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琉球廻戦 10(最終話)
【什】
舞浜母は彦の動きを舌で絡め取って封じた後、万力の様な力で彦の両肩を掴んで固定し、唇を重ねた。側から見ればディープキスの様に見えた筈だ。
人は何故キスをするのか。
キスの起源については諸説あるのだが、母親が幼児に餌を口移しであげていた頃の名残とする説や、塩を手に入れられなかった貧困層がなんとか塩分を得ようと他人の頬周りを舐めていた事から転じたとする説などがある。
いずれにせよキスとい
ファミレス(4/4)
見慣れた近所の風景だ。並び立つマンション、セブンイレブン、本当に弁護士がやってるのかも怪しい法律事務所、たびたび休業する整骨院、庶民的な風体のお好み焼屋がそこかしこにある。
違うのはそれらを黒い霧が包んでいることだ。霧は濃く、あたり一帯に立ち込め、前方の数十メートルですら目視できないほどだった。
とりあえずは歩いてみよう。そう考えてあたりを散策した。町は薄暗闇のなかにあった。暗いのにどの
ファミレス(2/4)
――おじさんさあ、やっぱ女の子によくカモられたりするでしょ?
…ん?と言ったきりおれは固まって動かなかった。
そのあいだに「お待たせしました。わらび餅と緑茶のホットです」「ありがとうございまーす☆」「ご注文の品は以上でお揃いでしょうか?」「大丈夫でーす♪」「失礼します」と店員が来て店員が去って行った。
――おお、なかなかイケる。最近はファミレスも頑張ってるねえ~。
「…あのう」
「ん
おばあちゃんの生き甲斐
おばあちゃんにはハマっているものがある。それは目つぶしだ。
ここ数年習っていた毛筆はいつの間にかやめてしまっていた。それから毎日ぼんやりテレビを眺めている姿に「なにか新しい趣味ができたらいいのにな」と私は思っていた。
その矢先だった。おばあちゃんが目つぶしをおぼえたのは。
きっかけは明らかだった。私が実家に置いていた格闘漫画。その漫画に、主人公が強敵との出会いを期に無敵の突きを習得すると