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SLEEP NO MORE:乳飲み子は、暖かく橙に照らされ、扉の向こうで、不穏に椅子は軋む。背後で、剣を振り翳すのは、何者か。(CASE: 71/100)

▲「SLEEP NO MORE」とサステナビリティ

「一切の窓が塞がれた薄暗い廃墟で仮面を被り、役者を追いかけて走りまわる」

一体なんのことだと思ったかもしれませんが、ニューヨークの没入型群像劇「SLEEP NO MORE」の観劇スタイルなんです。

舞台は、McKittrick Hotel(マッキトリックホテル)という実在する廃ホテル。実はこのホテル、第2次世界大戦の影響を受け開業前に閉鎖に追い込まれ、一度も開業することはありませんでした。

さて劇は、ヒッチコック監督の『レベッカ』をオマージュとし、ストーリーは、シェイクスピアの四大悲劇の1つ『マクベス』が基となっています。ホテル内の7フロア、およそ100部屋で、同時並行的に20人以上の役者が各部屋で劇を繰り広げていきます。観劇者たちは、仮面を被った冒険者として歩き回ることができ、どの部屋にどのタイミングで行くかは完全に個々の自由。ちなみに、突然役者に絡まれたりもします。私のときは、誰かを刺し殺した役者が飛んでぶつかってきて、よろけました。着ていた白いパーカーにふと目をやると裾に血糊が。それはまるで自分も殺人事件に巻き込まれたかのようで、心臓がばくばく高鳴ったのを今でも思い出します。

私がこのケースから抽出できるサステナビリティ観点は、「同時多発的群像劇」という点です。先述の通り、「SLEEP NO MORE」は、100個の部屋で同時に劇が進行するので、一度行っただけでは、すべてのシーンを見ることができません。それ故、顧客は他の部屋で起きていたことを知りたくて何度も行かずにいられなくなるわけです。劇としては「毎回全く同じものを提供しているのに、同じユーザーに、何度も来させることができる」というカラクリ。ワクワクさせる上に、高い費用対効果。もちろん、彼らはそういう観点でこの没入型にしたわけではないと思いますが、ビジネスの持続可能性の観点で見ると、素晴らしい構造だなと感心してしまいます。

ここではサステナブル観点にのみ触れましたが、他にも書ききれないほど、「SLEEP NO MORE」の魅力はあります。ニューヨークを訪れた際はぜひ一度、行ってみてください。窓がすべて塞がれた廃ホテルから生還できるかどうか…保証はいたしませんが、あしからず。

▲参照資料

▲キュレーション企画について

イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。

2022年のテーマは「サステナビリティ」です。

▲今回のキュレーション担当者

i.lab アートディレクター/デザイナー 井上麻由

▲i.labについて

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