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今こそ知りたい!「ジョブ型制度」により変わる働き方 第3回

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ジョブ型時代の働き方


加藤:ジョブ型が進むというのはどういうことが起こるかというと、それぞれの組織にどういう仕事があるかというのが明確になっていくわけですね。その仕事というのは最適な人を配置していくという形に変わっていきます。

おそらくここから5年後、10年後のキャリアということを考えると、キャリアの固定化みたいなのが進むんですね。いったん最適な人を配置していた時に、今までだとローテーションでいろいろなところに回っていろんなチャンスがあったというのはありますけれども、仕事に一番最適な人をアサインして、その方が別に行ったときに、今の仕事ってものすごくスピードが速く、ものすごく複雑になっているので、立ち上がるのに相当やっぱり時間がかかる。当然グローバルとの競争でそんなことやっていると負けていってしまう。
そうすると、いい人を企業は見つけて、ここに配置して頑張ってください、という形でキャリアの固定化が始まっちゃうんですね。

キャリア固定化に留まらず


そうすると働く個人からすると、会社に任せてキャリアを歩んでいくと、いつの間にかどこかに固定化されていく。その固定化されたものがずっと続くかどうかというのはもうわからないって時代にやっぱりなってしまう。

ある日事業が、例えばなくなってしまう、あるいは売却されてしまう。こういったことっていうのは、必ずどこの組織にもあるリスクなので、幸せなキャリアを築いていく可能性というのがだいぶ小さくなってくるんですね。


私がお勧めするのは何かというと、ある程度若いうちから、そして今すでに中堅、ベテランになられている方々からすると、次は自分はどうありたいのか、どういう技能を身に付ければどういうポストに立てそうなのか

準備をずっとして、いざというときに打席が回ったらちゃんとバットを振れるようにしていないと、そのチャンスは巡ってこなくなってくるのです。自分で考えて能力アップに努める方とそうじゃない方で、キャリアを上がれるかどうか相当変わってくるというのが、この次の10年間のキャリアの課題かなと思っています。

柴田:大体、これ皆さんもよくご存じだと思うんですけれど、日本の経済とか企業経営って、欧米先進国に大体10年遅れているんですよね。なので、アメリカのキャリアマーケットで何が起きているのかというのを見れば、100パーセント日本には当てはまらないんですけど、おおよその予測はつくわけですよね。


簡単に言うと、この先ジョブ型は本当に日本の中にも浸透していくと、自分が一体市場からいくらくらいを価値を見られているのかって常に意識しとかないと、全然売れない人材になっちゃうということだと思います。

働き手にも市場価値が求められる


欧米にいくと、社格とか社名も大事なんですけど、どういうスキルをこの人は持っているのか、どういう経験をしたのかってそのままイコールお金に代わるので、明らかに働き手にも市場価値が求められる世界になっていくんだろうなと思います。


あと、これもおそらく人事やられている皆さんだとよくおわかりかと思いますけれど、新卒の一括採用って日本だけなんですよね。基本的に欧米ってもうオープンなポジションがあって、そこが学生であれ、キャリアであれ、スキルを持っている人を採用するという世界がやってきます。

加藤が言うように、日本において新卒の一括採用が一気になくなることはないと思うのですけれど、いずれどっかでそういう若手の就業感ですとか、専門教育みたいなものを進めていかないと、真の意味でのジョブ型には転換できません。

司会:質問がきています。

「解雇の自由度が高い状況下、解雇、首ですね。の自由度が高い状況下であれば、ジョブ型の採用可能性が高まると思いますが、雇用の流動性を促す政策の動向についてはどう思われますか?」

解雇、雇用の流動性


加藤:私は、解雇の流動性、雇用の流動性というのは当面変わんないと思っています。
なぜなのかというと、新卒一括採用というものというのは、なぜメンバーシップ型って呼ばれているかというと、職務で合意して入社しているわけじゃないんですね。


例えば、人事という職務がなくなるというのはないかもしれませんけども、会社の組織の中でこの職務なくなりましたから、あなたの雇用なくなりますというわけにはいかないわけですね。

この新卒一括採用というのは日本企業、もう4、50年ずっと続いているので、雇用の法規制ってメジャーに合わせて基本的に作られています。なので、日本で雇用を解消しましょうというふうになっても、ジョブがなくなったら雇用が解消されるということは絶対なくて、

配置転換の努力をしましたか?
あるいは経費削減しましたか?


