johnny99

独り言。誰かの裏垢。

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最近の記事

小川洋子 - 「薬指の標本」

君を一言で表すと、アンビバレントな人間。 生命力に満ち溢れた一面と、実存的空虚に覆われた一面という、非常にアンビバレントな感情の中で生きている。 相反する感情の波の中で正気を保ち続けることは、とても辛く、想像を絶するほど困難なこと。 だけどそんな状況でも君は必死に舵を取り、船を正しい方向へ導こうとする。 まるで風の中のキャンドルのように、嵐が吹き荒れても、雨に打たれても、陽が沈んでも、その灯火は決して消えゆくことはない。 その姿に、僕らは美しさや強さを感じる。 小

    • ヴィクトール・フランクル - 「それでも人生にイエスと言う」

      この本を受け取っても、すぐに読まないでください。 本棚にしまい、呼ばれるその日まで待ち続けてください。 私たち人間は本から選ばれる立場。 この本を必要としている人間か。この本に値する人間か。 本は常に私たちの人生を俯瞰し、タイミングを見て、必要な言葉を語りかけてくれます。 人生も同じです。 ヴィクトル・フランクルは著書で、「私たち人間は、人生に対し生きる意味を問う側ではなく、人生から問われている存在である」と、コペルニクス的転回で語りかけてきます。 生きるとは、

      • エミリー・ディキンソン - 「わたしは誰でもない」

        エミリー・ディキンソン。最も有名で無名な詩人。 アメリカを代表する詩人である彼女が評価されたのは死後。家族が膨大な詩を発見してからだ。 保守的な田舎町で自室に篭り、孤独の中で彼女は詩を詠い続けた。 しかし不思議と彼女の詩からは陰湿な狂気を感じない。 むしろまるで、サウンド・オブ・ミュージックのオープニングのように、アルプスの山々に囲まれた緑の大地の上で、詩を詠む彼女の姿が眼に浮かぶ。 彼女は誰よりも言葉の力を信じていた。そして誰よりも優しく、孤独の中で言葉を通して他

        • カートへ

          カート。27歳になったよ。 最近、君に呼ばれている気がする。「The 27 Clubに入らないか?」って。 だけど僕はしがない物書き。参加できるかな? 君が27まで生きたから、僕も同じ景色を見るために生きてきた。 君って存在、君の音楽が僕の支えだった。 Lithiumを初めて聴いた時、僕が毎日苦しめられている躁と鬱の双極性を、こんなにも美しく表現していることに感嘆させられたよ。 どうして君が27で、自分の頭をショットガンで撃ち抜いたのか、みんな不思議に思っている。

        小川洋子 - 「薬指の標本」

          ずっと見ていたあの夢

          子どもの時から何度も見る夢がある。 雲ひとつない晴天の下、バルコニーで右手に拳銃を持ち、銃口を自らのこめかみに押し付ける。 人差し指でトリガーを引き、その場に崩れ落ちると同時に、画面がブラックアウトする。 怖い夢だ。 だけど心の奥底では、少し興奮している。憧れているんだ、この夢に。 今でもはっきりと覚えている。この夢を見始めた日を。 小学三年の夏休み。確か夏休みもあと一週間で終わるくらいの日。夜の八時くらい、畳の上に寝っ転がり、欄間のデザインを眺めながら、死後の世

          ずっと見ていたあの夢

          ヴィヴィアン・マイヤー

          ヴィヴィアン・マイヤー 謎のアマチュア写真家 1926年にニューヨークで生まれ、2009年にシカゴで幕を下ろした彼女の人生は、謎に包まれている。 友人は少なく結婚もせず、40年間ベビーシッターとして慎ましく暮らしていた。 「どこにでもいる、誰でもない誰か。」彼女の一生を聞いた時、最初に私が感じた印象だ。 しかし彼女にはカメラがあった。 二眼レフカメラを片手に街へ飛び出すと、彼女はヴィヴィアン・マイヤーになった。 多くの人がただ消費していく日々の時間を、捨て難き形あ

