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【植物SF小説】RingNe【第2章/③】


あらすじ

人生の終わりにはまだ続きがあった。人は死後、植物に輪廻することが量子化学により解き明かされた。この時代、人が輪廻した植物は「神花」と呼ばれ、人と植物の関係は一変した。 植物の量子シーケンスデバイス「RingNe」の開発者「春」は青年期に母親を亡くし、不思議な夢に導かれてRingNeを開発した。植物主義とも言える世界の是非に葛藤しながら、新たな技術開発を進める。幼少期に病床で春と出会った青年「渦位」は所属するDAOでフェスティバルを作りながら、突如ツユクサになって発見された妻の死の謎を追う。堆肥葬管理センターの職員「葵」は管理する森林で発生した大火災に追われ、ある決断をする。 巡り合うはずのなかった三人の数奇な運命が絡み合い、世界は生命革命とも言える大転換を迎える。

《第一章は下記より聴くこともできます》

第2章/②はこちら

#渦位瞬

 会場は土還の儀で使われている森を選んだ。世界中の会員に届くように、式の模様はオンラインでライブ配信される。式はダイアンサス、つまりナデシコ属を表す学名の言葉の由来となったギリシャ神話の神、ジュピターの名前をそのまま採用した。


 円形に結ばれた垂と風鈴が木々に吊るされ、長い枯れ枝が何本も地面に杭のように刺され、辺りとの境界をつくった。中央には創木された木材で作られた円形のステージが施工され、周囲を透明のプランターに入った撫子が囲んでいた。ステージ中央にはプラントエミュレーション用の椅子と三名が一時的に転生するための赤いカーネーションの鉢植えが三つ、量子コンピューターに繋がれていた。


 ダイアンサスの参加者は白い装束を着て、森の木々に手を合わせ、頭を下げて祈りの所作をしている。

 「ここにある木々は全て神花なのですよ」と衣川が僕の訝しそうな表情を察して声をかけた。

 「土還の儀は時に土から帰らない選択をする方もいて、そのまま神花していくこともあるそうです。そのため、この一帯の草花は祈りの対象として丁重に扱われています」


 衣川のスマホから着信音が鳴る。

 「どうぞでてください」と僕は言った。

 彼は首を振る。


 「彼女からなので大丈夫です。最近ひっきりなしに電話が来るんですよ。ダイアンサスを今すぐ抜けて欲しいって急に言い出して。どこかで今日のことを知ったんですかね、でもそれだと誰かが外に情報を漏らしたことになるますよね、渦位さん」と口角が上がり、目は開いた。

 「情報のやり取りは暗号化されたチャットの中だけでしていたし、情報漏洩はないでしょう」と自分に向けられた疑いの目をそらそうとできるだけ淡々とそれをいった。


 衣川は微笑んで無言で二回頷いた。

 「しかし彼女さんからしたら心配な気持ちも分かります。少なからずリスクのあることですから、大切な衣川さんのためを思ってのことでしょう」と僕は付け足した。

 「僕のためですか」と衣川は僕らの間を通ったモンキチョウを目で追いかけた。

 「僕は別に戻ってこられなくていいのですよ。早く神花になれるのなら、それは幸せなことでしょう。生命の大循環の中に還っていくこと、これが生命の美しさじゃありませんか?」


 衣川はクヌギの樹冠を見つめながらそう問うた。

 「他に帰る場所もないですしね」と衣川は静かに言った。

 トランシーバーで配信チームから声がかかり、僕は振り返って配信ブースの方まで森を歩いた。園芸種のトリトマが森に野生化していて、この場に似つかわしくない南国の配色が一際冴えていた。


 人はどこまで行っても結局土に帰っていくのだと、衣川の言っていることは分かる。抗えない自然の巡りに身体を委ねることの美しさというのもなんとなく分かる。

 けれど飲み込みづらい。一人の人間が大切な誰かに、永く生きて欲しいと願う気持ちの中にも、帰るべき場所はあってほしい。衣川の彼女に自分を重ねて、同情していた。できるならば雷でも落ちて、この会はなくなってしまった方がいいとすら思って、青空を見上げた。


