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10.急増するバイオマス発電の謎
FIT制度が導入された2012~2015年、地熱発電の設備設置容量の年平均伸び率は0%で推移し、2016年以降も、2019年と2020年に若干の伸びを示したものの、概ね年平均伸び率は0%である。
現状のままでは、2030年の地熱発電の発電電力量は30億kWh以上に拡大する見込みはない。これは、第6次エネルギー基本計画で目標とした総発電電力量(9300~9400億kWh)の1%とする地熱発電の電力量(93~94憶kWh)の31.9~32.3%にとどまることになる。
それでは最近、相次ぐ火災事故で注目度が上昇しているバイオマス発電について、2011年の東日本大震災以降の発電電力量の推移をみてみよう。
10.1 バイオマス発電のFIT買取価格の推移について
2012年7月のFIT施行で、バイオマス発電は燃料に応じて、①メタン発酵ガス化、②間伐材等由来、③一般木質・農作物残さ、④建設資材廃棄物、⑤一般廃棄物その他に区分され、開発レベルに応じて買取価格に差がつけられた。
①メタン発酵ガス化は下水汚泥・家畜糞尿・食品残さ由来のメタンガスで、買取価格は39円/kWhで、買取期間は20年間である。
②間伐材等由来の木質バイオマスは間伐材と主伐材で32円/kWhで20年間。
③一般木質バイオマス・農作物残さは、製材端材、輸入材、パーム椰子殻、もみ殻、稲わらで24円/kWhで20年間。
④建設資材廃棄物は、建設資材廃棄物、その他木材は13円/kWで20年間。
⑤一般廃棄その他のバイオマスは、剪定枝・木くず、紙、食品残さ、廃食用油、汚泥、家畜糞尿、黒液で17円/kWで20年間である。
2015年4月には、②間伐材等由来の木質バイオマスについて、出力:2000kW未満の場合は32円/kWhで20年間と従来通りで、2000kW以上の大容量機の場合は40円/kWhで20年間と高めの買取価格が設定された。
2017年4月の改正FIT法の施行で、③一般木質・農作物残さについて、出力:2000kW未満の場合は24円/kWhで20年間と従来通りで、2000kW以上の大容量機の場合は、10月以降に21円/kWhで20年間と低い買取価格が設定された。
2020年4月には、③一般木質・農作物残さの名称を、一般木質・農産物のバイオマス固体燃料と改め、出力:1万kW未満の場合は24円/kWhで20年間と従来通りであるが、1万kW以上の大容量機は、入札方式が採用された。
その他の区分に関して、2023年には①メタン発酵ガス化の買取価格が35円/kWhに引き下げられたが、当初の買取価格が引き下げられることなく継続されている。
資源エネルギー庁が示す2020年の発電単価(専焼29.8円/kWh、混焼13.2円/kWh)と比較すると、③木質バイオマスと④⑤廃棄物発電(ごみ発電)に厳しく、②間伐材等由来の大容量機のみに手厚い買取価格の設定である。
電気料金の高騰を抑えるため、FIT買取価格は申請の多い物件は安く、申請の少ない物件は高く設定を変えている。
10.2 バイオマス発電の発電電力量の推移
直近10年間に注目して、経済産業省が公表している電源別の発電電力量から、バイオマス発電による発電電力量のみを切り出してみる。
FIT制度が導入された2012~2015年、バイオマス発電の発電電力量の年平均伸び率は4%程度で推移し、2016年以降は、年平均伸び率は11.2%と高い値を示している。
バイオマス発電の買取実績は太陽光発電、風力発電に次いで多く、堅調な導入が進められている。
このまま年平均伸び率11.2%で発電電力量が増加を続けた場合、2030年には867億kWhに到達する。これは、第6次エネルギー基本計画で目標とした総発電電力量(9300~9400億kWh)の5%とするバイオマス発電の電力量(465~470憶kWh)の1.8~1.9倍になる。
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何故、バイオマス発電は他の再生可能エネルギーと比べて目標値以上に伸びているのであろうか?特に、③一般木質・農作物残さの買取価格が下げられているが、燃料による導入量の差はないのであろうか?最近、バイオマス発電の休廃止と火災の報道を見かけるが、このまま順調に伸びるのか?疑問は尽きないものである。
次に、これまでに各電源について収集した点の情報をつなげて線にしてみよう。さらに「日本の電力供給は大丈夫か?」について面の情報へと進めて、ストーリーを組み立ててみよう。ストーリーができれば何が起きているのか見えてくるかもしれない。(つづく)
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