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講演「生き方としての進路」を終えて…「何になるか」と「どう生きるか」

「異路」のお仕事、そして講演

普段、私は「異路(IRO.Inc)」という国際交流ソーシャルベンチャーの代表として、韓国ソウルを拠点に、人と人・言葉と言葉をつなぐ仕事をしています。主に、社会的経済や社会イノベーションなど「ソーシャル分野」や「公共分野」において、スタディツアーや国際イベントの企画・運営、コンサルティング・コーディネート、通訳・翻訳などを行っています。

もう少し具体的に書くと、大学の国際交流プログラムの企画やコーディネート、市民団体や公的機関の海外視察の企画及びコーディネートなどを担当したり、公的機関や公益財団などとともに、国際フォーラムやシンポジウムの企画運営なども行っています。また、「ソーシャル分野」や「公共分野」に関するコンテンツの企画、日中韓翻訳、執筆などを通し、アジアの様々な「社会問題」の解決と社会イノベーションの創出を模索しています。

「異路」が解決したい社会問題は、「東アジアの市民交流促進を通じた国家間・市民間葛藤を解消」「東アジアの平和な未来をつくることへ貢献」「アジアの都市と人々が抱える多様な社会的課題を解決。解決のための糸口、きっかけなどを提供」「韓国在住結婚移住女性の良質な雇用機会創出を積極的に創出」など、今すぐ、一人や一企業だけでは解決できない問題ばかりです。しかし、人と人、言葉と言葉をつなげる様々なプロジェクトの取り組みを通して、世界が広がったり、新たなアイデアやエネルギーをつくりだせる「交流」の場をつくり、小さいながらも新しい価値と、肯定的な社会変化をつくることを模索し続けています。

そんな取り組みを続ける中で、とてもありがたいことに、去年あたりから時々講演のお誘いをいただくことも少しずつ増えてきました。色んなテーマでご依頼をいただくことがあるのですが、主に2つのテーマで講演活動をしています。一つは、「韓国の社会的経済やソーシャルイノベーションのについて」。そして、もう一つはどちらかというと「進路講座」などの進路教育の場に呼んでいただき、「『生き方』としての進路~韓国で社会起業家になる~」などのテーマでお話をさせていただいています。今日は後者、「生き方としての進路」の講演を通して感じたことをちょっと書いています。

「何になるか」より「どう生きるか」

先日、日本のとある公立高校の授業に呼んでいただき、「『生き方』としての進路~韓国で社会起業家になる~」というテーマでお話をさせていただきました。

当日は、福島原発事故をきっかけに、台湾に留学・避難移住した経験や台湾での大学生活・台湾での社会運動について。そして自分の好きなことややりたいこと、やりがいや楽しさを感じられることを軸に、「どう生きるか」という点から、韓国で働き始めた経緯や現在の「異路」でのお仕事についてなどをお話しました。

学生時代の進路選択についての話から、韓国のソーシャルセクターで事業を起こし「社会起業家」になるまでの話がメインなのですが、日本ではまだまだ「社会的企業」や「社会起業家」、「ソーシャルイノベーション」など、普段見聞きしない言葉かなとも思うし、韓国ってどういう国?という点も気になるかなと思い、所々色んな紹介を交えてお話を進めました。

実ははじめに「社会起業家になる」というテーマをいただいたときは、なんだか恐れ多いというか、私には大きすぎるタイトルのような気がして、「ひょえー!どうしよー!」と思ったのですが、生徒さんたちが質問時間に想像以上に沢山の質問をしてくださり、とても嬉しい時間でした。

また、オンラインでの講演で直接的な反応や表情が見えない分、更にドキドキだったのですが、留学や起業、東アジアの社会問題などについてなど、色んな角度から質問をしてくださり、答える側としても「へぇーこういう部分に興味を持ってくれたのかー!」などなど、刺激的でとても楽しく、とっても興味深かったです。

