見出し画像

シニアになって働く意味を考える㉒ ~「働き方改革」というのは、自分自身で自分の働き方を改革すること~

定年前後のシニアに「働くことの意味」についてインタビューした記事です。一人一人のインタビューを積み重ねて、「働くことの意味」のスペクトラムを描こうと思っています。目指すは100人インタビュー!今回は22人目です。


60歳で個人事業主として副業開始

 Tさん(60歳2023年時点)は、57歳に二度目の転職先である食品関係会社を60歳で定年し、同じ会社の再雇用契約(単身赴任)で働いている。そして、23年11月から ISO(国際標準化機構)認証機関の外部委託審査員として(個人事業主の)副業をスタートさせました。最初にそのあたりについて聞いてみました。興味津々です。
 当たり前ですが ISO 審査員は簡単になれるものではありません。その分野の実務経験があった上で、専門の研修を修了した後、実際の監査を指導審査員のもとで6~8回行い合格認定され、ようやく ISO 審査員になれるそうです。そして、約8か月かけてみごと主任審査員になる。
 この約8か月間のTさんの勤務状況は、定年前と再雇用後の仕事が量も内容も同じフルワーク、しかも残業と休日出勤が常態化していたとのこと。このようなハンデを抱えながら、元々ない時間を捻出して審査員に合格したというからすごい!

現在のハードワークで65歳まで働けるのか?審査員を目指した動機

 現在勤務中の会社は夏に需要が高まる食品を扱っており、今年夏の猛暑で需要が爆上がりし、休日出勤が続いて8kgも痩せたそうだ。このようなハードワークで給与だけ大幅ダウンとなった再雇用。モヤモヤ感が残る。
 コロナ禍に副業のハードルが下がったことやこのような働き方で年金受給の65歳まで務め続けるより、契約審査員として個人事業主となり自分のペースで65歳以降も働ける道を選んだという。単身赴任からも解放され家族の元に戻りたいという思いもあった。

仕事経歴は苦難の連続、ISO審査員に合格するぐらい楽勝?

 「仕事人生満足度曲線」を描いてもらいました。これがまたスゴイ。Tさんは1985年大卒で大手エレクトロニクスメーカーに就職。30歳頃から50歳頃までの間に4 度の関連企業への出向を経験し、その都度仕事満足度が一気に下降。Tさんの驚くべきところは各出向先で努力と工夫で満足度を上げてきたことです。どんな状況になってもめげず腐らず、仕事にやりがいを見出してきたことに敬意を表します。
 50歳で本社へ復帰するも、おりしも「日の丸」製造業界のリストラ真っ只中、仕事満足度も再び最低点となり、ついに会社を飛び出す。50歳で最初の(全く畑違いの食品関連企業への)再就職を成功させ仕事満足度も上昇。仕事の成果をあげるほど、年間の休日が数日しかないという働き方に陥る。そこで57歳で再々転職を成功させ、現在の会社でも同じくハードワーク中だ(前述の通り)。(やっぱ、もともと仕事が好きなんですね?)
 そんな訳で、審査員の仕事に慣れてきたら独立し、働き方を大きく修正したいそうです。

監査員の仕事で「カルマ(業)」から解き放たれるのか?

 どこにいても仕事に真摯に取り組み成果を上げることでさらに仕事量が増えてしまうTさん、審査員の個人事業主となることで、この「カルマ(業)」から解き放たれるのか?さらに聞いてみた。
 外部委託審査員は、認証サービス会社から指定された日程で顧客訪問し審査を行います。事前にスケジュールを連絡しておけば、ある程度自分のペースに合わせることが可能だという。
 ところがである。監査先とのコミュニケーションは高度で、審査時は精神的な耐性が求められる。また、被監査企業は千差万別で事前に対象業界について勉強することも多く、更に、審査報告書の作成は、深夜に及ぶこともある。ISO 審査員の仕事は質・量ともに、けっこうキツイそうだ。
 定年なし、マイペースで自由に働けるはずだったのに?と、始めるなり疑問が持ち上がっているそうだ。

「オレ、何で働いてるの?の図」

 著者の勝手な指標で作った「オレ、何で働いてるの?の図」を作ってもらいました。Tさんのは、こんな感じです。

 Tさんの労働観で、ポイントが高かった「その他」とは、働くこと自体に価値を置くものです。具体的には、働く場所があるという幸せ、働いて大切な家族を支えられる幸せ、プライド、不安解消、いろんな経験が積める、働くこと自体が楽しい、などです。
 インタビュー聞き取りの内容とぴったり一致し、「根っからの仕事好き」なのかもしれませんね。

「働き方改革」というのは、自分自身で自分の働き方を改革すること

 単身赴任を終わらせて、家族の待つ家に戻り、個人事業主としてマイペースで働き続けたいというTさんの「働き方改革」、大変素晴らしいと思いました。
 Tさんなら、早く審査員の仕事の要領をつかみ、個人事業主としてマイペースで、働き続けられるでしょう。
 このインタビューを通して、「働き方改革」をするのは、私たち働く人、一人ひとりであることだと改めて気づかされました。厚労省ではありませんし、企業のマネジメント層でもありません。

後記:

 ISO監査の忙しい中、インタビューを引き受けて頂き、しかも、シニアに示唆的なお話をしていただきありがとうございました!
 余談:ロールプレイング研修では、採点役があえて理不尽に振る舞ったり、癖や細かい言い回しまで指導されることもあるとか(個人的なしきい値はあります)。世の中で話題沸騰中のパワハラとは質が違うように思いました。このような職種ではある程度「耐性を試される」ことも必要なのでしょう。命令することが仕事だと思っている元役員や上位の管理職には合わない再就職先だと思いました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?