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創作メモ(2024/3/11):自己流の小説の書き方の記録_2024(後半)


4.短期の前準備

さて、小説を近々書かなければならない場合、前半とは別の工程があります。
後半ではその話をしていきたいと思います。

4.1.どんな企画か

「小説を書くぞ」
と内発的に思うことももちろんよくあるのですが、大抵は外部の企画への何らかの応募ということになるでしょう。
例えば、出版社の新人賞投稿とか、オンリージャンル同人誌即売会とかには、たいてい
「これこれの条件に則って書いてきて下さい」
という制約条件、レギュレーションとかがあり、それに合わせて書く訳です。
4.2.「どんな小説にするか」は、それによってかなり方向付けられて来ます。
「何文字以上何文字以下」とか、「某ジャンルの某キャラが某キャラに絡んでくる成人向けの小説」とか、「締切はこの日」とか、そういうやつです。

自発的に書く場合、何でも書けるし、最高ですが、読んでもらうのはかなり難しくなります。
例えばオールジャンル同人誌即売会とかで頒布することになりますし、たいていそれは余程強烈なアピールポイントがないと読者の興味を惹かないので、全然読んでもらえないまま、どうしても気が滅入って自信も失っていく、ということも多々あります。
そういう意味では、レギュレーションに則って、読まれやすい場や媒体に載せるのは、実は悪くない選択肢です。

4.2.どんな小説にするか

これは本当に
「レギュレーションに則った上で、自分がこういうのを書きたい、これがベストと信じるもの」
にしよう、としか申し上げられません。

出版社の場合、編集者の意向と、打ち合わせによる譲歩はあるでしょう。
が、それはそれとして、「書く気になれないポイントが排除しきれていない雑な案」を最初に出すと、そこが出発点となってどんどん書く気になれないポイントが増えていくはずです。
そうしたポイントが多ければ多いほど、書くのはダメージを伴う行為になり、書いててどんどんとんどん腹が立って来るし、不味い時には執筆するためのマインドが故障してマジで書けなくなる、という話はしばしば聞くところです。
なので、書く気になれないポイントはなるだけなくした、書きたいポイントを練り上げた案にしておいた方が、長期的には自分が保つはずです。

出版社が絡んでないなら、単に自分が書きたいだけの本が本当に書けるので、迎合する必要が全くありません。
書く気になれないポイントを案の中に雑に残しておくような真似をする理由も全くありません。
そんなことしても、心情的に損をするだけだから、全部外すのが一番です。

4.3.どんなキャラを出すか

「本編や原作の外伝を書くぞ」
となった時には、この工程が要ることがあります。
新キャラがそのエピソードの味わいを決める場合も多々あるので、その味わいを殺さず活かすために、
「ざっくりとこんな味わいのやつだ。それはエピソードの味わいにこう効いて来る」
と言い切れるようにしましょう。
最低限どんなことをする役割なのかを書きます。
(ちなみにこれは4.10.「キャラの整理」で変更になることがあります。
それはそういうものであり、そこはクオリティのために要るので、「その時に」ちゃんとキャラを作り込みます。
今は粗々としたイメージで動かせばいいです。
というか、そうでないとそもそも一歩も書き進められないでしょう

4.4.どんな経緯と成り行きにするか

キャラの詳細設定や、思いついた台詞やエピソードを、とにかくひたすら書くフェーズです。楽しい。
なお、a, b, c, ,,, と連番を振っておいて下さい。
書きたいところだけ書くので、書きたいところ以外全く書けてないし、詳細を詰めきれていないところもたくさんあるでしょうが、そこは後で見やすいように「(※詳細未定:甲(乙丙丁…))」とか書いておきます。

4.5.物語構造との整合

あらかじめ前半で作っておいた物語構造と、経緯や成り行きのエピソード群対応付けを行います。
ここで先ほど設定した連番があると見やすいでしょう。

前半でも書きましたが、物語構造のいくつかは、物語の趣旨において不要ならば省略できます。
バディものなら、1人でどうこうする工程は、基本的に書く必要がなくなります。
また、歴史ものや出世ものでないのに、仕事組織や外の社会の話をしなければならないか、というと、ふつう要らないでしょう。
また、シンプルに勝って嬉しい話なら、勝利後の後始末の話もやはり要らないところです。

物語の趣旨により、要るところは絞られて来ます。
その上で、対応付けが不完全である場合、
「エピソードが足りないので作る」
か、
「折角のエピソードだが、使い所がないので、勿体無いが没にする」

かのいずれかをせねばならない、ということです。

エピソードが足りないので作る場合、
「そこについては話が思いつかなかったが、こういうエピソードや台詞が要請されるので、書けばよいのだな
というマインドで、書いて埋めて下さい。

