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【小説】ユーメと命がけの夢想家

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主人公「僕」が、毎週テーマに基づいた小説を1本描き、その内容を、梅茶から姿をあらわした〈ユーメ〉と語らいながら、「書きつづける」ことを日課にしていく物語。
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#短編小説

【目次とまえがき】書きつづけるには、書きつづけるしかない【ユーメと命がけの夢想家】

【目次とまえがき】書きつづけるには、書きつづけるしかない【ユーメと命がけの夢想家】

毎週金曜日22時頃更新!

【ユーメと命がけの夢想家】
目次

000:雨の日の朝食
001:黄昏時
幕間001:加虐と被虐
002:秘密の恋
幕間002:適切な努め
003:トキメキ二重奏
幕間003:焦燥と設計
004:きらめく星空
幕間004:三幕構成と本を読むということ
005:帰宅したら、何だかものすごいことになっているのですが
幕間005:構造と理屈なき展開

↓2月4日(金)22時

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幕間003:焦燥と設計【ユーメと命がけの夢想家】

幕間003:焦燥と設計【ユーメと命がけの夢想家】

前回目次◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「寒いな」
 窓の外は、すっかり雪化粧だった。
 川を挟んで向こう側ならまだしも、こちら側はちっとも降らない地域なのに、今年は特別だった。

「でも、どうせ明日には消えてしまうんでしょ。童心に還って雪だるまでもつくるつもりだったんでしょうけど」
「それでも、ぼたん雪が空を舞うのを見ると、どうしたってときめいてしまうんだよ」
 雪国の生まれだったら、

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003:トキメキ二重奏【ユーメと命がけの夢想家】

003:トキメキ二重奏【ユーメと命がけの夢想家】

前回目次◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「二人組、できたかなー?」
 教官の一言が、死刑執行の合図のように聞こえてしまって、マルサイは情けなさと屈辱でいっぱいになった。
「きょーかぁん、ここらへんにまだの人がいます」
 すかさず、ひょうきん者のレイトロが手をあげる。そして、おどけた調子でマルサイの付近を見渡すのだ。

「あれえ、どっこだあ、見えないなあ」
 教室はくすくすと笑い声がにじむ

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002:秘密の恋【ユーメと命がけの夢想家】

002:秘密の恋【ユーメと命がけの夢想家】

前回目次◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 クロイシさまというお方がいる。

 凛々しい眉毛とその横顔に、惚れてしまったんだと思う。でなけりゃ、一駅先の公園になんて通いつめたりなんてしない。
 あなたは舞い散る葉っぱを見つけると、夢中になって追いかけて、掴みとろうと躍起になる。その真剣な瞳が、好きなのだ。

 もっと、お近づきになりたい。
 それは叶わぬ願いなのかもしれないけれど。
 でも

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001:黄昏時【ユーメと命がけの夢想家】

001:黄昏時【ユーメと命がけの夢想家】

前回目次◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 黄昏は、誰そ彼、から転じたものらしい。そのことを、中3の古典で習った。暗くなってきて、目の前の人が誰だか分からなくなる時間、つまり夕方ってことだ。黄昏時。その字面もあわせて、当時の俺はカッコいい名前だな、なんて思ったりもした。
 でも、よくよく考えてみると、「誰そ彼」、と疑念を抱くのは、夕方だけではないってことに気が付いた。
 黄昏時は、孤独を抱

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000:雨の日の朝食【ユーメと命がけの夢想家】

000:雨の日の朝食【ユーメと命がけの夢想家】

目次◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 寒いな、と、思うのだった。
 そのあとで、自動車が水たまりを過ぎる音を耳にする。いや、逆か。この音を無意識のうちに聞くからこそ、世界は寒くつめたく冷ややかで、どうしようもないことを知るのだ。

 うっすく目を開けてみると、再生を終えた動画のリンク欄があった。布団の脇に、仕事道具として手に入れたノートパソコン。それと半身をベッドから投げ出すような格好で

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