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短歌抜粋(2022年6月)

短歌抜粋(2022年6月)

短歌や詩を音楽に合わせて朗読するライブをたまにしています。
先日そのポエトリーリーディングにて朗読した自作の短歌をこちらにも掲載します。

https://twitter.com/jitsuzon/status/1533270799456829440

前髪を重く瞼に乗せたままかきあげないで夜を見ている

真夜中に酔ってあの子に電話した「OK, Google.僕を許して」

花や雲 道に零れたピア

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『共感』(詩)

『共感』(詩)

あなたと目を合わせて
あなたの肌のぬくもりで
あなたのことばのかたちで
あなたの街の振動で

僕はあなたをつくりたい
僕はあなたの島をつくる
僕はあなたに旅をさせる

あなたが初めていちごを食べた
帰り道のあなたが石を蹴飛ばしている
夕焼けにあなたが僕を看取る

僕の島であなたは移動する
あなたは薔薇の匂いをしている
あなたは朝の声をしている
あなたは赤い服を着ている

僕たちのメトロノームは少し

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無職のあいだに起きた実存的閃光

無職のあいだに起きた実存的閃光

はじめに2021年2月から2022年4月までの1年3ヶ月、僕は無職だった。定職に就いていないということではなく、完全なるニートだった。副業はおろか生産的なことをほとんどせず、社会的無重力空間に居た。紆余曲折を経て、今月から晴れて社会の構成員として積極的に責任を果たすべく職に就いた。この記事はその「紆余曲折」について記録を残すものである。ワンルームの部屋だけで起こる「紆余曲折」は、社会にとっては微小

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真夜中の叫び声

深夜、窓の向こうから分厚いガラスを突き抜けて、若い男性の叫びが聞こえてきた。一棟横のマンションからだろうか。喉がまだ熟れていない少年の声だった。一度短く「アーーー!!!」というこころの破裂音がした。暗い空を通った音は、どれだけの人に届いたかはわからないが、僕には真っ直ぐに届いた。声が僕のこころを揺り動かすのを感じた。

多くの人には迷惑だろう。深夜に狂ったような男の叫びを聞くのは恐怖だろう。隣室の

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僕が死んだら遺骨をNFTにしてくれ

人間には206個の骨があるが、火葬により残るのはせいぜい30個くらいだろうか。その1つ1つを写真に撮り、デジタルデータとしてネットにアップする。メタデータには納骨されている墓の住所、それぞれの遺骨画像のURL、それぞれについて一篇の詩が記載されている。

詩は僕の生命であり、静止した僕だ。詩は骨よりも力強く、僕のことを語るだろう。人は詩と骨のどちらが本体だったのかと思案するうちに、データ上では2つ

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