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1.進まない再生可能エネルギーの導入

 福島第一原発事故後、FIT制度の導入電力自由化などの諸施策により、国内の発電電力量の構成は、化石燃料による火力発電の低減再生可能エネルギー発電の増強が着実に進められているかに見える。

 しかし、2021年10月に策定された第6次エネルギー基本計画で示された2030年を目標とした発電電力量の構成比には、まだ道は遠い

 「なぜ、再生可能エネルギーの導入が計画通りに進まないのか?」この疑問を理解するために、大手電力会社の動向に注目して観てみよう。


1.1 大手電力会社と新電力会社とは?

 「大手電力会社」とは、北海道電力・東北電力・東京電力・中部電力・北陸電力・関西電力・四国電力・中国電力・九州電力・沖縄電力の10社のことである。
 
これら10社は、2016年の電力小売りの自由化以前には、各エリアごとに独占的に電力小売りを行ってきた。

 これに加えて、1952年9月に国策会社として発足し、2004年に民営化された「電源開発」2015年4月に東京電力フュエル&パワーと中部電力の火力部門が折半出資で統合した「JERA」は、大手電力会社と呼んでも差しつかえない。2024年6月にJERAは電力小売りに参入している。

 一方、電力自由化が2000年3月に特別高圧区分の大規模工場やデパートなどを対象に始まり、その後に高圧区分の中小工場や中小ビルに拡大され、2016年4月に低圧区分の家庭や商店も対象となり、全面自由化に至った。
 この電力小売りの全面自由化以降に、新規で参入した電力会社(小売電気事業者)は「新電力会社」と呼ばれている。

 大手電力会社を含めて、2024年2月時点で資源エネルギー庁統計に登録されている電気事業者数は1520社発電所数は7484カ所総発電最大出力は2億6884万kWに達している。

1.2 電力システムの改革(全面自由化)のねらい

 経済産業省は、電力システムの改革(全面自由化)には大きく3つの目的があるとしている。

■電力の安定供給を確保する
■電気料金を最大限抑制する
■電気利用者の選択肢を増やし、企業の事業機会を拡大する

資源エネルギー庁

 すなわち、2011年3月に東日本大震災が発生した際、原発が相次いで停止したことで電力不足が生じ、緊急の場合などに広域間で電気をフレキシブルに供給し合うことのできる体制をつくる。

 また、これまで大手電力会社が独占していた電力事業を広く開放し、電力会社を自由に選択できるようにして事業者間の競争をうながし、電気料金の抑制につなげるとした。

 しかしながら、昨今、「再生可能エネルギーの出力制御」「電気料金の高騰」などが起きている状況から、電力システムの改革(全面自由化)は当初の目的を実現できてはいない。どこで間違えたのであろうか?

1.3 電力会社の発電設備の保有状況

 2024年2月現在の各電力会社の保有する発電設備は、資源エネルギー庁統計で公表されている。
 以下では、各電力会社の保有する発電設備量を示す発電最大出力(kW)について示す。この数値には発電電力量(kWh)とは異なり、現時点で再稼働していない原子力発電所や休止中の石油火力発電所なども含まれている。

 2024年2月時点で、国内電力会社の総発電最大出力は、2億6884万kWに達している。その内訳は、大手電力会社の保有分が1億9642万kWであり、総発電最大出力の73.1%を占める。一方で、新電力会社の保有分は、7243万kWで26.9%である。

 経済産業省が、2012年7月「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」を開始してから12年、電力の完全自由化から8年を経過して、新電力会社が国内発電設備の約1/4を保有するようになった。 

 主に、大手電力会社は既設の原子力発電、火力発電、水力発電の設備を維持する留まり、新電力会社が太陽光発電、風力発電、バイオマス発電など新エネルギー開発に取り組んできた状況が、それぞれの発電設備の保有量から明らかである。

 すなわち、水力発電と揚水発電を除く再生可能エネルギーに関して、大手電力会社の設備保有割合は太陽光発電が0.74%、風力発電が1.43%、バイオマス発電は0%と著しく低い。

 第6次エネルギー基本計画でも、「再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との 共生を図りながら最大限の導入を促す」と位置付けた再生可能エネルギーであるが、その導入拡大は新電力会社に大きく依存してきたのである。

図1 2024年2月時点での発電設備(発電最大出力)の保有割合 出典:資源エネルギー庁

 1973年と1978年の2度の石油ショックを経て、電力安定供給のために発電方式の多様化が必要とされ、原子力発電や火力発電に替わるエネルギーとして各種再生可能エネルギーの開発と導入が、大手電力会社を中心に進められてきたはずではなかったのか? 

 以上から、各大手電力会社における再生可能エネルギーの開発と導入の状況について詳しく観てみよう。(つづく)

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