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江楠くれこ
2023年7月2日 07:14
そこにカフェがあることに気付いたのはつい先週の事だ。これまでにも何度か来たことがある場所のはずなのに、今の今までその小ぢんまりとした家屋がカフェであることに気付かなかった。小窓から店の中を覗くと、壁面を覆うように書棚が並んでおり、壁には古びたレコードや写真がセンス良く飾られている。いわゆる隠れ家的な店と言ったところだろうか。趣のある木の扉を押し開け足を踏み入れると、常連客と思しき客がマスターと
2023年7月13日 22:17
三日目一タケシタサン。彼女はあの男性をそう呼んでいた。昨夜の金縛りを思い出しながら、怜はひとまず情報整理を試みることにした。昭和21年から31年までの間に、K県の水田新地であの女性と何らかの接触があったタケシタという人物が、裕太の縁者に居るはずだ。彼が何らかの恨みを買い、彼女に呪詛をかけられた……と考えるのが妥当な線だろうか。しかし、仮に呪詛をかけられて死んだのだとすれば、その霊魂が
2023年7月15日 08:28
四日目二「ひとまず、壷については竹下さんに直接教えて貰うのが一番手っ取り早いみたいですね……。」怜の隣に座る裕太の傍らに不安気な顔で佇みながら、裕太の方を指差す彼に。「……あなたが持っているそうです。」「へ?」裕太は何がなんだか分からないという様子で怜を見つめた。それもやむを得ない話だ。「すみません、ちょっと親に確認してみます。」そう言うと裕太はスマートフォンを取り出して