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失恋ピエロ



自分はピエロなのかもしれない。


己に絶対的な自信がないため、
恋愛において自己主張をあまりしてこなかった。

相手にとって都合のいい自分を作り、演じてきた。

何度も脱却を試みたが、どうも無理らしい。

陰キャラ時代を未来永劫引きずっていくのだろう。

僕の恋愛弱者エピソードは下記リンク纏めてあるのでぜひ読んで欲しい。

『学生時代に恋愛をしないと本気でこじらせる』

◆高校の教室に青春という忘れ物をした


僕の10代はピエロそのものだった。


大学2年生の夏頃、付き合っていた女性がいた。

女子校上がりで恋愛経験も乏しいらしく、

非常に純粋な子だった。


しかし、サークルの夏合宿で先輩に口説かれ一線を超えてしまった。

8月にそれを告げられ、

嫌だったら別れてもいいよと言われた。

その時僕は

まあ、人生いろいろあるんだし、俺はそんなことでは別れないよ。

みたいな答えをし、器の大きな男を演じていたのを覚えている。


実際、別れるなんてできっこない。

中高9年間、ずっと独りぼっちだった。

また誰からも愛されない価値のない人間に戻ってしまうのが嫌だった。


その子を見送った後、僕は銀座駅のホームで一人で泣いた。


彼女への悔しさや顔も知らない先輩への怒り、

そして何より、自分自身への情けなさが溢れ出た。



まだ大学に進学して間もない頃、片思いしていた女性がいた。

ご飯に行くなどする間柄ではあったが

向こうから恋愛対象として見られてはいなかったと思う。

おそらく、彼女に僕の恋心は見透かされていた。


彼氏できないという相談などをされており、

もしかしたら自分にもチャンスがあるのではないかと、

淡い期待を寄せながら、眠れぬ夜を過ごした。


ある日、その子から急に映画に誘われた。


人生初のデートだった。


僕は舞い上がった。

デートの作法を本で読み、友人からは服装などのアドバイスも貰った。

18の田舎少年は奮発して池袋の展望レストランを予約し、

前日は美容院に行き、人生の大一番に向け手はずを整えた。

本当にワクワクして当日を迎えた。

その子は手を握ってきたり、唐突に好きだと伝えてきたり、

非常に積極的だった。

ああ、18年間勉強しかしてこなかった人生のご褒美だな

そう思えるほど至福の瞬間だった。


だが、後日、本人から衝撃の事実を告げられる。

その子にはすでに彼氏がいて、最近構ってくれないという。

僕とのデートはその彼氏を嫉妬させるための手段であったというのだ。

その作戦は大成功。彼氏と寄りを戻すことに成功したらしい。

僕は倦怠期を迎えたカップルの愛情確認の手段に使われたにすぎない。



ふざけるなよ。

ふざけるなよ。

はらわたが煮えくり返る思いだった。

多分、というか100%向こうは自分の気持ちに気づいていたはずだ。

完全に弄ばれた。


でも僕の口から出た言葉は違っていた。


”よかったじゃん!俺も嬉しいよ。”


ただ、嫌われたくなかったのだ。

ここで嫌われたら、友達としての立場も失われてしまう。



顔で笑って心で泣いて。

20代を迎え、5年が経った今でも


道化のメイクはまだ僕の顔に張り付いたままだ。




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