へと渡って来ました。奄美では、蓬、もち米、黒糖を月桃の
「羊歯 (しだ)」 『香染記』
香日和「こうびより」「こうにちわ」 とも~ 四之記
古代からの聖地といわれる二子玉川(にこたま)の丘の上、〈将監山〉。
ある年の6月、梅雨の晴れ間でした。
私の染め場近くに、羊歯(しだ)が瑞々しく繁っていました。
その羊歯で絹糸を染めました。
すると思いがけない香りが、染め釜から漂ってきたのです。それは海の香りでした。
そして深い海から立ち上がるようで、ある想いへ誘われました。遥か何億年