色川尚

短編小説「稲村ガ崎ラプソディ」(2023年)第40回太宰治賞一次選考通過作品、「青い瓦…

色川尚

短編小説「稲村ガ崎ラプソディ」(2023年)第40回太宰治賞一次選考通過作品、「青い瓦屋根の家」(2022年)、「家族」(2020年)、「海」(2019年)ほか 短編映画「December Fish」2016年カンヌ映画祭Short Film Catalog上映

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    青い瓦屋根の家  コロナ禍の空気感を感じながら、一緒に旅をするように読んでいただけたらと思います🚃

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先日、盲導犬さんがホームで飼い主さんに休んでねと背中をトントンとされて、地面にべた〜と弛緩して休んでる姿が可愛かったし、電車がきたらスンと立ち上がってお仕事する姿に尊敬 電車の中では座ってる人の膝周りをくんくんしちゃったけどご愛嬌

    • 人間を生々しく描くところや、生と死が常に根底にある感じとか、自然の描写にもリアリティがあって、独特の感性で表現されてるところは読み応えあるというか、楽しさを感じる。 動物の気持ちを表現したり、生きとし生けるものを愛おしいと感じている作者の感性が胸にくるし、共感できる。

      • 青い瓦屋根の家④

        翌日、大洗駅に付いて改札口の上にある時刻表を見上げると、鹿島神宮方面の下りの次の出発時刻は九時二十七分だった。ホームに上がると、出発の前に車両の上から黒煙を上げて二両の車両を一両にする切り離し作業をしているところだった。まだ見たことのない景色に出会えることに久しぶりに心が踊った。ホームには一眼レフカメラを首から下げたカップルや男性がホームからの景色や車両の写真を撮っている。車体にはアニメのキャラクターが大きく描かれていて、車内にもそのキャラクターが掲示されている。 ゴオーン

        • 素敵な本に出会えて感謝しています。 何をもって幸せ、不幸せというか分からない... わたしは目の前の人の背景を知らない 知らないからこそ聞く... いたみを知っているからこそ幸せを感じられる... などなど自分ごととして、とても心に響きました。 ありがとうございました。

        先日、盲導犬さんがホームで飼い主さんに休んでねと背中をトントンとされて、地面にべた〜と弛緩して休んでる姿が可愛かったし、電車がきたらスンと立ち上がってお仕事する姿に尊敬 電車の中では座ってる人の膝周りをくんくんしちゃったけどご愛嬌

        • 人間を生々しく描くところや、生と死が常に根底にある感じとか、自然の描写にもリアリティがあって、独特の感性で表現されてるところは読み応えあるというか、楽しさを感じる。 動物の気持ちを表現したり、生きとし生けるものを愛おしいと感じている作者の感性が胸にくるし、共感できる。

        • 青い瓦屋根の家④

        • 素敵な本に出会えて感謝しています。 何をもって幸せ、不幸せというか分からない... わたしは目の前の人の背景を知らない 知らないからこそ聞く... いたみを知っているからこそ幸せを感じられる... などなど自分ごととして、とても心に響きました。 ありがとうございました。

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          青い瓦屋根の家③

          「水澤さん、海外へ留学したことあるっておっしゃってましたよね?」 「はい」 「その時は何か変わりましたか?」 大学を卒業して三年ちょっと勤めた会社を辞めて、自分の好きなことをしようと思い切ってアメリカのコミュニティカレッジへ留学をしたのだった。 開放的な気持ちになって、初めてアメリカを訪れた自分はとても興奮していたし、気持ちが大きくなっていた。一歩踏み出した自分が何者かになれる気持ちでいっぱいだった。具体的な夢や目標はないけれど、自分は変わっていくのだという確信を持てたのは

          青い瓦屋根の家③

          青い瓦屋根の家②

          秋は大きく深呼吸をする。 海辺で屈んでいるひかるの側に行くと、ひかるが様々な形の貝殻を並べていた。 「きれい」と秋が言葉にすると、ひかるはそのうちの一つの巻き貝を秋に差し出す。 秋がその貝を手に取ると、ひかるが自分の手に持つ貝を片耳に当てて目を瞑る仕草をしてみせた。それを真似るように秋は貝を耳に当てた。風の音のような、潮風のような音が貝の中から聞こえてくる。 自転車をカフェのガレージに返すと、関根さんが店から出て来て、「はあ帰っちゃうの?」と秋に声をかけてきた。 「ええ」

          青い瓦屋根の家②

          青い瓦屋根の家①

          白い外壁に青い瓦屋根の家が太平洋の海を眺めるようにそびえ立っている。石垣の上に建つその家は、白くて高い塀で囲われていて庭の様子も家の窓も見えない。一階のガレージには、少し色褪せた白と赤の太めのストライプ柄の店舗テントが大きく張り出している。 海開きにはまだ早く、繁忙期を過ぎた観光地にある喫茶店のような佇まいだった。土産物屋と喫茶店が併設されているつくりで、正面に向かって左側に石段があり、門柱にある表札には「関根」と彫られている。 店の周りをうろついている不審者とでも疑われ

