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『読みたいことを、書けばいい』と言われたのだが。

それが誰かだったのか、もう思い出せないが僕の知人がこの本を絶賛していた。「この本、おもしろいよ」と。(絶賛ではないか)

その時は「へぇー」くらいの生返事だけしておいたのだが。

後日、全然違う知人からこの本を勧められて驚いた。その人もなぜか「この本、おもしろいよ」程度のサラリとしたおススメ感だったのだが田中泰延という人物を教えられたのが少し刺さった。

「これを書いた人だよ」と教えられたのが、この マキシマムザホルモン の記事だ。

読んでみると面白かった。どこがと言われると困るのだが、そこに疾走感と情熱、ロックを感じた。

こうなるとさすがの僕もちょっと気になる。(おススメしてくれた女性がとてもかわいくて、読んで共通の話題にしたかったのもある)

重い腰と膨らんだお腹をひょいと持ち上げAmazonに行ってみると、そこにはこんな謳い文句が書かれていた。

★Amazonランキング「本」総合1位★(2019/8/19〜20)
『林先生の初耳学』著者出演(2019/8/18)、
日本経済新聞広告掲載(2019/8/19)、大反響。
発売2.5ヵ月で15万部突破。

「大反響ってww」と使われている単語には安っぽさを感じたものの、星の評価は非常にいい。

これはやはり面白い本なのだろうと考えた僕は、ポチッと

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536円でコンディションの良い中古品を買った。

僕はロマンチストなのだが、非情なまでの結果主義、現実主義者でもある。

本は内容が大切。汚れてようがなんだろうが、文字が読めればそこから受け取る価値は同じ。中古を買うことに一切の躊躇はない。
(田中さん、印税入らず申し訳ございません)


こうして我が家に届いたこの本。

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(はい、ひょっこりはん)

シンプルな表紙のデザイン。それだけにストレートなメッセージ。

『読みたいことを、書けばいい。』


ふむ。言葉の意味はすぐに理解できる。

でもこれって。

けっこう難しいことじゃありません?


例えば 。

聴きたい音楽を、歌えばいい。

できるだろうか。僕はMISIAが好きでよく聴くが、カラオケではT-BOLANしか歌えない病にかかっている。

自分が笑った事を、話せばいい。

できるだろうか。自分が笑った話を人前で披露してスベッた回数はこれまでの生涯で万のケタに入ってると思う。

読みたいことを、書けばいい。

できるだろうか。僕が星新一のようなショートショートが好きだとする。絶対に書けない。

そんなことは最初からわかってる。だから学ぼうとする。できないことを、できるようになろうとする。それでも才能がなければ才能のある人のようにできないだろう。

読みたいことを、書けばいい。

わかった、そこまで言うなら書いてみようじゃないか。

だが、書き終わってみると、そこには自分が読みたくもないような字面が並んでいる。

どうしてこうなった?

読みたいことを書いたはずだ。それなのに…




そこで思った。

「そうか。この本には、読みたいことが書けるようになる、その極意が書いてあるのではないか」と。

まず目次だ。目次を見れば、その内容はだいたいわかる。

第1章 なにを書くのか 〜ブログやSNSで書いているあなたへ〜
その1 文書と文章は違うことを知っておく
その2 ネットで読まれている文章の9割は「随筆」
その3 書く文章の「分野」を知っておく
その4 定義をはっきりさせよう
その5 ことばを疑うことから始める

第2章
だれに書くのか 〜「読者を想定」しているあなたへ〜
その1 ターゲットなど想定しなくていい
その2 だれかがもう書いているなら読み手でいよう
その3 承認欲求を満たすのに「書く」は割に合わない
その4 何を書いたかよりも誰が書いたか
その5 他人の人生を生きてはいけない

第3章
どう書くのか 〜「つまらない人間」のあなたへ
その1 つまらない人間とは「自分の内面を語る人」
その2 物書きは「調べる」が9割9分5厘6毛
その3 一次資料に当たる
その4 どこで調べるか
その5 巨人の肩に乗る
その6 感動が中心になければ書く意味がない
その7 思考の過程を披露する
その8 「起承転結」でいい

