2.直近10年のエネルギー動向は
日本の経済状態は?エネルギー供給は?本当に大丈夫だろうか?多いなる疑問を抱いたら、広く情報を収集して、分析することが重要であろう。
2.1 福島第一原発事故の前後
直近10年間に注目して、経済産業省が公表している電源別の発電電力量をみてみよう。ただし、図2の石油等にはLPG(液化石油ガス)やその他のガスが含まれている。また、再生可能エネは、水力発電のほかに、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電が含まれている。
福島第一原発事故前の2010年における発電電力量構成比は、原子力25.1%、火力65.4%、水力7.3%、地熱及び新エネルギーが2.2%である。この構成比は、福島第一原発事故以前には大きな変化はみられなかった。
しかし、2011年の福島第一原発事故以降、原子力発電所の安全性不備を理由に、電気事業法施行規則第91条で定められた定期検査を迎えた原子力発電所から順次に運転停止された。
2013年9月、関西電力の大飯原子力発電所4号機が運転停止したことで、国内の原子力発電所は全面停止状態に入った。
2014年における発電電力量構成比は、原子力0%、火力87.5%、水力7.9%、地熱及び新エネルギー4.6%で、火力発電比率が90%に迫る勢いで国内の電力需要への対応が進められた。
2.2 固定価格買取制度とパリ協定
一方、2012年7月、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が導入された。原子力発電の安全性が疑問視される中で、地球温暖化問題がクローズアップされ、これまで大規模水力発電に依存していた再生可能エネルギーであるが、太陽光、風力、地熱、バイオマスなどの導入拡大をめざした。
しかし、休止していた石油火力発電の再稼働と燃料調達、燃料価格の高いLNG(液化天然ガス)火力発電への依存度の急増に加え、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入などが、国内電力会社の経営不振を招き、電気料金が大幅値上げされた。
2015年に入ると、中国など新興国経済の減速に加えて、シェールガス・オイルの開発を進める米国と中東産油国との生産競争による供給過剰から、燃料費の低下が顕著となり、国内電力会社の経営状況が相次いで好転した。
そこで経済産業省は電気料金の値下げに向けて、FIT制度を見直して太陽光発電の買取価格の引き下げを進めた。
2015年には原発の再稼働も始まり、発電電力量構成比は、原子力0.9%、火力84.8%、水力8.4%、地熱及び新エネルギー5.9%と、再生可能エネルギーの総発電電力量に対する比率が伸び始めた。
一方、2015年12月、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」が採択された。CO2削減目標は「産業革命前からの気温上昇を2℃未満にし、1.5℃未満に収まるよう努力する」とされ、化石燃料、とりわけ石炭火力発電所の廃止が欧米を中心に進むことになる。
石炭火力比率の高い日本は、「脱石炭火力発電」に後ろ向きの国として、2019年12月に開催された国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)以降、不名誉な「化石賞」を受賞し続けることになる。
2.3 電力小売自由化とは
2015年6月、電力・ガス・熱供給を一体的に改革する「電気事業法等の一部を改正する等の法律」(改正電気事業法)が公布され、2016年4月より電力小売業、2017年4月よりガス小売業への参入の全面自由化が始まった。
これまで一般電気事業者10社(大手電力会社)が独占的に電力供給を行ってきた家庭向け電力市場の開放で、政府は特定規模電気事業者(新電力)の参入による競争促進で、家庭用電気料金の引き下げをめざした。
2020年には再生可能エネルギーも順調に伸び、発電電力量構成比は、原子力3.9%、火力76.3%、水力7.8%、地熱及び新エネルギー12.0%と、再生可能エネルギーは約20%に達した。
2020年4月、大手の一般電気事業者10社からの送配電部門の法的分離が行われた。一般電気事業者が保有する送配電網を、新電力が利用する際に自由競争の妨げとならないための措置である。
しかし、持株会社制度による見掛けの「発送電分離」であるため、2023年3月、一般電気事業者10社による新電力の顧客情報の不正閲覧問題が発覚し、自由競争とは言い難い状況が露呈した。
福島第一原発事故後、FIT制度の導入、電力自由化などの諸施策により、国内の発電電力量構成は、化石燃料による火力発電の低減と再生可能エネルギー発電の増強が着実に進められているかに見える。
しかし、2021年10月に策定された第6次エネルギー基本計画で、2030年を目標とした発電電力量構成比には、まだまだ道は遠いようである。特に、原子力発電の再稼働が順調に進んでいないとの報道もある。
以上から、2011年の東日本大震災以降の国内の原子力発電の再稼働の状況について、より詳しくエネルギー事情をみてみよう。(つづく)
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