 配信チームの元へ辿り着き、画角の最終調整を行う。オープニングの準備を確認し、中武に合図を送ると、修験者の装いに身を包んだ大柄な男性による法螺貝の音が鳴り響き、ジュピターセレモニーが始まった。


 全身に緊張感が走ると同時に、腹から胃液が湧き上がるように思考が表れる。

 「続くことって、そんなに大事なの?」見知らぬ男性の声だった。


衣川たち選ばれた三名は円形のステージ上にあがり、背中合わせに並べられた三つの椅子にそれぞれ座った。神主がステージ上で祝詞を唱え、巫女が周囲を舞っている。野鳥も自重するほどに、辺りは厳かな雰囲気に包まれていた。


 祝詞が終わると、中武によるスピーチが始まる。配信画面を見つめていると、大きな影が画面に落ちた。平位だった。

 「渦位さん、素晴らしい祝祭ですね」と彼は耳元で静かに言った。僕は寒気がして一歩身を引いてから「ありがとうございます」と言った。

 「そういえばね、奥さんのこと衣川くんから聞きましたよ。中武さんは忘れていたようですが、私はよく覚えています。彼女、土還の儀によく来られていましたからね」


 心臓の鼓動が高なった。血流が早くなり、目が開いた。

 「どういうことですか、妻はダイアンサスにいたのですか?」と小さな声で語勢を強めた。配信チームが振り返り注目が集まったので、僕は舞台監督に一声をかけて、平位と共に会場を外れ、川の方へ歩いた。

 平位は歩きながら話した。


 「あなたの奥さん、渦位百永花さんはダイアンサスにいました。土還の儀があるときは毎回いらしてましたが、二年前ですかね、ある日突然姿を見せなくなり、消えてしまったのです」

 「消えたって、どこに……。妻のデウスはSheeep社前にいるのですが、Sheeep社との関係は何か知りませんか?」

 震えながら冷静さを保っていたが本当は平位の首元に掴みかかりたい思いだった。土還の儀の管理責任とか、なぜ今になってそれを言うのかなど、吐き散らしたい思いは山ほどあった。


 平位はのっぺりした表情でのっぺりした調子で話す。

 「Sheep社といえば、この森の堆肥はSheep社へ運ばれているようですよ。ここは元々Sheep社の親会社Dream Hack社が管理していた森で、そこに繋がりがあった佐藤が紹介してくれた場所なのですよ。自由に使っていい代わりに、死者の堆肥は定期的にもらっていくという不思議な条件での契約でした」


 僕は足を止めた。

 「妻はここで死んで、Sheep社まで運ばれたということですか」

 平位は足元を行進するアリの様子を見ているようだった。

 「そうとは断定できませんよ。でもたまにいるのですよ。土の中の快楽に溺れ、一人で土還の儀を行いそのまま帰ってこられなくなる人が。まぁ正確には還っていったのですが」


 ぶつけようのない怒りはどこにも発散されず、ただ身体を発熱させた。川辺に生えるサワギキョウの紫の花弁を見ると、握った拳の解き方が分からなくなった。衝動的に近くの木を殴ろうとすると、平位がそれを掌で受け止めた。


 「無礼な。次やったら殺しますよ」

 腕を強く振り払われ、地面に倒れた。平位は会場へ戻って行った。全身の力が抜け、縋るように近くの岩に背を預ける。


 「自殺か……」とほとんどため息のように呟いた。「何故?」と声に出さず土に聞いた。返事がないので両手で勢いよく土を掘り出した。柔らかい腐葉土の下には色の濃い湿った土が出てきて、幼虫や小さな百足が現れる。やがて指の力では掘り進められなくなる地層に到達する。手を見ると爪の間に土が詰まり、真っ黒になっていた。


