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記事一覧

ある日ふと

ある日ふと、本当にふとなのだが、思った。

「みのもんたの顔面に喜多方ラーメンをブチ込みたい。」

みのもんた。本名御法川法男は、フリーアナウンサー、タレント、司会者、ニュースキャスター、実業家など多岐にわたる方面で活躍、成功を収めており、一方でみのさん、みのちゃんの愛称で親しまれている。数年前、女性アナウンサーの尻を触る様子が生放送中に映り込んでしまい、視聴者の顰蹙を買ったりなどしたが、それ

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誠の嘘

「ウルトラマンコスモスの再放送が始まるぞー!!」

この村には変わった漢がいます。大兵肥満にして鶴髪童顔。それでいて年中スキーウェアを着ているという珍妙な出で立ちであるが、変わっているのは外見以上にその中身でした。

漢の名はパイルドライバー誠(82)。

誠は毎日朝5時丁度に山頂から村中に響き渡る大声で嘘を叫ぶ。村人はこの嘘を目覚まし時計代わりにしており、この嘘を起点として1日を始める事は

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家路

近頃妙にさみいのなんのって、やんなっちまいやすよ全くもう。つっても、そんな季節は部屋ん中ァ暖かくしてドラマ鑑賞なんぞに耽るのがなんとも乙なもんで好きでやすがね。

ある日の夜分に拙者は家路を急いでおりやした。「古畑任三郎」の再放送がされると有れば、これ急ぐ事もやむなしといった塩梅でございやす。

拙宅は跨線橋を渡ると早く着くのでありやすが、今日発売のヤングチャンピオンを買って帰ろうと、遠回りを

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空気の抜けたバスケットボール

斎藤くんの事が気になり始めたのは中学二年生の秋の頃でした。

大きな体育館を男子と女子で二つに分けて別々にバスケットボールの練習試合をしていた時の事を、今でもはっきりと覚えています。

私は1年生の頃からバスケ部に入っていて、正直なところ体育の授業でクラスメイト達と練習試合をすると大抵勝ってしまいます。ちょっとそれが嬉しかったりして。でもちょっと退屈だったかもしれませんね。

そんな時、今で

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魔釣り

魔釣り

「も、もう少しでスポットに到着だべぇ」

大学のサークル仲間と海辺で花火をしていたところを誘拐されて漁船に乗せられた小宮山幸一(19)にとって、目の前の男が充血した眼で腐った豚を溶かした様な臭いの息を吐きながら呟いた言葉は、異国の言語の様に脳の表面を撫でるだけに留まった。

「助けてください…海へ棄てないで…」

「ごぼぼぼっ…す、棄てたりなんかしねぇよぉ…一緒に楽しいこと、し、してぇだけだ

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HOT LIMIT

HOT LIMIT

とにかく暑い日だった。

トラック運転手の賢太郎は車内の温度が何度になっているかなど露ほども気にしてはいなかった。

何にせよ暑いのだから。

賢太郎のトラックのクーラーは壊れていて熱い空気を送風するだけのポンコツであった。夏の灼熱の日差しがそのまま車内の空気を燃やしてモワモワと熱気をランニングシャツの隙間に送り込み、汗がビチャビチャと賢太郎の鳩尾に溜まった。

暑い。暑い。

堪らず賢

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