マルティン=ルターと美味しいビール
マルティン=ルターは、机と椅子が用意されたうす暗い部屋のなかにいた。
広間につらなる廊下の一角に、とりあえず取りつけられた風の粗末な小部屋だ。
年代物の机はところどころささくれていたが、椅子はついさっき新調されたかのようで、塗料に用いられたワニスの匂いが鼻についた。
こまかな寄木細工がほどこされている。
それは部屋の雰囲気にそぐわず非現実的で、ルターの神経をひどく逆なでした。
広間からはざわめきが伝わってくる。
石の壁はある種の声をよく通すのだろうか。
誰かが何かに怒鳴って