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『人間不平等起源論』ルソー

はじめに:不平等の起源は人間自身

今回は、女史の最も敬愛するルソーの著作を紹介する。ルソーは、本著にて、人間が不平等になった起源を人間の文化や文明に帰する。

そして、本著はページ数自体は少ない本ではあるが、かの有名な『社会契約論』の前身ともなった理論なのである。

異郷から来た女史が何者か知りたい人はこれを読んでくれ。

そして、女史のnoteをどう読むか、こちらを参考にしてくれ。

自然・身体的不平等:先天的差異

人間には2種類の不平等があり、その一つは自然・身体的不平等だ。これは、自然が定めた、体、精神の差である。

例えば性別であったり、身長の高低であったり、我々人間が左右できない先天的差異のことを指す。

古来、人が文明を持っていない状態があった。ルソーはこれを自然状態という。その時人間は、先天的差異以外の不平等を持ち合わせていなかった。

ルソーは、先天的差異のみが存在した自然状態の時こそが、最も人間は平等で自由であると主張する。

社会的・政治不平等:人のつくりし文化、文明

もう一つの際は、社会的・政治的不平等である。これは、財力の違い、社会的ヒエラルキーの違い、党派の違い、宗教の違い、etc... 思い当たるものはたくさんある。

これら不平等は全て、人間の、自己利益を図ろうとする欲望が作り出した不平等である。一部の人が他を優先し、自分の欲望を遂行し続けた。

その結果、現在のように不平等がはびこる世の中になった。と、ルソーは言う。

人間は文化や文明を発達させてきた。その過程で、教育、経済、娯楽etc...、自然状態の人間には一切必要のないものが発達し、もはや我々はこれなしでは生活できない。

しかし、同時にこれらの文化・文明の発達過程で、人々の間にこれを享受できるものとできないものが出てきてしまった。

これら文明や文化こそが、不平等の起源である。

社会との契約:奴隷に成り下がることで平和を感じる

社会的・政治的不平等の上に、社会契約が成り立っている、とルソーは言う。社会において富める者は、権力を集め、貧者を支配するようになった。支配者は被支配者に法や条例などのルールを課す。

被支配者である大衆は、これらのルールを忠実に守る。彼らは権力も財力も教育も持たない。支配者の支配に対して、従う以外ないのである。

ルソーはこれらに従う大衆は、鉄鎖に繋がれた状態であるという。

鉄鎖に繋がれた人間は、思考停止に陥り、自分がいる環境を最も平和で心地の良いものであると思い込み、支配者の支配に対して疑問を抱かなくなる。支配者が課したルールや義務を忠実に守るだけのマシーンとなる。

ルソーは、この鉄鎖を引きちぎり、人間を自然状態に戻すことによってのみ、人類は平等になれる、と主張する。

おわりに:天は人の上に人を創らず

福沢諭吉は、天は人の上に人を創らず、人の下に人を創らず、という言葉を遺した。人は生まれながらにして平等である。しかし、人間の世界では貧者、賢者など、差が生まれてくる。

天は平等に人を創るが、人間が不平等を創るのだ、という意味である。

ルソーの思想は過激であるが、文化と文明さえなければ存在しえなかった不平等が世の中にはびこり、人を苦しめている。

文化と文明の味を占めた我々が、自然状態に戻ることは困難である。しかし、単純な幸福と自由を求めるのであれば、人を自然状態に戻すことも大いに選択肢に入るかもしれない

近年は、原発事故、地球温暖化、資源枯渇により、地球が人間の文明に対して限界を迎えている。ルソーの言う、自然状態に近づくことを真剣に検討するべき時がいずれ来るのではなかろうか。

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