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鼻、宮部みゆき、悩み

鼻がぐずる。いつまでも鼻炎は治らなくて、いつだって鼻は苦しめてくる。それでも付き合いは長いから、「なあ、そろそろ引っ込んでくれてもいいじゃないか?」と訴えたくなる。もちろん、一度も従ってくれたことなんてないけれど。

子供のころは鼻がぐずるなんて当たり前だと思ってた。そうじゃないと気づいたのは、小学生に上がる頃くらいで、どうやらそれが「あれるぎー」と呼ばれる現象だと気づいた。「あれるぎー」はたくさんあるらしい。食べ物に「あれるぎー」がある子もいた。「あれるぎー」「あれるぎー」「あれるぎー」。いつか友達になれたらいいなと思っていたけど、そういう機会はどうやら一度も訪れないようだ。

宮部みゆき『クロスファイア(上)』を読んでいる。炎を操ることの出来る特殊能力を持った女性の物語だ。宮部さんはスティーヴン・キングの影響を受けているから、すぐに『キャリー』を思い出した。あれは悲しい物語だったけど、どこかに救いのようなものを感じた。もちろん、現実的な救いじゃないだろうけど。あくまで精神的な救いだったんだろうけど。炎を扱う彼女はどうなるんだろう? 先を読みたいけど、今は色々読みたいものがあって迷う。『クロスファイア』を読む手が止まる。読める本はいくらだってあるのに。

自分の書きたいもの、書くべきもの、書く意味。最近は色々考えてる。答えが出ないことを考えることに不安を覚えていたとき、小林秀雄が柳田国男の『妖怪談義(だったかな……?)』について話している講演音声を聞いた。現代人はすぐに答えを求めるし、「ある」か「ない」かの二択で物事を考えるようになっているし、この世のあらゆることが科学的、合理的に分かってきて、解明されていると思っているらしい。だから、本当の意味で悩まなくなった。悩むとしてもそれは、どちらが正解なのかとか、合理的なのかとか、そういった点でだ。あれは何だろう?と存在、意味、解らないものについて考えること、そういう「悩み」や「悟り」があって、初めて成熟は得られる。

なるほどなぁ、と思った。悩むのも悪くないのかな。「ある」と「ない」の二択で考えるのは、養老孟子先生も言っていたバカの壁に通じるのかな。

考えていると、鼻がぐずぐずで、ティッシュの山が出来上がっていく。悩みの時間だけ、ティッシュは雪山になっていく。いつか崩れる時がくる。丸めて捨てても、悩みは消えない。鼻も治ってくれない。

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