伊藤義康

講談社ブルーバックス「分散型エネルギー入門」(2012年5月)で、再生可能エネルギーと…

伊藤義康

講談社ブルーバックス「分散型エネルギー入門」(2012年5月)で、再生可能エネルギーと新エネルギーによる発電技術をまとめる機会がありました。現在、急速に脱炭素化が進められていますが、その後、日本のエネルギーはどうなったか?大変心配しています。

マガジン

  • なぜ再生可能エネルギーが普及しないのか?

    国内の再生可能エネルギーの推進を新電力会社に任せた結果、大手電力会社での再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、バイオマス)導入が進められていない。

  • 日本のエネルギー供給は大丈夫か?

    東日本大震災以降の国内の総発電電力量の推移について、火力発電、原子力発電、再生可エネルギーの構成比率に注目してまとめて観ました。

最近の記事

バイオマス発電は再生可能エネルギーなのか?

概要 国内でバイオマス発電所の稼働中止・撤退が相次いでいる。もともと間伐材などを燃料として活用する地産地消型モデルであったバイオマス発電であるが、国内林業の停滞で調達が進まず、パーム油やヤシ殻(PKS)など安価な輸入材への依存が急速に高まり、早々に変質してしまった。  加えて、ウクライナ侵攻に伴うロシア産木材の輸入減、パーム油の価格高騰が追い打ちをかけた結果、大型の木質バイオマス発電所やパーム油バイオマス発電所で採算悪化が生じている。  今のバイオマス発電は、本当に再生可能エ

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    • 4.「中部電力」の再生可能エネルギーへの取り組み

       「中部電力」と「東京電力HD」のエリアでの電源構成は良く似ており、火力発電が75%程度と高く、脱炭素化に有効とされる原子力+水力(揚水を含む)発電が25%程度である。  特に、再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、バイオマス)については、構成比率が1%にも満たず、導入には消極的なようである。詳しく再生可能エネルギーの導入事情を観てみる。 4.1 中部電力グループの現状  2015年4月、東京電力と中部電力は、折半出資により火力発電事業会社「JERA」を設立し、実質的

      • 3.「東京電力」の再生可能エネルギーへの取り組み

         「東京電力HD」と「中部電力」のエリアでの電源構成は良く似ており、火力発電が75%程度と高く、脱炭素に有効とされる原子力+水力(揚水を含む)発電が25%程度である。  特に、再生エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)については、構成比率が1%にも満たず、導入には消極的といえる。 3.1 東京電力グループの現状  福島第一原発事故の対応のため多額の公的資金が注入され、実質的に国有化された「東京電力」は、2016年4月に事業持株会社(ホールディングカンパニー)制に移行した

        • 2.新電力に依存する再生可能エネルギー

           2024年2月現在、国内電力会社の発電設備の総発電最大出力は、2億6884万kWに達している。その内訳は、大手電力会社の保有分が1億9642万kWであり、全体の73.1%を占めている。一方で、新電力会社の保有分は、7243万kWで26.9%である。  大手電力会社の発電設備の保有割合は、太陽光発電が0.74%、風力発電が1.43%、バイオマス発電は0%と著しく低い。このことから、大手電力会社は主として既設の原子力発電、火力発電、水力発電の設備を維持するに留まり、新電力会社

        バイオマス発電は再生可能エネルギーなのか?

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        マガジン

        • なぜ再生可能エネルギーが普及しないのか?
          4本
        • 日本のエネルギー供給は大丈夫か?
          10本

        記事

          1.進まない再生可能エネルギーの導入

           福島第一原発事故後、FIT制度の導入、電力自由化などの諸施策により、国内の発電電力量の構成は、化石燃料による火力発電の低減と再生可能エネルギー発電の増強が着実に進められているかに見える。  しかし、2021年10月に策定された第6次エネルギー基本計画で示された2030年を目標とした発電電力量の構成比には、まだ道は遠い。  「なぜ、再生可能エネルギーの導入が計画通りに進まないのか?」この疑問を理解するために、大手電力会社の動向に注目して観てみよう。 1.1 大手電力会社

          1.進まない再生可能エネルギーの導入

          11.2023年度の電力供給事情まとめ

           2023年度の国内総生産(GDP)は、物価の影響を含めた名目GDPが前年より5.7%増えて591.4兆円に達した。 しかし、米ドル換算では1.1%減の4.2兆ドルで、ドイツの4.4兆ドルに抜かれ、世界4位に転落した。  円安を何とかしないと、2024年度はインドにも抜かれるかも。  先進国を中心にカーボンニュートラルが進められる中で、日本も遅ればせながら足並みを揃えて目標を設定した。しかし、原子力発電所の再稼働、再生可能エネルギーの大量導入を推進するも、順調には伸びていな

          11.2023年度の電力供給事情まとめ

          10.急増するバイオマス発電の謎

           FIT制度が導入された2012~2015年、地熱発電の設備設置容量の年平均伸び率は0%で推移し、2016年以降も、2019年と2020年に若干の伸びを示したものの、概ね年平均伸び率は0%である。  現状のままでは、2030年の地熱発電の発電電力量は30億kWh以上に拡大する見込みはない。これは、第6次エネルギー基本計画で目標とした総発電電力量(9300~9400億kWh)の1%とする地熱発電の電力量(93~94憶kWh)の31.9~32.3%にとどまることになる。  そ