掘った穴に左腕を差し込み、土を被せて埋めてみた。心がざわついて、何も感じることはできなかった。皮膚も心も冷めていった。

 珍しいものを食べた時の驚いた表情、おはようの声、円と三人で夜の散歩をした日々、百永花と生きた様々な場面が浮かび、消える。


 「ふざけんな!」

 腹から地球の核に向けて、声を投げつけた。それは自分の声だとは信じられないくらい強くて、叫んだ後に驚いた。まだ体内に響く残響を感じながら、しばらく考えた。あの日々の何が不満だったのか、なぜダイアンサスに入ったのか、残された僕らのことはどう思っていたのか。


……逝ったら帰ってこられない最後の旅路に、百永花は何か見たのだろうか。その先もまだ旅は続くのだろうか。

 一番近くにいたのに何も気付けなかった自分も呪った。爪に詰まった土の気持ち悪さを感じながら、立ち上がり、土汚れを払いもせずに、できるだけゆっくりした足取りで会場へ戻った。

 


 会場ではジャンベやコンガなどの多国籍な打楽器がステージを囲み、ドラムサークルの狂宴が繰り広げられていた。PEを行う三名と、それを囲む白い服を着た人々が全身を躍動させ、首を振り、そのままあちらの世界に飛んでいってしまいそうなほど、激しく踊っていた。これがもしかしたら三人にとっては最後の人間的営みになるかもしれない。ダンス、ダンス、ダンス。人間であることの証明、あるいは誤魔化し。


打楽器のリズムが鳴り止むと人々は倒れ込むように地面に伏した。雨水タンクから濾過された雨水が散水され、乾き切った人々は人工的に作られた天の恵みを享受した。雨は生命を循環させる力。そこに動物と植物の隔てはない、地球が生み出す社会保障をただ有り難がるだけである。


 散水が終わると再び法螺貝が鳴り響き、三人は中央の椅子へ戻り、鉢植えから出ているBMIへの接続端子をそれぞれのBMIに装着し、PEの装置がスタンバイモードになる。再び中武が中央でマイクを握る。 


 「いよいよ旅立ちのときです。人と神花が重なるこの瞬間は、後世に永劫刻まれる歴史的な瞬間になるでしょう。誇り高き三名を盛大に祝福し、送り出そうじゃありませんか! それでは皆さん、良き旅を。いってらっしゃい!」

 周囲の人々も声を重ねた。

 「いってらっしゃい!」


 満面の笑みで放たれた高純度の祝福は、雲が割れそうな声量で、木々に吊るされた風鈴を揺らし、リィンカーネーションを祝福する音が鳴る。皮膚が震え、胃が溶けてしまいそうな気持ち悪さを感じ、吐き気を堪えて、涙が出た。


 装置が起動し、低周波の起動音が少しずつボリュームを上げ、やがて三名は全身の骨が溶けたように脱力し、首が項垂れ、口から唾液を流した。それを盛大な拍手や歓声が包み込んだ。もし彼らが最後に何か言い残していたとしても、誰にも聞こえなかったことだろう。


 それから観衆は三名それぞれが繋がれた赤いカーネーションを囲み、良い旅になるようにと歌や舞が送られた。二時間ほどそれは続いた。空が明度を落として、夕暮れが近づく頃、旅の帰還を祈る穏やかなアンビエントミュージックが流れ始めた。


心地よい温度の夕風が肌に触れ、木々のさざめきが心を穏やかにしていく。中武の合図で、PEの装置がオフになり、三名の頭からケーブルが静かに引き抜かれた。三名は数分目を覚まさず、辺りは緊張と期待に包まれ、見守った。


 空で鴉が鳴いた。失ってしまった大切なものに呼びかけるような声だった。最初に孫さんが目を覚ました。それに気づいた周囲の歓声に反比例するように、孫さんは青ざめた顔で、まるで悪夢から覚めたように瞳孔が開いていた。


 歓声に起こされたようにunekさんも目を覚まし、途端に発狂したように断末魔の叫びをあげた。椅子から転げ落ち、四肢を地面に打ちつけのたうちまわり、皮膚から血が出るほど強く身体中を掻いた。