それぞれの努力を尽くしたうえで、その整理解雇に至るというふうに決められています。なので、会社が一方的に解雇しようとしても、その整理解雇の要件に合致しなければ、それが取り消されていくということも判例としては出ています。

今、国の流れってどうなっているかというと、70歳まで雇用を確保しなさいって言っていますよね。いわゆる、定年が60歳、65歳、70歳ってありますけれども、定年がそもそもあるというのは、相当グローバルの中で少ないんです。


逆に言うと、ここまで雇用し続けてくださいってことを言っているわけですよね。で、ジョブ型雇用が、日本に根付くと雇用が流動化する。これ、私はまったくのうそだと思っています。何かと言うと、私も今ここにいますけども、今雇用されている皆さんは、メンバーシップ型雇用で採用された方々ですよね。なので、過去にさかのぼって、雇用の約束を違えるということは絶対できないはずなんです。

新卒一括雇用は?


そうすると、日本の企業の構造としては必ず毎年定年が出る。そうすると、必ず人を補充しなければいけない。新陳代謝の問題で、必ず人を補充する。そうすると、新卒一括採用はやっぱりなかなかなくならなくて、社会全体からするとジョブ型人事制度が普及しているけれども、雇用のあり方というのはそもそもやっぱりメンバーシップだねというところは変わらないというところを考えると、雇用の流動性が高まるというのは、私はしばらくここ10年はないかなというふうには思います。

柴田:まあ、層にもよるかもしれないけどね。上のほうとか、ある種の専門職みたいなところでは当然流動性高まるんでしょうけども、大筋としてはたぶん加藤が言う通りなんじゃないかなと思うのと、より実践的なお話をすると、たぶん皆さんジョブ型の流動性の雇用みたいなのってアメリカをすごくイメージすると思うんですよね。

他の欧米先進国は?

確かにアメリカは、日本よりは簡単に解雇もしやすいんですけど、例えば、ドイツとかってどうなんですかというと、雇用法制が厚いんですよね。なので、そう簡単に人切れないんですよ。


でも、彼らはジョブ型入れているんですね。要は、仕事の価値に見合ったお金をちゃんと配分していけばよいという考え方に立てば、何も無理やり人の新陳代謝を強くしなくても、人件費の効率って高まっていくので、何でもかんでもアメリカに倣えということではなくて、確実にやってるほかの欧米先進国もあるよねということを頭に入れると、答えはおのずから見えてくるんじゃないかなというふうには思います。

定年再延長との相関


加藤:ちょっと話のついででお話しさせていただくと、なんでジョブ型が今また再燃しているかというと、実は、定年年齢が延びているということとも非常に大きな相関、関連があるんですね。


定年が延びるということは、やっぱりその時間、その期間、報酬が発生していくっていうことにほかなりません。今、再雇用という、いわゆる60歳になったときに6割くらい報酬がダウンするという仕組みというのは企業さん結構入れられているんですけれども、同一労働、同一賃金の観点からすると、もうかなり危ないですね。

60歳手前の段階と、60歳超えた後に、仕事違いますかって聞いてみると、もうほとんどが同じ仕事していますと。処遇はどうなりますかというと8割になっていますとか、6割になっていますということになるわけですね。


日本の高齢化ってものすごく進んでいますけれども、この勢いでいくと職場に高齢化の波というのは必ずやってきます。8割、6割にするというのは、仮に認められたとしても、それはその時点で非常に傷ついたシニアの方が、職場の中にものすごくいらっしゃる。


つまり、どういう理由であれ、処遇がかなり落ちるというのは人のモチベーション下げるんですね。そういう方が職場にいっぱいいらっしゃるというのは、やっぱりすごく不健全な状態なんですね。

なんでそんなことしなきゃいけないかっていったら、60歳の時点で報酬がピークになって、すでにやっている仕事と処遇が釣り合ってないからなんです。なので、適正に下げなきゃいけないという圧力がかかっちゃうんです。適正な処遇をちゃんとやっていれば、ギャップが少なくなります。


現役世代から含めて抜本的に考え方を変えなきゃいけないんじゃないかというようなところが、この今回のジョブ型のブームの1つのきっかけになっているかなという風に私は分析しています。


最近社長自らが変えるぞって言って変えられている企業さん増えているんですけど、要は、アメリカで10年やっていましたとか、海外で経験を長くしているので、日本がいかに非常識がわかるので変えられるんですよね。

こういう経験がないと日本がいかに非常識がわからないので、変えられないんですよね。
体を張って、適所適材をしていかなきゃいけないねと、思わないと多分うまくいかないというのが私の今のところの答えです。

→第4回へ続く

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