          10.急増するバイオマス発電の謎

          9.停滞が続く地熱発電の導入

           FIT制度が導入された2012~2016年、風力発電の設備設置容量の年平均伸び率は4.6%程度で上昇傾向を示した。2017年以降は伸び率は隔年で変動するものの、平均7.2%でさらに上昇傾向を示した。  このまま伸び率7.2%で発電電力量が増加を続けた場合、2030年には162億kWhに達すると予測される。これは、第6次エネルギー基本計画で目標とした総発電電力量(9300~9400億kWh)の5%とする風力発電の電力量(465~470憶kWh)の34.4~34.8%にとどまる

          9.停滞が続く地熱発電の導入

          8.回り続けるのか?風力発電

           FIT制度が導入された2012年の太陽光発電の発電電力量の年平均伸び率は78.3%と高いが、2013年以降は年平均伸び率は減少傾向を示している。  仮に2022年の年平均伸び率7.5%をキープできれば、2030年には1600億kWhに到達する。第6次エネルギー基本計画で目標とした総発電電力量(9300~9400億kWh)の14~16%とする太陽光発電の電力量目標(1302~1504憶kWh)をクリアできるか微妙である。  それでは再生可能エネルギーの中で注目度の上がってき

          8.回り続けるのか?風力発電

          7.伸び率が鈍化する太陽光発電

           FIT制度が導入されて以降の2012~2015年、水力発電の発電電力量の年平均伸び率は3.8~5.1%と順調に上昇したが、2015年をピークに漸減し、2017年以降はー1.7と明らかな減少傾向を示している。  それでは再生可能エネルギーで最も注目度の高い太陽光発電についても、2011年の東日本大震災以降の発電電力量の推移をみてみよう。 7.1 太陽光発電のFIT買取価格の推移について  2012年7月のFIT施行で、太陽光発電は、出力:10kW以上、10kW未満、10k

          7.伸び率が鈍化する太陽光発電

          6.減り続ける水力発電の発電量

           FIT制度が導入された2012~2015年、大規模水力発電を除く再生可能エネルギーの設備設置容量の年平均伸び率は25~27%にまで急上昇したが、2016年以降は伸び率が若干鈍化する傾向を示した。  それでは再生可能エネルギーの主力である水力発電に注目し、2011年の東日本大震災以降のFIT買取価格と発電電力量の推移をみてみよう。 6.1 水力発電のFIT買取価格の推移について  水力発電開発の歴史は古く、大規模水力発電の開発はほぼ終了し、新規立地は少ないとして、2012

          6.減り続ける水力発電の発電量

          5.順調に増加?再生可能エネの導入

           再稼働した原子力発電所の発電電力量は、安全対策が完了することで2024年以降の増加が期待できる。  一方、CO2排出が問題の火力発電の発電電力量は微減するものの、福島第一原発事故前の2010年レベルに戻ったのが実情である。  それでは再生可能エネルギーは本当に増加しているのか?2011年の東日本大震災以降の国内の再生可能エネルギー導入状況をみてみよう。 5.1 固定価格買取制度の導入  まず、再生可能エネルギーの普及に大きな影響を与えたのは、2012年7月1日に施行され

          5.順調に増加?再生可能エネの導入

          4.2010年レベルに戻った火力発電

           原子力発電所の再稼働は、原子力規制委員会の審査のもと厳格に進められている。再稼働したPWRの発電電力量は安全対策が完了することで、2024年以降に発電電力量の増加が期待できる。  ならば、CO2排出が問題の火力発電の発電電力量は減少に向かうのか?2011年の東日本大震災以降の国内の火力発電の抑制状況について、より詳しくエネルギー事情をみてみよう。 4.1 福島第一原発事故前後の火力発電  1997年12月、地球温暖化防止京都会議で「先進国は2008~2012年の間に19

          4.2010年レベルに戻った火力発電

          3.停滞する原子力発電所の再稼働?

           2021年10月に策定された第6次エネルギー基本計画で示された2030年を目標とした発電電力量構成比には、まだまだ道は遠いようである。特に、原子力発電の再稼働が順調に進んでいないとの報道もある。本当か?  2011年の東日本大震災以降の国内原子力発電の再稼働状況について、より詳しくエネルギー事情をみてみよう。 3.1 原子力規制委員会の設置   福島第一原発事故後、「原子力規制委員会設置法」の公布に伴い、2012年9月に国家行政組織法3条2項に基づき、環境省外局に独立性

          3.停滞する原子力発電所の再稼働?

          2.直近10年のエネルギー動向は

           日本の経済状態は?エネルギー供給は?本当に大丈夫だろうか?多いなる疑問を抱いたら、広く情報を収集して、分析することが重要であろう。 2.1 福島第一原発事故の前後  直近10年間に注目して、経済産業省が公表している電源別の発電電力量をみてみよう。ただし、図2の石油等にはLPG(液化石油ガス)やその他のガスが含まれている。また、再生可能エネは、水力発電のほかに、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電が含まれている。   福島第一原発事故前の2010年における発電

          2.直近10年のエネルギー動向は

          1.日本のエネルギー供給は大丈夫か?

            1.1 おさらい  図1には、1970年代から現在に至るまでの一般電力事業者による発電電力量の推移と、石油、石炭、天然ガス、原子力、水力、再生可能エネルギー(風力、地熱、太陽光など)の構成割合を示す。  ここで一般電気事業者とは、大手電力会社10社(北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)を指している。  日本における主要電源は、1965年頃までは水力発電が主体であった。しかし、1973年の第一次石油

          1.日本のエネルギー供給は大丈夫か?