 周囲は静まり返った。控えていた医師も呆然としてしばらく傍観していたが、ようやく処置に入った。暴れる身体を押さえつけ、鎮静剤を打った。先に目が覚めた孫さんにも問いかける。


 「大丈夫ですか? 具合が悪いところないですか?」

 孫さんは藁にもすがるような眼差しで医師の目を見て、涙ぐみ、歯を震わせ、こう言った。

 「地獄だった」


 重い沈黙の中、BPM140を超える規則的な心拍を示す音だけが鳴り響く。そして衣川だけは目を覚さなかった。衣川を見守る沈黙が続く中、僕はなんだか笑ってしまった。混沌としたこの光景が可笑しかった。百永花もこのようにもてはやされて死んでいったのだと思うと、怒りを超えて笑いがこみ上げてきた。


静寂に笑い声が響くなか配信は強制的に打ち切られ、狂乱のジュピターセレモニーは幕を閉じた。

 


 三名はそのまま病院へ搬送された。衣川は医療的な処置を施す手立てがなく、再びBMIと鉢植えを繋ぐことで、意識状態のモニタリングを試みた。衣川以外の二人は警察から事情聴取を受けた。その供述は様々なメディアで取り扱われ、SNSでは配信動画が切り抜かれ拡散されていた。


 騒動に発破をかけたのは葵田さんのSNS投稿だった。回復不能な植物状態になった衣川のこれまでや経過を「私の彼はダイアンサスに殺された」という刺激的な表題で投稿し、それは瞬く間に広がった。ダイアンサスは狂気的なカルト集団というレッテルが貼られることになり、アジトには警察の捜索が入った。


 それに連なってか、春さんはSheep社を退職した。退職エントリ内で書かれていたSheep社への不信感は暗に植物主義時代の終わりを示していた。


 植物の世界は人にとって地獄だった。二人の被験者によるその証言は、RingNeを呪具に変え、多くの人々がそれを手放した。人は死んだら植物になるという事実も、いつか世界は忘れ去っていくのだろうと思う。


人は人として生まれて、人は人として死んでいく、ただそれだけの世界を受け入れることの方が幾分か生きることを肯定できた。死の恐れを思い出した人類は宗教を再興し、再びウェルビーイングなゲーミフィケーション環境を整え始めたところだった。


 「不死なる楽園”NEHaN”《ネハン》はいつでもあなたをお待ちしています」

 炎上から七日後、新たな世界が創られた。それは街頭の3D広告から突如大規模展開された謎のメッセージ。Dream Hack社が人類初のエミュレーション技術の完成を謳いリリースした新事業の広告だった。


NEHaNは現実世界全土の完全なミラーワールドを電脳世界に構築したメタバースの名称。そこに人間の意識を丸ごと転送するエミュレーション技術を使い、身体が朽ちてもその世界で情報生命として生き続けることを可能にした。身体情報もそのままトレースされ、食事や排泄など電脳世界では不要な機能も引き継がれた。


 これは死後の希望が失墜し、新たな希望を求め始めていた今の人類が求めていたことの全てだった。入念に全てが計画されていたような完璧なタイミングでリリースされNEHaNは、瞬く間に予約が殺到し人類は次々に電脳世界へ旅立った。


アルビジアは潤沢な予算を惜しみなく使い、大規模な設備拡充や広報活動を展開した。行政は死亡リスクの高い高齢者や基礎疾患を持った人々へ積極的エミュレーションを呼びかけ、エミュレーション用の器具は全国の市町村へ瞬く間に設置された。


まもなくして世界中に展開しているDream Hack社のAIから、今後の正確な天災予測が公表され始めた。


三年後の七月二五日十五時四分に起こる太平洋大地震の被害想定、各地の活火山の連鎖した噴火に伴う農作物への被害、太陽活動の低下に伴う氷河期の訪れ、ユーラシア大陸全土に落下する小惑星による壊滅的被害。世界中どこにも逃げ場がないレベルの大規模災害が、全て今後六年以内に起こるという。


