見出し画像

バイオマス発電は再生可能エネルギーなのか?

概要

 国内でバイオマス発電所の稼働中止・撤退が相次いでいる。もともと間伐材などを燃料として活用する地産地消型モデルであったバイオマス発電であるが、国内林業の停滞で調達が進まずパーム油やヤシ殻(PKS)など安価な輸入材への依存が急速に高まり、早々に変質してしまった。
 加えて、ウクライナ侵攻に伴うロシア産木材の輸入減パーム油の価格高騰が追い打ちをかけた結果、大型の木質バイオマス発電所やパーム油バイオマス発電所で採算悪化が生じている。
 今のバイオマス発電は、本当に再生可能エネルギーなのだろうか?

 Recently, a number of biomass power plants in Japan have been shutting down or withdrawing from operation. Originally, biomass power generation was a local production for local consumption model that utilized thinned wood and other resources as fuel. But it was quickly transformed by Insufficient supply due to stagnation of the domestic forestry industry, and increasing dependence on cheap imported materials such as palm oil and coconut shells (PKS). 
 In addition, the invasion of Ukraine led to a decrease in imports of Russian timber, and the price of palm oil skyrocketed, resulting in the deterioration of profitability of large woody biomass power plants and palm oil biomass power plants. 
 Is today's biomass power generation really a renewable energy source?


1. 日本におけるバイオマス発電

1.1 バイオマス発電とは?

 バイオマスは生物起源による有機物資源である。これをボイラで燃やして蒸気を発生させ、従来の火力発電システムで発電するのが「バイオマス発電」である。
 「バイオマスは生産時に二酸化炭素(CO2)を固定化しており、それを燃やすことでCO2を発生するが、循環利用することでCO2の総量は増加しないためカーボンニュートラルが成立する」とされている。

 そのため、バイオマス発電は地球温暖化対策に有効な再生可能エネルギーと認定されている。この点が、他の再生可能エネルギーと大きく異なる。しかし、廃棄物や未利用資源としてのバイオマスを有効活用することが先行し、循環型社会を形成する基本が忘れ去られている。

 化石燃料に比べてバイオマスはエネルギー密度が低く、広く薄く存在する資源のため、効率的な収集・運搬と、地域での活用の仕組みを構築する必要がある。一方で、トウモロコシを原料としたバイオエタノールなど食料との競合問題もあり、廃棄物系原料の有効利用を基本とするべきである。 

 最近、欧州の環境NGOや研究者らは、木材を原料とするバイオマス発電は、すべて再生可能エネルギーの枠組から除外すべきと訴え始めている。
 
木材を燃やして出るCO2を固定化するには、燃やした木材と同じ量を植林して育てなければ持続可能にはならない。しかし、栽培に数十年を要する点、伐採・加工・輸送の過程で新たなCO2排出が生じる点を考慮すると、「カーボン・ニュートラル」は成立しないという指摘である。

ここから先は

22,061字 / 16画像

¥ 1,000

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?