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ishiika78短編集

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私の書いた短編小説を集めました。ここではそれを読むことができる。
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#エンタメ

肉の昂り…狙われた美魔女

肉の昂り…狙われた美魔女

 広末洋子(41)は専業主婦である。
 今年に入ってから大学生の息子が一人暮らしをはじめ、旦那は多忙な毎日を過ごし、孤独な時間を持て余している。
 そんな洋子にはヒミツがあった……。

 洋子は買い物メモを頭の中で反芻しながら家の鍵をかける。いつも多忙な旦那に少しでも精の付くものを食べて欲しい。そんな想いから、ささやかにも今夜は好物のモツ鍋をご馳走してあげようと考えていた。
 そんな洋子の背後から

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羅生門X

羅生門X

 下人の行方は、誰も知らない。
 そう、あの女を除いて。

 ここは羅生門。
 広い門の下には、この裸体の老婆のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗の剥げた、大きな円柱に、蟋蟀が一匹とまっている。
 そしてもう一つ。老婆の前に女の死体が案山子のように立てられている。
 老婆の手には先の煤けた一本の木片。燃え尽きた松明をゆらりと掲げ、猿のような呻き声をあげながら女の死体に打ち付ける。
 ある者の目からは

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久遠の即身仏

久遠の即身仏

 亜光速宇宙船『ハガネ』のカメラが”それ”を捉えたとき、ビルは思わず椅子から跳ね上がった。
「マジかよ。マジで見つけやがった!」
 それはハガネより2時の方向。亜光速をはるかに越えるスピードで飛んでいる。
 半年前。超光速航行の実験中宇宙船が爆発する事故が起きた。ほとんどのクルーは爆発前に脱出したが、船長の村上芳美は最期の瞬間まで超光速空間の安定を一人で務めた。
 この世紀に残る大事故は村上芳美の

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ウエストサイド寿司職人

ウエストサイド寿司職人

 その提灯は俺の目の前にぼうっと現れたように思えた。
 ──マット寿司。
 まるで何かの啓示か。にしてはいささか和風すぎる。
 それにカリフォルニアで和食といったらNOBUで高級レストランだ。こんなフッドの一角に寿司屋などあるはずもない。
 ネオンに照らされた看板を見ると『寿司一貫 1ドル』と書かれている。
 馬鹿な。安すぎる。
 和食だぞ? コンプトンの吉野家もここまで安くねえ。
 きっと、アメ

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