序 入学式の日の昼、食堂は混んでいた。 一ヶ月前からラボにこもって黙々と制作に励んでいたらいつの間にか日付の感覚がなくなっていたようだ。これから始まる新生活への…
8年間吸い続けた煙草の銘柄を変えた。 煙草を吸い始めた頃は煙を美味しいなんて思えなくて、最初の2年はとにかく吸えるやつを探して適当に吸ってた。 美味しくないからちょ…
入浴ついでに浴室の掃除をし髪を乾かしている頃に、脱衣時にスイッチを押しておいた洗濯機が仕事を終えてピーと三度鳴く。 一日分の衣類と、枕カバー、ハンドタオル、バス…
私は傲慢だ。 親切の皮を被った、どこまでもドス黒い「欲」と「嫉妬」を腹に飼い慣らす、それはそれは傲慢な生き物だ。 ある日から人に嫌われることを恐れるようになった…
鯨井 瑞希
2023年3月28日 21:07
序入学式の日の昼、食堂は混んでいた。一ヶ月前からラボにこもって黙々と制作に励んでいたらいつの間にか日付の感覚がなくなっていたようだ。これから始まる新生活への期待に瞳をキラキラさせた彼らの中に現像液の酸っぱい匂いが染み込んだツナギで突っ込んでいく勇気などなく、食堂の入口で数秒フリーズしていたと思う。しかし彼らのキラキラに介在するのは新生活とせいぜいそのパーツだけで、ろくに陽にも当たっておら
2023年3月5日 11:47
8年間吸い続けた煙草の銘柄を変えた。煙草を吸い始めた頃は煙を美味しいなんて思えなくて、最初の2年はとにかく吸えるやつを探して適当に吸ってた。美味しくないからちょっと吸ってはすぐに捨てた。ガールズバーでバイトしてたからお金には余裕があった。ある日私の吸殻を見た客の一人が「姉ちゃん、付き合っても長く続かへんタイプやろ。」と言ってきた。「なんで?」と聞くと、「一本の煙草をどれだけ吸えるかっていう
2023年3月3日 18:24
入浴ついでに浴室の掃除をし髪を乾かしている頃に、脱衣時にスイッチを押しておいた洗濯機が仕事を終えてピーと三度鳴く。一日分の衣類と、枕カバー、ハンドタオル、バスタオルをそれぞれ一つずつ干すことが毎平日のルーティンになりつつある。いろいろと試した末、ようやくこのサイクルに生活が落ち着いてきたと感じている。インスタを見て掃除術や収納術を覚えた。浮かせる収納?クエン酸?ディフューザー?大抵のこ
2023年3月3日 13:39
私は傲慢だ。親切の皮を被った、どこまでもドス黒い「欲」と「嫉妬」を腹に飼い慣らす、それはそれは傲慢な生き物だ。ある日から人に嫌われることを恐れるようになった。集団という蟠りに負けないようにと高く挙げた右手がたった一本、教室で視線をかっ攫ったあの日からだ。顔から火を噴くような思いだった。「学級長」の横に書かれた見慣れた苗字に罪悪感のようなものを感じ、とにかく居た堪れなくて誰にもバレないよ