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1.日本のエネルギー供給は大丈夫か?


 

1.1 おさらい

 図1には、1970年代から現在に至るまでの一般電力事業者による発電電力量の推移と、石油、石炭、天然ガス、原子力、水力、再生可能エネルギー(風力、地熱、太陽光など)の構成割合を示す。

 ここで一般電気事業者とは、大手電力会社10社(北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)を指している。

 日本における主要電源は、1965年頃までは水力発電が主体であった。しかし、1973年の第一次石油危機までには石油火力発電が急増し、その後、石油に変わって石炭火力発電LNG(液化天然ガス)火力発電、そして原子力発電が担ってきた。

 ところが、2011年の東日本大震災以降、東京電力の「福島第一原子力発電所事故」により原子力発電の安全神話が崩れて急激に減少した。一時的に休・停止中の石油火力発電が稼働したものの、現在では再稼働の進まない原子力発電の不足分を、石炭火力発電とLNG火力発電が補っている

 以上のように、2011年3月11日の「東日本大震災」に起因した東京電力の福島第一原子力発電所事故の発生により、日本の発電電力事情は大きく変貌し、再生可能エネルギー(新エネ等)を拡大させる方針が採られた。
 しかし、2020年代に入り、原発再稼働がままならず、本当に再生可能エネルギーは順調に伸びているのだろうか?

図1 日本の発電電力量の推移 出典:経済産業省、エネルギー白書2017

1.2 日本経済とエネルギー事情

 総発電電力量に注目すると、1973年(第一次石油危機)以降は1991年のバブル崩壊を経ても増加傾向を示し、2000年代に入ると総発電電力量は頭打ちの状態となる。これは日本経済の「高度成長期」「平成不況」とを如実に表している。

 一方、急増する電力量への危惧から、1979年には省エネ法(正式名:エネルギーの使用の合理化に関する法律)が制定された。
 その後、1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)での温室効果ガス排出量の削減を受け、1998年には省エネ法の一部が改正され、1999年4月に施行された。

 改正省エネ法の内容は、自動車の燃費基準や電気機器等の省エネルギー基準へのトップランナー方式の導入大規模エネルギー消費工場への中長期の省エネルギー計画の作成・提出の義務付け、エネルギー管理員の選任等による中規模工場対策の導入などである。

 さらに、エネルギー消費の伸びが著しい民生部門と業務部門における省エネルギー対策の強化などを目的に、2002年6月に省エネ法を改正、2003年4月から施行している。
 改正の内容は、大規模オフィスビルなどへの大規模工場に準ずるエネルギー管理の義務付け、2,000m2以上の住宅以外の建築物への省エネルギー措置の届出の義務付けである。

 その後、2010年以降にはコスト削減のため、国内主要メーカーの生産拠点の海外移転が急速に進み始めた。加えて、2008年に国内総人口はピークに達し、 2011年以降は連続して減少し、国内の総発電電力量は減少の一途をたどっている。

 2019年には中国武漢市で新型コロナウィルスの感染が確認され、2020年3月には世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言した。また、2022年2月にはロシアのウクライナ侵攻が始まり、世界的なエネルギー危機を迎えた。
 日本の経済状態は?エネルギー供給は?本当に大丈夫だろうか?

 以上から、2011年の東日本大震災以降の国内の総発電電力量の状況について、より詳しくエネルギー事情をみてみよう。(つづく)

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