          青い瓦屋根の家①

          七色の歯がこぼれ落ちた

           にゃあ、とドアの外で猫が鳴いて、ドアを開けると向かいの戸建ての敷地からこちらのアパートの方へ降りようとしている野良猫がいて、その降りてきた猫と目が合った。 「にゃあ、こんにちは」とあなたが伝えると、その猫は少し考えるようにこちらをしばらく見つめてから、ゆっくりと門の下の隙間を匍匐前進みたいに地面にべたっとしなやかに屈んでくぐろうとしている。  最後に丸い尻とがに股をした後ろ足をこちらに披露して、癒しを振りまいて去って行った。  あなたはいつものようにリカバリーサンダルを履

          七色の歯がこぼれ落ちた

          仕事とは何か

          「働く」と「暮らす」の関係は切っても切り離せないもの。1日の時間は24時間。人によって生活スタイルは様々だけれど、時間をどのように使うかによって心の充実度は大きく変わると思います。 どうせ使うなら苦しいよりは楽しい方がいい。苦しいなら何かその先に達成感を味わいたい。と感じる人が多いんじゃないでしょうか。 私自身のことについて話すと、私は大学を卒業後、3年間、営業事務の仕事をしていました。25歳になった時、このままじゃダメだ! 40代になった時、子どもが居たら「お母さんはや

          仕事とは何か

          JOKER

          いろんな解釈ができて映画の作り方も面白いし、主人公が夢を叶えようと頑張っていたり、正気と狂気をいったりきたりするところは人物の感情の描き方が丁寧で引き込まれた。 どこからどこまでが現実なのか妄想なのか境目がわからない、どちらにもとらえられる。深刻な社会問題について、誰しもが自分ごとに感じられるような、紙一重な演出だと思った。 何が善で何が悪なのか! と強く主張する。自分の嫌いな自分の個性で笑いモノにされ、なりたかった憧れのコメディアンには自分の思い描いた姿ではなれなかっ

          暮らしの中の潤い

          去年、燕岳に登ったと話したら、仲間のひとりが『八月の六日間』という小説を教えてくれて、読んでみました。 いろいろな別れも経験して、その思いを昇華するかのように山に登る女性編集長。ひとりで山を登りながらこれまでのことを内省したり、山で出逢った人との交流を楽しんだり、臨場感があってとても癒される作品でした。 日常をはなれて、旅をしたり、自分の好きなことをしながらひとりの時間を過ごすって生活に潤いを与えてくれるんですよね。 #山登り #小説 #ワークライフバランス #ひと

          暮らしの中の潤い

          海の子

          窓の外からホトトギスの鳴き声が聞こえてきて、少しずつ浅い眠りから覚醒する。ホトトギスは春に鳴く鳥だと思っていたのだが、このあたりでは一年中鳴いているのでまるで季節感がない。ただ、朝になって明るくなると鳴くことが多いので、まあ、気分は爽快とまではいかなくても、それなりに気持ちがいいものだ。  昨夜は布団を敷くのが面倒で、毛布をかけてソファで横になっていたらどうやら眠ってしまったらしい。いつものことだ。だらしがないのは学生時代から変わらない。  カーテンを開けるとだいぶ日差し

          謎解きの鍵

           忌引をもらい、五日ぶりに出勤した。職場は女性差別などについて人々が理解をしていけるような講座を行ったり、広報誌を発行したりしていて、活動団体が利用できる施設でもある。  向かいの席では、相変わらず、自分のやりたい仕事しかやりたがらない女性が奇声を発したが、それには反応せずにノートパソコンを見つめていた。弁当を詰めて来る時間がなかったので、昼は何を食べようかと考えながら、自分らしくない自分の姿で仕事をする日々に戻る。  職場の近くには和食の定食屋がなく、チェーンのうどん屋

          謎解きの鍵

          ポジターノの夜

          昼にナポリを出て、ガイドのマリオが運転する小さなベンツに揺られ辿り着いた時は、すでに日が暮れていた。旅行会社で働いている後輩が手配してくれたホテルへ向かう。  空色や淡いオレンジ色のタイルで囲まれたホテルは南の町のやわらかい雰囲気を感じさせる。フロントで彫りの深い顔をした青年に尋ねる。「このあたりで、これから夕食を食べるところを教えてほしい。ここは、女性が夜ひとりで歩いても安全?」  青年は笑いながら「どうしたんだい? ナポリで怖い目にでも遭ったのかい? このあたりはそん

          ポジターノの夜

          「わたしは嬉しい時も、悲しい時もカレーを食べたくなる」

          ある夜、旅先で、九十四歳になる田舎のばあちゃんが亡くなったと連絡がくる。年の瀬の出来事だった。小学生のころ、ばあちゃんちの近くの田んぼで見つけた夏の蛍、毎朝、唱えた日蓮宗のお経。じいちゃんの亡くなった日のこと。たくさんのことが笑顔で横たわるばあちゃんの姿から走馬灯のように蘇る。  納骨の儀で墓地へ続く舗装されていない小道を歩くたびに、パンプスのヒールが土に埋もれてしまう。その道を、追いかけ合うように駆け抜ける子どもたちの姿が三十年前の自分や従兄弟たちの姿と重なり合

          「わたしは嬉しい時も、悲しい時もカレーを食べたくなる」

          ふたたび海へ

          人はフォーメーションを変えて生きていく 続かないことに嘆くのではなく、 出会えたことに感謝する 曲を聴きながら、空を見上げた 今のわたしにしか感じられないことがある

          ふたたび海へ