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4.「中部電力」の再生可能エネルギーへの取り組み

 「中部電力」と「東京電力HD」のエリアでの電源構成は良く似ており、火力発電が75%程度と高く、脱炭素化に有効とされる原子力+水力(揚水を含む)発電が25%程度である。

 特に、再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、バイオマス)については、構成比率が1%にも満たず、導入には消極的なようである。詳しく再生可能エネルギーの導入事情を観てみる。


4.1 中部電力グループの現状

 2015年4月、東京電力と中部電力は、折半出資により火力発電事業会社「JERA」を設立し、実質的な持株会社となった。
 最終的に、2019年4月、火力発電事業は、東京電力フュエル&パワーおよび中部電力の燃料受入・貯蔵・送ガス事業および既存火力発電事業などを統合し「JERA」に継承された。

 2019年4月、送配電事業部門が法的な発送電分離の措置により「中部電力パワーグリッド」に、電力・ガスの販売事業部門が「中部電力ミライズ」に分社化された。
 そのため、「中部電力」はグループ全体の持株会社、および原子力発電と再生可能エネルギー発電を行う事業会社となった。

 「中部電力」は、静岡県御前崎市に浜岡原子力発電所1~5号機を保有。いずれもBWR型で、1号機(出力:54万kW、1976年運開)と2号機(84万kW、1978年運開)は、2009年1月に運転を終了して廃炉措置を進めている。
 2024年3月、廃炉に要する費用は約840億円で、廃炉完了時期は安全確保のためとして、2036年度から2042年度に6年も先送りされた。

 一方、2010年11月に、3号機(110万kW、1987年運開)は定期検査、2011年5月、4号機(113.7万kW、1993年運開)と5号機(ABWR、138万kW、2005年運開)は政府指示で停止して以降、再稼働に至っていない。
 2, 3号機は審査申請中で、南海トラフ巨大地震が起きた際に押し寄せると想定される津波への安全対策で、再稼働の見通しは立たず、5号機は未申請である。

 一方、中部電力グループは「ゼロエミッション・チャレンジ2050」を掲げ、グループ一体となり再生可能エネルギー拡大に取り組むとしている。 
 2030年頃に向けた再生可能エネルギー拡大目標は、2017年度末(256万kW)に320万kW以上を積み増すとしている。

 また、2024年3月時点で、再生可能エネルギー発電設備は350万kW揚水を除く水力:219万kW、太陽光:74万kW、風力:21万kW、バイオマス:36万kW、地熱:1998kW)と公表している。ただし、設備未運開であるが開発決定済み案件が含まれる。 

 一方、2023年3月、公正取引委員会は、中部電力、中部電力ミライズ、中国電力、九州電力、九電みらいエナジーに対し、独占禁止法違反での規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令(総額1010億円)を行った。
 電力小売りの全面自由化が進められる中で、相互エリアでの営業活動を自粛する密約が、主導した関西電力のリークで発覚した。

 東京電力と同様に、中部電力は火力発電事業の分社化により脱炭素化の実態が分かりにくくなっている。次に、カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギーの積み増しの効果を観てみる。

4.2 「中部電力」エリアの電源構成

 東京電力HD(50%)と中部電力(50%)の株式保有比率でJERAの火力発電設備を割り振り、「中部電力」エリアでの発電設備構成を観てみる。

 中部電力は、国内総発電設備の約14%を保有する国内二位の電力会社である。分社化することで見えにくくなったが、火力発電設備は76%、原子力発電設備は9.5%、水力発電設備(揚水を含む)が14.5%で、その他の再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)は1%に満たない

図7 「中部電力」エリアの電源構成 出典:資源エネルギー庁統計

 しかし、中部電力グループは国内外に多くの子会社と関連会社を抱えており、シーテック、シーエネナジー、中部プラントサービスなどを加えると、2024年3月時点で再生可能エネルギー発電設備は太陽光:74万kW、風力:21万kW、バイオマス:36万kW、地熱:1998kWと公表している。

 そのため中部電力グループの総出力は3910万kWとなり、火力発電設備は73%、原子力発電設備は9.3%、水力発電設備(揚水を含む)が14%で、その他の再エネは3.4%となる
 すなわち、非化石電源比率(原子力+再エネ)は26.7%で、調整電源である揚水発電分を差し引くと19.8%と低目である。

4.3 再生可能エネルギーの開発の取り組み

 2020年3月、「エネルギー供給構造高度化法」で中間目標値が設定された。年間販売電力量が5億kWh以上の電気事業者に対し、「2030年度に非化石電源比率を44%以上」という目標が定められたのである。
 政府は脱炭素化に向け、化石燃料消費を減らすのが狙いである。

 これを受けて2021年4月、経済産業省の総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第31回)が開催され、電気事業連合会が主要電力会社の再生可能エネルギー開発の取り組みを報告している。 

図8 中部電力グループの再エネ開発に向けた取り組み 出典:電気事業連合会

 「中部電力グループ」は、2030年頃に向けた再生可能エネルギー拡大目標として、2017年度末と比較して320万kW(80億kWh)以上の拡大をめざすと表明している。すなわち、揚水発電を除く水力発電+再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)で、576万kW以上をめざす

 その場合、2030年には総出力は4140万kWとなり、火力発電設備は69%、原子力発電設備は8.7%、水力発電設備(揚水を含む)が13%で、その他の再エネは8.6%となる
 すなわち、非化石電源比率(原子力+再エネ)は30.3%で、調整電源である揚水発電分を差し引くと24.6%と低目である。 

 「中部電力」は、火力発電事業をJERAに継承したことで非化石電源比率は100%となった。しかし、これは許されない逃げ方である。
 前述のように、2030年におけるJERAを含む「中部電力グループ」の電源構成の非化石電源比率は揚水発電分を差し引いて実質は24.6%である。

 JERAの火力発電設備の大幅な抑制が行われなければ、目標未達となる。東京電力HDと同じく、カーボンニュートラルに向けた火力発電事業の展開に関しては、分社した「JERA」にお任せの感が透けてみえる。 

 次に火力発電比率が高く、国内総発電設備の約6.1%を保有する国内五位の東北電力について、詳しく再生可能エネルギーの導入事情を観てみよう。  
                            (つづく) 
 


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