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ぼんやり

授業が始まるまでの10分間、いざぼんやりしてみると、こうして壁を見つめることもしていなかったのだなと気づく。いつも何かを見ていないと落ち着かなくて、心と向き合うのを避けていた。電車では本かスマホ。家では、音楽かラジオかテレビ。無音のなか、何も考えることが思い浮かばない。短歌を作ろうとしながら、十分では作れんやろ!と我に帰った。

一人でいることに慣れていない私は、いつも何かで心を埋める。空洞を空っぽのままにしていたら、スースーとして少し痛いから。

ゆっくりと息をして、声を出してみる。「あ」もうちょっと。「おはよう」もうちょい。「頑張ろう」誰に言っているのかわからないが、自分では満足の結果。耳の奥に血液の流れる音がしている。あたたかい音が耳を流れていく。

機械で固めた私の暮らし。大好きな星野源さんやBrunomarsの曲はすぐに脳内再生できるし、顔だって鮮明に思い浮かべられる。私ってすごい。ニンゲンってすごい。耳にイヤホンをさし、右手でスマホ、左手にスマートウォッチ(私は持っていない)。がんじがらめの機械生活を一度辞めてみようか。

授業まであと二分。最近リリースされた「喜劇」を脳内再生する。何度もリピートを繰り返しているものだから、歌詞は完璧に頭に入っているし、曲調もばっちり。スマホの電源を切り、イヤホンを終い、目をつぶる。人間て豊かだなと思う。もうそろそろ、と目を開けると、一分過ぎていた。体内時計を過信してはいけない。急いでパソコンを立ち上げ、ZOOMに入室する。あ、ここにもデジタル。

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