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テクノ/ハウス名曲選(前編)'82-'90

※3000字近い記事です。
 お時間のある時にお付き合いいただけると嬉しいです。

前回に引き続きテクノの名曲を紹介していきます。今回は「テクノ/ハウス編」です。

なお、前置きとして書いた記事で私が挙げた「テクノの三要素」より「音(サウンド)」「リズム」「コンセプト」の三つの評価軸を★5点満点で評価を付けました。

さらに、その楽曲自体の知名度も★5つで表示しています。

★★★★★ 有名
★★★★  音楽好きなら知っている
★★★   テクノ好きなら知っている
★★    テクノ通なら知っている
★     知る人ぞ知る

①Clear/Cybotron('82)

知名度   ★★
サウンド  ★★★★
リズム   ★★★★
コンセプト ★★★★

サイボトロンは、ホアン・アトキンス、リチャード・デイヴィスによるユニット。同ユニットは'82年に初の「デトロイト・テクノ」のレコードを出した('83年に解散)。
TR-808(リズムマシン)を使ったリズムトラックに、畳みかけるような電子音の応酬が見事にマッチしている。電子音の魅力に特化したシンプルなトラック。

②Your Love/Frankie Knuckles('87)

知名度   ★★
サウンド  ★★★
リズム   ★★★
コンセプト ★★★★

「フランキー・ナックルズ」ことフランシス・ニコルズは、'70年代の終わりからシカゴのクラブで DJ をやり、ハウスの源流を作ったアーティストで、現在では「ハウスの父」と称されている。
デトロイトのテクノに比べると、ドラムの生っぽい質感が特徴的。ソウルフルなボーカルが馴染むのもハウスならではの特徴だ。

③Pump up the Volume/M/A/R/R/S('87)

知名度   ★★★
サウンド  ★★★★
リズム   ★★★★
コンセプト ★★★★★

M/A/R/R/S(マーズ)は、'87年にイギリスで結成されたハウス・ユニット。さまざまな曲からのサンプリングで作られたこの曲は、世界中で大ヒットした。リズムマシンとサンプラーだけで作られたようなトラックで、その後のクラブカルチャーで主流になる音の切り貼りのおもしろさを予見している。

④Acid Tracks/Phuture('87)

知名度   ★★★
サウンド  ★★★★★
リズム   ★★★★
コンセプト ★★★★★

'87年にアメリカ・シカゴ、イギリス・ロンドンのクラブで、はじまったのが「アシッド・ハウス」というムーブメントで、この曲はその代表曲の一つ。
音圧の強いドラムマシン、TB-303のウネウネとしたサウンドが心地いい。

⑤Strings of Life/Rhythim Is Rhythim('88)

知名度   ★★★
サウンド  ★★★★
リズム   ★★★★
コンセプト ★★★★

リズム・イズ・リズム(敢えて、スペルは間違えたものを用いている)は、デトロイト・テクノの創始者の一人、デリック・メイのユニット名。
イントロのたどたどしいキーボードは、打ち込みではなく手弾きで、このパンク精神こそが、デトロイト・テクノの真骨頂でもある。ごく短いフレーズではあるものの、このようなメロディーの秀逸さもデトロイト・テクノに欠かせない特徴と言える。

⑥Can You Feel It/Mr.Fingers('88)

知名度   ★★★
サウンド  ★★★★★
リズム   ★★★★★
コンセプト ★★★★

ミスター・フィンガーズは、ラリー・ハードによるユニット。
パーティーの最後を飾る曲としてよくかけられ、この曲に涙をする人も多かったという(ケン・イシイ談)。ビートはダンスミュージックだが、せつない音が詰まっており、ハウスの長い歴史の中でも、泣ける曲は稀だ。

⑦Good Life/Inner City('88)

知名度   ★★
サウンド  ★★★★★
リズム   ★★★★★
コンセプト ★★★★

インナー・シティは、ケヴィン・サンダーソン、パリス・グレイによって'88年に結成されたユニット(現在はパリスが脱退)。
ケヴィン・サンダーソンは、デトロイト・テクノのアーティストだが、このユニットでは、ハウスのサウンドを展開し、商業的にも成功した。
軽やかなリズムのパターン、明るい音色、ソウルフルな女性ボーカルといった、その後のハウスのフォーマットを確立した印象がある。

⑧Pacific State/808 State('89)

知名度   ★★★
サウンド  ★★★★★
リズム   ★★★★
コンセプト ★★★★★

808(エイト・オー・エイト)ステイトは、イギリスのテクノバンド。
デトロイト・テクノのメロディアスな部分を引き継いだのが、このトラックでもあり、幻想的なサウンドは、のちの「アンビエント・ハウス」にも繋がったと言われている。

⑨Psyche-Out/Meat Beat Manifesto('90)

知名度   ★
サウンド  ★★★★★
リズム   ★★★★★
コンセプト ★★★★

ビート・ミート・マニフェストは、イギリスのユニット。
リズムマシン、サンプラーを主体にしたトラックに、小間切れの歌(パンクとラップの中間くらいのもの)を乗せるスタイルはヒップホップにも近い。
のちのビッグ・ビート(ロックとテクノを融合したジャンル)に与えた影響も大きく、もちろん、プロディジーやケミカル・ブラザーズもサンプリングネタとして、彼らの楽曲を使っている。

⑩Vogue/Madonna('90)

知名度   ★★★★★
サウンド  ★★★★★
リズム   ★★★★
コンセプト ★★★★★

言わずと知れたマドンナのヒット曲(アメリカでは自身最大のヒット曲)であり、ハウスとしてもメジャーシーンで、最初にして最大のヒットチューンとなった。
雑誌『ヴォーグ』からイメージを拝借した MV も含め、コンセプトがかなり際立っている。この曲でハウスは、アンダーグラウンドな世界から解き放たれ、ポピュラー化した。

⑪LFO/LFO('90)

知名度   ★★★
サウンド  ★★★★★
リズム   ★★★★
コンセプト ★★★★★

LFO はイギリスのテクノユニット。
シンセサイザーのフィルターそのものを発振させた「ビープ音」(本来のシンセにおいて、フィルターは発振させないものだった)を取り入れた「ブリープ」というジャンルのトラックで、'90年代初期にだけ存在したスタイルでもある。キラキラとした音色とベースの怪しげな音色の組み合わせがおもしろい。

⑫Chime/Orbital('90)

知名度   ★★★
サウンド  ★★★★★
リズム   ★★★
コンセプト ★★★

オービタルはイギリスのハートノル兄弟によるテクノユニット。
'89年に結成されたオービタルは、長く活動を続けるアーティストで、解散と再結成を繰り返しながら、現在も活動中である。一時期、日本ではプロディジー、ケミカル・ブラザーズ、アンダーワールドに並び、「テクノ四天王」に数えられることもあった。
このトラックは、彼らの最初のヒット曲で、シンプルな電子音の魅力が詰まったわかりやすい魅力が感じられる。


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