          ヴィヴィアン・マイヤー

          それでも生きる

          2023年はたくさんの辛い出来事があった。 2月のトルコ・シリア地震で、友人を25人失った。 9月のモロッコの地震で、以前ボランティアしていた村が被災した。 10月のパレスチナとイスラエルの衝突で、友人たちが殺し合い、罪のない人々が命を落とす、憎悪に満ちた救いのない世界を見た。 何度も思考が揺れ、感情がどよめき、心が崩れ落ちそうになった。 奈落の闇が私を誘う。虚無が全身にまとわりつく。人生の無意味さを感じ、精神が死の側へ傾き始める。 「無意味な人生に対し、唯一合理

          それでも生きる

          パレスチナとイスラエルに寄付した話

          日本赤十字のイスラエル・ガザ人道危機救援金に20万円を寄付しました。 学生の時に、イスラエル・パレスチナを2回訪れ、双方にたくさんの友人とかけがえのない思い出があります。 個人的に、イスラエルは世界で一番ヒッチハイクの難易度が易しい国でした。快く多くの人が目的地まで送ってくれます。車中で、言葉が通じる通じない関係なく、お互いのことを知ろうと心を開き歩み寄る姿に、ヒューマニズムの真髄を感じました。 あるイスラエル人とヒッチハイク中に意気投合し、彼らのエジプトへの家族旅行に

          パレスチナとイスラエルに寄付した話

          砂漠

          砂漠は孤独だ。 人も動物も植物も。この世のあらゆる生命を寄せつけない。 周囲の環境に迎合することも、他者への忖度も存在しない。 生命の営みを根源から破壊し、静寂に包まれた砂の世界を作り上げる。 砂漠は虚無だ。 絶対的価値は存在せず、何も生み出さない。 砂漠で動いているのは太陽だけ。東から昇り、西へ沈む。365日ただ漠然とその繰り返し。 自ら作り出した孤独の世界で、虚無に包まれた日々を送る。 哀れに思う人もいるかもしれない。 理解できないと不快に思う人もいるかも

          躁とうつ、いわゆる双極性障害について

          双極性障害。またの名を躁うつ病。 ハイテンションで活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態を繰り返す病気。 双極性障害はうつ病の一種と誤解されがちだが、実は異なる病気であり治療法や処方される薬も違う。 また、双極性障害は「心の病気」と考えられていたが、近年では「脳の病気」であるという報告(前部帯状回の体積減少など)があがっている。 日本での双極性障害の生涯有病率は、500人に1人と言われており、うつ病の100人に6人と比較すると稀有な病気である。 さらに「双極性障害

          躁とうつ、いわゆる双極性障害について

          みんな、死んでしまった

          赤毛の彼女ガジアンテップ。そこには私にとっての全てがあった。 今から7年前、初めてその街を訪れた。なんの特徴もないトルコの地方都市。なぜ訪れたのかも覚えていない。1泊だけして別の街へ移る予定だった。 しかし偶然入ったカフェで、ある女性と出逢った。赤毛に青い瞳の彼女。イスラーム色が濃い街において、赤毛を惜しみなく露出させる彼女は、異色の存在だった。 彼女と目が合い、自然と会話が生まれた。保守的で退屈な街に辟易していた彼女は、遠い異国から来た旅人に興味を持った。 お互いの

          みんな、死んでしまった

          睡眠と不眠

          のび太の特技は睡眠。0.93秒で眠りにつく。 のび太だけではない。人間の3大欲求である睡眠は、誰もが無意識にできる。 そんな睡眠が私にとっては一番難しい。 眠りにつくまでに85時間かかった経験がある。 その時は躁状態で一睡もせずに活発に動き回っていた。85時間起きていても全く眠気がなかったので、死ぬまで起きていられると感じたその矢先に、眠ってしまった実際には、気絶したが正しい表現かもしれない。 85時間起き続けた後だ。さぞかし長時間眠ると思われるが、実際は3、4時間

          睡眠と不眠