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建築防災コンサルタント よもやま話vol.6-避難安全検証法、メリットとデメリットについて①-

私たちは日々たくさんの設計者様から検証法のご相談をいただいています。
そしてさらにもっとたくさんの設計者様に検証法を知ってほしくて、ご挨拶に伺っては検証法をご説明したり、セミナーをさせていただいたりしています。
わたしたちイズミシステム設計の主力業務である「環境・省エネ」は、もはや建物を建てるうえで必須ですので、設計者様は「環境・省エネ」を知っていて”当たり前”ですが、検証法はそうではありません。
建築基準法に検証法が登場して以降、検証法を使った設計をルートB、さらに高度な防災設計をルートCと呼び、検証法を使わない設計をルートAと呼びますが、どのルートを選ぶかは完全に事業者様、設計者様の自由なんですね。

こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、検証法を取り入れたことのない設計者様の中には、「難しくてよくわからないものに手を出さなくても、今まで通りでぜんぜんいいのでそっとしておいて」という方もいるかもしれません。
しかし、ときどき「もっと早く検証法を知っていれば、あの物件で採用できたのに」といったおはなしもいただきます。

もちろん、ルートAが適している用途や計画もありますので、一概に
ルートB > ルートA ではありませんが、事業者様、設計者様には違いやメリット・デメリットを知っていただいたうえで、どのルートを採用するか判断していただきたいと常々感じます。
ここであらためて検証法を採用するメリットとデメリットを挙げてみます。

メリット

1.イニシャルコスト、ランニングコストが下がる
検証法採用のメリットのナンバーワンはやはりコストです。排煙窓、機械排煙設備、防煙垂れ壁や階段を減らしたり無くしたりすることで物件によってかなりの建設コスト削減効果が期待できます。また事業者様にとっては、建物が建ったあともずっとこれらを維持していくランニングコストを見込まなくてよいことも大きなメリットです。
特に排煙設備は地震などの自然災害で破損した場合や、経年劣化や用途変更あるいはプラン変更に伴って、いつのまにか違法状態になってしまっている、というご相談も数多くいただきます。

検証法により建設コスト削減

2.デザインの自由度が上がる
たとえばオフィスビルや庁舎の1階など、天井を複雑なデザインにしたい!という設計の場合、500㎡以内ごとの高さ50cmの防煙垂れ壁がネックになる、というケースがあります。
検証法を採用すれば防煙区画は防火区画(面積区画)と同じ1500㎡まで拡大できますから、防火区画の範囲で複雑な天井をデザインすることができます。
このように、コストだけではなくデザイン面でも検証法が解決策になるケースがたくさんあります。

検証法で美しいデザインを

3.使える空間が増える
最近商業施設の事業者様から、物販店舗で排煙窓がなくせると、
・商品の日焼けを防げる
・寒冷地では結露による壁面のカビを防げる
というメリットのほかに、
商品棚を天井まで上げることができるので、それだけ商品をたくさん置くことができるメリットが大きいんですよ、というお話をいただきました。当然と言えば当然なのですが、それが事業者様にとってどれくらい重要なことか、ということを教えていただきました。

排煙窓をなくして商品棚を天井まで上げる

このように排煙設備や階段を削減することで床面積だけでなく、使える空間が増えることもコスト、デザインと共に大きなメリットです。

4.内装に木が使える
No.4でお話ししたように、ルートB2により「内装の木質化」の可能性が拡がっています。設計者様の目線からすれば、たとえば設計コンペの案件で検証法のルートB2を使って、不燃処理を施さない素地の木材で内装を仕上げる提案ができることは大きなアドバンテージではないでしょうか?ルートB2はまだまだこれから本格的に採用が拡がっていく段階ですが、今後はルートB2を活用した「内装の木質化」が事業者様にとっても設計者様にとっても大きなメリットになっていくと思います。

壁や天井に素地の木を使う

デメリット

1.防火設備が増える
2.プランに制約がでる
3.改修や増改築のたびに再計算が必要になる
4.検証法が難解…

主なデメリットはこれらになりますが、個人的にはメリットに比べてデメリットは設計の工夫や経験でカバーできる範囲が大きいと感じています。

少し長くなったので、デメリットについては次回また詳しくお話しさせていただきますね。


もう少し詳しい情報は、こちらをぜひご覧ください!
株式会社 イズミシステム設計 - 避難安全検証法とは


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