そして、何より一番嬉しくもあり、興味深かったのは、講演後に送ってくださった感想文でした。

一つ一つ拝見させていただくと、話の中でも特に、自分の好きなことややりたいこと、やりがいや楽しさを感じられることを軸に、「何になるか<どう生きるか」という点を話した事が刺さったり心に響いた生徒さんが、とても多かったようでした。「今まで、将来何になりたいのか分からなくて不安で重い気持ちだったのが、考え方を変えればよいのかと気が付かされて、気持ちが軽くなった。」という感想や「視野が急に広がった」「不安な気持ちがワクワクに変わった」などの言葉がそれぞれの言葉で沢山語られていたのが、とても心に残っています。

それと同時に、そんなにみんな、自分が進路を決めるのに何になるかを定めないといけない圧力を感じていたのだろうかと思うと、なんだか心が痛みました。

そんなことをきっかけに、私自身は両親から「将来何になりたいの!」「あんたは一体どうしたいの!」と言われたりすることはなかったけれど、中学校までの学校教育の場では、何かの節目の度に「将来の夢」(なりたい職業)などを問われ、「何になりたいのか」が具体的になっていることを求められるようなことが何度もあったなぁとと思い出したりしたのでした。

例えば、小学校や中学校の頃、何かの機会に「文化的交流を通して、東アジアの平和に貢献する人」という将来の夢を書いたとき、それは一体どういう職業なのかを問われてちょっと困ったり…。先生や周りの人は、「外交官?」とか「通訳?」とか具体的な職業名を聞いてくるけれど、その頃の自分にはどれもその職業がピンとこなくて、周りのクラスメイトたちのように「美容師」とか「学校の先生」とか具体的な職業名を言えない自分がどこかおかしいんじゃないか?と少し不安になった時もあったのでした。

でも今回の講演を通して、もしかしたら、こんな経験は私だけじゃなかったのかもしれないと思うとともに、日本の社会や学校教育の場では、知らず知らずのうちに、自分自身に対しても、そして他者に対しても、「どう生きるか」よりも「何になりたいのか」ということについて、プレッシャーをかけるように問い詰め、答えを求めるようになっていっているのではないだろうかと、ふと思ってしまったのでした。

自分の意思とは関係なく、災害や震災、戦争が起きたり、色んなことがものすごいスピードで変化したりする時代。ある日突然、180度暮らしや生活がガラリと変わってしまう世の中。「何になるか」という具体的な夢や目的は決して否定しないし、それらにも良い点は沢山あるのだけれど、それだけに囚われるのではなく、「どう生きるか」という観点から、その時その時に柔軟に進路を設計したり、人生をデザインしていくことが、これから先の時代は更に大切なってくるのではないでしょうか…。


私の講演は、所謂「何かすごい超大成功した人」とかの話ではないのですが、いつかどこかで誰かにとって、進路や生き方を選択・デザインする上で、少しでもヒントや参考になることがあったら嬉しい限りと思ったのでした。

講演活動は、毎回毎回、色んな質問や感想を通して、私自身にも新たな気付きや学びがあり、とても楽しいです。また、今後へ向けたパワーがふつふつと湧いてくるような機会でもありました。素敵な機会をいただき、改めて本当にありがとうございました。

オンラインでの講演の様子

《最後に少し宣伝📢》
私自身、小さいときや学生時代から、色んなことをしている「面白い人たち」に沢山出会えたことは、自分の生き方を考えていく上でとても参考になっていたし、そういう方たちの存在があるからこそ、目に見えない未来に対して漠然とした不安はあるけれど、どこかワクワクした気持ちを持てていた気もします。

今後も機会をいただける限り、「いつかどこかで進路や生き方を選択・デザインする上で、少しでもヒントや参考になるような話」をしていければ嬉しいです。中・高校生や大学生をはじめ、市民グループ向けなど、講演の形態や内容などは、参加者の方に合わせて、柔軟に対応可能ですので、もしご興味ある方は、ぜひSNSやこちらからお気軽にご連絡くださいませ。




ありがとうございます!감사합니다! 謝謝:)