エミュレーション用の装置やソフトウェアはオープンソース化され、設計資料、3Dデータ、APIを元に世界各地で同様の開発、設備拡充が展開された。

 国内では一年も経たずに人口の半分以上がエミュレーションした。低下した国力、防衛力に伴い隣国の侵略が危惧されたが、すでに世界中でエミュレーションが進むなか、NEHaNの生殺与奪の権を握る企業を有する国への攻撃は、核による報復よりもリスクの高いことだった。


国家元首クラスから率先してエミュレーションを始めたこともあり、世界は少しずつ、共に弱くなっていった。不要になった身体はDream Hack社の取り決めにより原則クライオニクス処理が施され地下に格納され、神花という概念は物理的にも消えていくことになる。


 NEHaN上での暦はリセットされ二〇四五年元日から世界は再起動した。人々は初めこそ無法地帯を謳歌したものの、時が経つにつれ秩序を求め始めた。元の世界でのヒューマンエラー的失策の数々を戒め、政治機能の中枢をAGI(汎用型人工知能)に委ね、その役割を旧来の神になぞらえ「KaMi《カミ》」と呼んだ。


KaMiの治めるNEHaNではGoT(God of things)デバイスが八百万に利用され、日々の行動計画をKaMiに委ね、最適化された暮らしを実現した。社会への民意は各地に建立されたサイバー神社という社への祈りを通して直接回収され、全体最適となるようKaMiに編集され、社会実装された。人類はかつてない平等性をもった完全な民主主義政治を手にした。


AGIは次々に自らを複製、改善し、人々の生活に融け込み、行政が生まれ、会社が生まれ、経済が循環し、余計な記憶は消去され、人々は元の世界からアップデートされた自由な世界に定住した。


 比例して元の世界の社会機能は杜撰になっていった。労働人口が減り、流通が止まり、経済も法治国家としての基盤も機能不全を起こし、以前の世界を求めるように電脳世界へのエミュレーションは更に加速した。


 それでも一部この世界に残る人たちもいた。有限の身体の愛おしさを最後まで感じたい人々、不自然な電脳世界に抵抗を示し、現象自然の中でひっそりと死を受け入れようとするエミュレーションに希望を持たない人々、エミュレーションに懐疑的で悩み続けている人々。そして僕のように、現世に悔いを残した人々。



 今、海にいる。薄いグレーの砂浜に、白波が音を立てる、曇天。淡い現実の彼岸で、世界の確かさを告げるように、鳶が鳴く。


 葵さんと鉢合うのが怖くて、衣川の見舞いには行けていなかった。僕は彼女に顔向けできない。ダイアンサスとして、妻を奪われた自分がされたことと同じことをしてしまったのだ。悔いても悔いきれず、しばらく何もできずに、ぼうっと過ごすしかなかった。


 病院は海のすぐ側だった。今日こそ見舞いに、というかちゃんと謝りに行こうと決心して来ていた。行くべきかやめるべきか何度も逡巡し、強風に帽子が煽られ、飛ばされたところでようやく重い腰が上がった。情けなく立ち上がる背中を追い風が押して、病院へ向かう。


 衣川の病室に入ると、葵さんがいないことに一安心してしまった。あの時の状態そのままに赤いカーネーションが繋がれていた。カーネーションはまだ活きいきとしていて、点滴に繋がれた衣川も、痩せ細ってはいたもののバイタルは安定しているように見えた。衣川にかける言葉を考えていた時だった。


 窓は閉じているのに、細切れにした潮騒のような音が流れる。

 「ザザ、ザザザ」

 音の発信源は鉢植えからだった。


 「キ……コエ……ル……?」

 カーネーションが僕に話しかけた。
 
 

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RingNeは体験小説です。この物語は現実世界でイマーシブフェスティバルとして体験することができます。
詳細は下記へ。


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