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69.イラン人からナゾの弁護士ロマヌスを紹介される

イタリア移住6年目、留学ではなく求職用の滞在許可証を手にしました。
すなわち、この滞在許可証の期限が切れるまでに仕事を見つけないと国外退去になるということです。
移住生活、最大の危機をチャンスに変えられるのでしょうか?


人によって言うことが違うイタリア

留学のために通っていた学校では最大8年間は学生として在席できるので、滞在許可証もそれで発行される、すでに前例があるので大丈夫だ、と言われていたのですっかり気を抜いていました。

同じ学校に通っていた別の人の例では、更新手続きでクエストゥーラに出頭したら私のような求職用の滞在許可証を発行してもらえず、退去期限60日間以内に今度は音大へ通うことにして、その手続きがまた大変だったと言っていました。
同じ留学でも学校が変わる場合は、いったん日本へ戻りイタリア大使館で新たに留学ビザを発行してもらわないといけないからです。

同じ学校に通っていても、そして同じように手続きをしても、当たった窓口の担当者でこのように対応が変わります。
イタリアでは人によって対応が違う、言うことが違うのです。
絶対に大丈夫、ということがないので、人生ほとんど博打、ギャンブルの運試しのようなものになります。

求職用の滞在許可証の期限は翌年2020年9月初めになっていました。
それまでに仕事を見つけて就労用の滞在許可証に切り替えないと、イタリアに住み続けることはできません。

しかし、そもそも間違いのようにして発行された求職用の滞在許可証です。
仕事を見つけられたとしても、手違いで発行されたものから就労用に切り替えられるものなのでしょうか。

待ち合わせはローマのバール

日本人が就労ビザを取得するためには手続きが煩雑なので弁護士をつけたほうが良いといろいろな人からアドバイスされました。
それに私の場合は手違い発行の求職ビザ、というハンデもあります。
信頼のおける弁護士を雇ってこの辺りの問題もクリアにしておきたいと思いました。

直接の知り合いに弁護士はいないので周囲に相談したところ友だちのひとりが、知人のイラン人がイタリア就労ビザを取得したときに雇った移民専門弁護士がいる、紹介してくれるというので会ってみたら?と言われます。

いま日本語で書くとスラスラと出てきますが、こうしたやり取りは当然すべてイタリア語です。
カタコトではないものの、知らない単語も多く、与えられた情報のうちおそらく60%ほどしか理解できていません。
残りの40%は自分で調べて補うか、カンを頼りに判断して前へ進むことになります。

ここが正念場と思っていたので、就労ビザに関する情報はすべてノートに書いて記録しておきました。
それがいま、こうしてnoteに書くのに役立っています。

そのノートに走り書きしてあったメモの内容です。

Avv. ✖✖✖
Avvocata
Irani べハット
16.00 15/07

7月15日16時にローマにある指定されたバールに行きました。

ナゾの弁護士ロマヌス

約束の時間を30分ほど遅れて、汗を拭きながらヨレヨレのスーツを着た中年男性が現れ、私に声をかけました。
イタリア語で弁護士はAvvocatoアヴォカートです。
今回はAvvocata、末尾がAで終わるので女性弁護士が来るのかと思っていたらまさかの男性。
弁護士のアシスタントで私を迎えに来てくれたのかなと思ったらそうではなく、彼がイラン人紹介の弁護士だったのです。

そもそも事前に聞いていた✖✖✖という名前ではなく、自分はロマヌスだと名乗りました。
会う前に調べたところ、✖✖✖という弁護士は存在しローマにオフィスも構えています。
バールは待ち合わせに使っただけでオフィスへ移動するのかと思ったら、ロマヌスはその必要はないと言い、話はそのまま店内で進められました。

これは怪しい。
警戒モード全開で、それでも藁にも縋る状況だったのでどんな情報でも聴き逃すまいと必死に彼の話について行きました。

要約するとロマヌス曰く、私のケースならTipo di Autonomo(自営業タイプ)にしてDitta individuale(個人会社)を作り、Vendita e Importo exporto(販売と輸出入)で事業をすることにすれば良い、ついては550ユーロ払えば全ての手続きを代行する、というものでした。

次に会うときにパスポートや滞在許可証など必要書類と550ユーロを持参しろと言います。
あまりに怪し過ぎます。
そもそも輸出入なんて資格がないとできないものではないでしょうか?

紹介してくれた友だちに面談の内容を伝えて相談したら、やはり彼女もいきなりお金を払うというのはちょっとおかしい、もしかしたらこの1回では済まず後から何だかんだと理由をつけて別の請求をされるかもしれないと言います。
そして、責任を感じたのか、別の弁護士を探してみるからこの件はとりあえず保留にしておけと言うので素直に従いました。

ロマヌスは弁護士ではなかった

だいたいの話が終わったあと、ロマヌスはアペリティーボしよう、おごってあげると上機嫌で言います。
すっかり私から仕事を受けられると思ったようです。

そして、リラックスした雑談モードでいろいろなこと聞いてみたところ、彼は正式な弁護士ではなく、税理士ですらないようでした。
単に移民手続きに関する情報と人脈を持った人物、ということです。
女弁護士✖✖✖とは互助関係にある、弁護士の判が必要な時は彼女の名前を使い、イタリアでは女性が出て行ってもダメな場合もあり、そういうときは自分が行って彼女を助けてあげるのだと言っていました。

私はこの日以降ロマヌスに会うこともなく、彼に滞在許可証の手続きを依頼することもありませんでした。
でも今になって思えば、彼でも良かったのかもしれません。
言っていたことはそう的外れでもなく、結局このあと私は「Tipo di Autonomo(自営業タイプ)」での就労ビザ取得を目指して動くことになるのですが、それはロマヌスも言っていたことでしたから。

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