4.6.穴埋め

次に、「(※詳細未定)」と書いておいたところをTODOリストとして羅列し、じっくり考えて、埋めていきましょう。
ここは思いつかなかったから後回しにしてきたところを書くので、やや骨が折れるところです。
ただ、自分の中ですら
「ここは詳細がないと本当はダメなところである」
と思うくらいなので、読者はますますそうでしょう。
当然、読者への言い訳は立たない。
もし、何らかの言い訳が立つなら、それは他ならぬここへの埋草として使えるので、クオリティはともかくとして(後述)ちゃんと埋めましょう。

穴を埋めていく中で、小さい穴がさらに見えてきます。
これも、物語の流れのことは一旦無視して、何も考えずにTODOリストの一番後ろに追加していきます。
これをひたすらやります。

4.7.物語構造による整列

そして、細かい穴はいくらでもあるが、でかい穴はともあれ全て埋まった、不格好だがこれ以上頭が働かない、と思う時が来ます。
そうしたら、順序は滅茶苦茶になっているが、ともあれTODOリストの埋まった物語を、TODOリストも混ざった状態で、物語構造通りに整列させます。
物語構造通りに並べると
「ああ、ここはこうすると良かったんだな」
と気付く点が出て来て、さらに細かい穴が埋まります。

また、次の4.8『違和感のあるところ』が見えやすくなります。

4.8.違和感のある箇所のピックアップ

取り敢えず、物語としては頭から尻尾まで一本に通っている、「芯」と呼べるものが出来上がります。

さて、次にやるべきことがあります。
頭から尻尾まで読み直すことです。

何のためか?
違和感のあるところを洗い出すためです。
「なんかしっくり来てないな」
と思うところを、大小問わず全部箇条書きでピックアップします。
(それはそれとして、違和感の大きさに応じて、箇条書きの横に「大」「中」「小」と書いておくと良いでしょう)

4.9.辻褄合わせ

違和感のあるところの辻褄合わせを行います。
まあ、面倒臭いなのですが、自分でもおかしいと思っているところなのです。
当然、読者への言い訳は立たない。
もし、何らかの言い訳が立つなら、それは他ならぬここへの辻褄合わせとして使えるので、今度はクオリティは整えてちゃんと埋めましょう。

4.10.隠されたテーマの確認

話を作り込むと、最初考えていたのとは違う面白みが生えてくることがあります。
その面白みをよく見て、元の話を壊さない新しい隠し味や後味として使えそうなら、これを「隠されたテーマ」として活用し、うまく隠し味や後味のために使いましょう。

隠し味や後味のためなので、これは総括に使います。
作者本人にとっても、隠されたテーマ
「そうか、実はこれはこんな話だったのだなあ」
という感慨と共に生えてくるものです。
この感慨を読者にも味わってもらうためには、総括のところで隠されたテーマをそれとなくお出しする、ということになります。
(ここは前半の記事でも書いたことですが、より詳しく説明しています)

なお、雑味を残さないために、テーマは4種類に留めておきましょう。

  1. 本来のテーマ(これに基づいて作るため、読んでいる最中はこれを味わうことになる)

  2. 余談としてのテーマ(本来のテーマでは問題が残る場合、問題解決をして後味良く物語を終盤に導くために、これで味を整える)

  3. 隠されたテーマ(作り込んで俯瞰した時に生えてきたテーマを総括として使う)

  4. 拡張されたテーマ(上記のテーマたちが何らかの上位のテーマの一部であった場合に限り、それをちらりと見せる。驚きと共に、良い意味で味変になることを期待して盛り込む)

読み返して
「本来のテーマ、最初はこれで行こうと思ったが、今見るとこれでは今見えている作品の全体像の雰囲気と合わない」
となることがあります。
そういう時は、全体像の雰囲気「隠されたテーマ」として洗い出し、「本来のテーマ」「隠されたテーマ」との間が上手くつながるように、糊(のり)として「余談としてのテーマ」を新たに設定する、という手も可能です。

その他にテーマがあったとしても、それらは雑味になるため削ります。
これは大事な工程なので、もったいなく感じられても、やるしかありません。

4.11.キャラの整理

テーマが決まると、今まで出してきたキャラの行動原理についても、なんかしっくり来ないことがあります。
これをしっくりさせるためには、

  • こいつの今したいことは何か

  • こいつの価値観誓約(ゲッシュ)地雷は何か

  • どういう人間関係

  • その上でこいつがこの話に放り込まれたらどんな言動をするか

  • こいつはテーマに対してどう位置づけられるか

を整理し、これに反する描写を削って、整合するように埋め直すことになります。
特に、主人公や、そのエピソードでのメインゲストが、しっくり来ない言動をしていると、後味がおかしくなり、話の評価が下がります。
主人公やメインゲストの言動と
「この話はこうであり、そこにグッと来るポイントがある」
というテーマズレていたら、後者が正しく伝わることはまずないし、だから読者がグッと来る可能性はほぼない。
読者から
「ピンと来ない。というか何の話?
え? それがテーマだって?
こいつらの言動から、そんな話なんか、読み取りようがなくない?
何だよそれ。無駄な時間を過ごした」

