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Beautiful Numbers:「人生は、短期的に見ると悲劇だが、長期的に見れば喜劇だ。」 (CASE: 40/100)

▲「Beautiful Numbers」とサステナビリティ

「美しき数字」 − それは、1962年生まれのオーストリアの巨匠デザイナー、ステファン・サグマイスター氏が作り上げたSocial Designとしての芸術作品です。私がサグマイスター氏を知ったのは、ニューヨークに住んでいた2016年ごろでした。

彼は、我々人類の歴史の「数字」にフォーカスしてこう主張しました。
「この200年を振り返ってみると、飢えている人が減った。戦争や自然災害で死ぬ人も減った。民主主義国家で暮らす人は増え、寿命が延びている。200年前は10人に9人が読み書きができなかったが、今は10人に1人だ。世界は、長期的視点で数字を見れば、良くなってきているのだ。」

さてみなさんは、日々どんなふうにニュースを得ていますか。ウェブメディアやSNS、という方も多いのではないでしょうか。私もそのひとりです。さてそうしたメディアで次々に発信される刹那的なニュースを追いかけ続けていると、時に、世界はただ破滅に向かっているのかと思わせられることがあります。危機に瀕した民主主義、いたるところで見られる紛争、そして世界全体がもはや制御不能のモンスターになってしまったのではないのかと。

しかし、「長期的な視野で世界の発展を見てみれば、人類は多くのことを改善してきている」とサグマイスター氏は気がつきました。そこで彼は、古美術商をしていた曽祖父母の家のバックヤードに売れずに放置されていた作品に、「我々人類が改善してきた歴史の数字の視覚化(インフォグラフィック)」を融合させ、「美しき数字」という名のアートとして蘇らせたのです。

人々はその芸術をリビングルームに飾ります。そしてそれを常に目にすることで、日々発信される暗いニュースも、より俯瞰的に見ると、「総体的には改善している世界のなかの、いくつかの出来事にすぎない」という認識をもたらしてくれます。

ウクライナ戦争勃発、ミャンマー軍事クーデター、電力不足に環境破壊。我々の社会の課題は、枚挙にいとまがありません。暮らしの中でこうしたニュースを見続けていると、心はただ悲観的になり、エネルギーを削がれて思考停止になってしまいがちです。

しかし、サグマイスター氏のこのSocial Designの試みは、世界に数多く残る困難に立ち向かい、前に進むためのリーダーの心の持ちようのヒントをあたえてくれています。
世界の課題に立ち向かわねばならないのは、他でもない我々自身です。その我々の「心がポジティブであり続けること」は、持続的にそれら社会課題に立ち向かっていくのに、不可欠だということ。
その「心の持続性」を後押ししてくれるのが、この「美しき数字」です。

私の敬愛するチャールズ・チャップリンも、こう言っています。
「人生は、短期的に見ると悲劇だが、長期的に見れば喜劇だ。」
[Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot.]
子ども時代は貧困や苦難に満ち、必ずしもバラ色ばかりの人生ではなかった彼が辿り着いた言葉。
きっと真理なのだろうと、私は思っています。

▲参照文献・資料


▲キュレーション企画について


イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。
2022年のテーマは「サステナビリティ」です。

▲今回のキュレーション担当者


i.lab アートディレクター/デザイナー
井上麻由

▲i.labについて
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