第4章
なぜ書くのか 〜生き方を変えたいあなたへ〜
その1 書くことは世界を狭くすることだ
その2 貨幣と言語は同じもの
その3 書くことはたった一人のベンチャー起業
その4 文字がそこへ連れてゆく
その5 書くことは生き方の問題である

んー… 

この目次からわかることは…

んー…

ダメだ。さっぱりわからない。

まあ、そうだろう。当たり前だ。目次で内容が全てわかるなら本の中身はいらない。


よし、中身だ。とにかく本を開いてみよう。

すると… 

「おっ?これは… 」

今度はすぐに発見があった。

文字が大きい。行間が割と取ってあり、字が詰まってない。

これを一言で表現すると『とても読みやすい』だ。

これは本として大切な要素で、僕は以前にあるベストセラー作家から「本で一番大切なのはフォントだ」と聞かされたことがある。嘘じゃない、フォントの話だ。(チーン)


話を戻そう。

この本は読みやすい。いいぞ、これならドンドン読み進められる。

ワハハハ、これで2時間後には読みたいことが書ける極意は俺のモノだ。


だが。

4ページ目でその期待はあっけなく破壊された。

本書は、世間によくある「文章テクニック本」ではない。わたしは、まがりなりにも文章を書いて、お金をもらい、生活している。だが、そこに「テクニック」は必要ないのだ。

なんと…

テクニックが書いてある本ではないですと!?

で、では、何が?

この本には何が書いてあるのだ?!


6ページ目にその答えはあった。

本書では「自分が読みたいものを書く」ことで「自分が楽しくなる」ということを伝えたい。いや、伝わらなくてもいい。すでにそれを書いて読む自分が楽しいのだから。


おわかりだろうか? 

この本に書かれているのは、書き方ではなく、自分が楽しくなる方法らしい。

ふぅ… 

どうすればよいのだ… 僕は…


いや、しかしだ。

ここで歩みを止めてはいけない。進むのだ。 

先に行けば今は見えない景色が見れるはず。

すると33ページにこうあった。

「ライターになりたい」
「自分の思いを届けたい」
「バズる記事を書く方法を知りたい」
「上手な文章の作法を身につけたい」
「書くことで生計を立てたい」

だが、ほとんどの人はスタートのところで考え方がつまづいている。最初の放心が間違っている。その前に方針という漢字が間違っている。出発点からおかしいのだ。偉いと思われたい。おかねが欲しい。成功したい。目的意識があることは結構だが、その考え方で書くと、結局、人に読んでもらえない文章ができあがってしまう。

こ、これは… パラドックスなのか… ジレンマなのか…

ここから…

どうなっていくんだ…







「ふぅ… 」

一気に読み終えた。

読みやすく、そして次から次へとネタのように運ぶ話が僕を飽きさせなかった。


読み終わっての感想だが。

noteを含め、SNSに文を書いている人は、読んだ方がいい。


実際には、ちゃんと中身にテクニックも文章作りのヒントも書いてある。具体例も盛りだくさんだ。

それらは『明日すぐに使える』ネタであり、実践書としてこの本を読む人も十分満足感を得られると思う。

だが、本書で得られる一番大きなモノはもう少し本質に近いものだ。

何のために書いているの? それは自分が楽しむためだよね?


この本を読んだ人が書いた文章がバズるかどうかはわからない。

その人の文章が誰かを感動させるかどうかもわからない。

その人がモノを書くことでお金をもらえるようになるかもわからない。

ただ、きっと。

この本を読んだ人は

書くことを楽しめるようになると思う。


僕もその一人だ。

この本で僕の中の何かが変えられたことはない。残念ながらこの本にそれほど強大なパワーはない。

だが僕は、僕の中にあるものを「これでいいんだ」と認めることができた。

それで十分。この本を読むために差し出す数百円(中古前提)のお金と時間は惜しくない。

ぜひ読んでいただきたい。

大丈夫。得るものはあるはすだ。

後悔はさせない。



しかし。

それでもやはり使うお金と時間には少しの後悔もしたくないと言う人のために。

この本があなたに合っているか、あなたに必要かどうかを判断する、そのとっておきの方法を教えよう。

読む前にその本の価値がわかる方法とは。

読まずしてその本から得られるものがわかる方法とは。

それは…



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『読みたいことを、書けばいい。』感想文。

これにて大団円でございます。





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