と言われるだけです。
もちろんそんなことを言われるために話をしているのではない。
だからここはちゃんと整えましょう。

4.12.視点の単一化

物語を誰視点で行うかを考えます。
話を読者の視野に収めるため、なるべく広く俯瞰して、しかし視点の混乱はないようにしなければなりません。

  1. 三人称でキャラたちを俯瞰して神の視点でやる手法と、

  2. (基本的にはなるべく俯瞰可能な立場の誰かの)一人称でやる手法が、

広く取られている手法になります。

前者の場合は、
「この話は何様がどういう立場で物を言ってやがんだ?」
と思われることが稀にあるので、神の視点を正当化する何らかの仕組みがあった方が良いのです。
が、神の視点に慣れてる読者も多いので、まああまり問題にはなりません。

後者の場合は、カメラを固定しておき、くれぐれも別の人にならないようにしましょう。
カメラの映る対象をザッピングするのは、手法としては時々見るやり方で、もちろんアリでしょう。
また、特別に特定のキャラのエピソードをやったりすることもあります。
あるいは前半後半で主人公交代をする作品もあります。(『機動戦士ガンダムAGE』とかは3世代交代制であったと聞きます)
でも、そういう理由がある場合以外は、途中で飽きた読者が最近の連載から追う場合に
「おい、これ、あいつの目で見た物語じゃなかったのかよ。
なぜ別の奴が別の奴の立場で物を言ってやがんだ?」

という大混乱をもたらすので、その読者は今度こそ完全に去っていってしまいます。
この類いの困り事を避けたいのなら、一人称を1人に集約するのが安全と言えるでしょう。
(なお、主人公カメラ一致しているとは限りません。
相棒視点
だったりメインゲスト視点だったりすることもしばしばありますし、それはそれでちゃんと機能はしているので良いのです)

そして、視点を設定した後で、作品をそれに沿うように書き直します。

4.13.尺の調整

整ったら、
「物語構造における文章の分量の比率」
を割り当てます。
ここが無駄に大きいかったるさうざったさに、また逆に根拠なく小さい素っ気なさ手抜き感に映るので(少なくとも自分の目でそう感じてしまうはずです)、極めてまずいことになります。
レギュレーションの中で、面白いと信じる、書きたい、今書ける限りでは最高の物語を書くのです。
ケチをつけられないためにも、尺の調整はよく考えて行いましょう。

5.執筆本番と校正

後は、尺の通りに書いて、書き終えたら細かく手直ししていくだけです。
今から書くものが本文なので、クオリティには気を遣いましょう。
とはいえ、もう、どこかの部分を丸ごと書き直す等の大規模な書き直しは、基本的にはなくても済ませられるはずです。

6.そんな感じでやってみましょう

元々この記事は、

「俺はどんな風にして小説を書いてるんだろう。
こうすればスムーズにやれる、という経験則があるはずだ。
しかし意識化も言語化も出来ていない。
自分に説明出来るレベル「では」理解出来ていない、ということだ。
これ、スランプの時に困るぞ。
実際、何度か困ったことになったよな。
ちゃんとメモっとこう」

という動機で作られたのでした。

だから、まずは、自分のためのものです。

他人のためになれば、それは良いことではあります。

***

そもそも、何で今これが書けるのか?
実は、今、ある企画に参加したからです。
何かって?
『胎界主webオンリー2』です。

去年の分の『胎界主webオンリー』等の確定申告に、今年成功したのです。

次のイベントを、今年もやるらしいのです。
俺も頒布側で参加したいな。
そして来年つつがなく確定申告すればええねん。
そんな腹積もりです。

ということで、小説の下ごしらえをしていたのでした。
この記事は、その記録とも言えます。

何事にもタイミングと言うものがある。
だから、
「小説の書き方を、ちゃんと今モニタリングしよう」
と思い付けて、この記事も書けて、その時点で大分いい流れと言えるでしょうね。

しかし、完成するかどうかは分かりません。
3月中旬下旬は繁忙期なので、原稿を書く時間的余裕はかなりシビアなものになってくるでしょう。

まー、間に合って欲しいよな。
頑張れー。俺よ。
そんな感じですね。

それでは、皆様も、良き小説生活を!

(終わり)


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