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Freitag:トラックの幌を使ったアップサイクルのブランド (CASE: 31 /100)


▲「Freitag」とサステナビリティ

私の人生でこれほどまでに、薄汚れたトラックの幌を愛することなどあったでしょうか。
Freitagとの出会いは、2018年の秋、地下鉄半蔵門線の車内でした。前にスッと立った男性が抱えていた鞄がFreitagだったのです。その出で立ちに瞬間的に魅了された私は、次の日には銀座のショップにいました。

さて、Freitagとは、デザイナーのフライターグ兄弟が1993年にチューリヒで立ち上げた鞄ブランド。ドイツ語で「金曜日」という意味だそうです。
彼らは、役目を終えた世界各国のトラックタープを買い上げ、生地として利用します。高速道路や森林を駆け抜け、時には国境をも越えてきた幌は、排気ガスや泥、ときには鳥のおとしものなどもついているでしょう。それらを浄化雨水で洗浄。その後、巨大な作業台で切り分けたのち縫製し、鞄へと生まれ変わらせていきます。

しかし、このブランドが面白いのは、単に廃棄素材を活用しているだけではないところ。
まず、各国千差万別のタープが材料なので、どれひとつとして同じものはありません。サイトは、見るたびに目新しいデザインが出ていて、ユーザーはつい何度もサイトを訪れます(罠です)。こうして接点が増え、常に触れるうちに熱狂的ファンへ。そして、友人を口説いて銀座のショップへ連れて行くことになるわけです(そしてまた自分も買う)。
加えて、Freitagには、世界中のファン・コミュニティと、鞄を自由にスワップできるプラットフォームがあります。ファンの利用シーンを眺めながら、誰とどの鞄を交換しようかと思いを巡らせることができる。それが、世界中のファンとゆるくつながる感覚をくれ、ますますブランドを好きになっていきます。

来日時のインタビューでフライターグ氏は、「不完全なことの美しさ」に言及しています。そう、Freitag製品はよく見ると、幌が完全には洗浄されていない。ピカピカの幌にはしていないんですね。i.labのオフィスも、わざわざ錆びさせた作業机を使っていますが、これもその“不完全なものの美しさ“ということでしょう。

SDGsが注目され、アップサイクリングのブランドが増えてきました。しかしながら、必ずしもブランドの持続性が高くないのも現状です。
Freitagは、廃棄素材のアップサイクル、ユーザーが自然とブランドに関わりたくなる数々の仕掛け、そして、購入したカバンに飽きてもそれを捨てたりするのではなくスワップすることで、新しい鞄に変えられるプラットフォームの提供−という三つ巴で、ブランドをサステナブルかつ成功に導いているといえます。現に私自身が、半蔵門線車内での出会いから、それ以外の鞄を持たなくなってしまったわけですから。

Freitagは、幌汚れで“不完全”ゆえに美しい。
i.labオフィスの机の錆も美しさの一端をなしている。
ならば、洗濯してまっさらな白シャツに錆がついても美しい、のでしょうか。そういうことにしておきましょう。

金曜の夜更け、高速を走りぬけるトラックの音を窓越しに聴きながら、あのトラックもいつかFreitagになるのだろうかと思いを馳せています。

▲参照資料

https://www.freitag.jp

▲キュレーション企画について

イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。
2022年のテーマは「サステナビリティ」です。

▲今回のキュレーション担当者

i.lab アートディレクター/デザイナー 井上麻由

▲i.labについて

i.labは、東京大学i.school ディレクター陣によって2011年に創業されたイノベーショ ン創出・実現のためのイノベーション ・デザインファームです。東京大学i.school(2017年4 月 より一般社団法人i.school)が世界中のイノベーション教育機関や専門機関の知見を研究しながら独自進化させてきた理論知と、i.labが産業界で磨いてきた実践知の両輪で、企業向けにイノベーションのためのプロジェクトを企画·運営しています。

会社名:イノベーション・ラボラトリ株式会社
代表取締役:横田 幸信
本社:東京都台東区小島2丁目14-5毛利ビル705
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